勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ

文字の大きさ
3 / 66
第一章

二話

しおりを挟む
「……というわけで、この村を出ていくつもりです」


 幼馴染のライルに自分の部屋へ女性を連れ込まれた私は、そのまま家から出て近所の叔父夫婦の家に泊まった。

 そして次の日お礼代わりに作った朝食を供し終わった後で二人に自らの決意を話す。

 それを聞かされた叔父さんたちは非常に難しい顔をしていた。気持ちのいい朝に告げるようなことではなかったかもしれない。

 けれど出ていくと決めてすぐ出ていける訳ではない。両親から継いだ家やお墓のことだってちゃんと決めなければいけない。

 私が街で暮らすようになるならそれらの管理には村にいる親戚を頼るしかない。

 出ていくと告げた際、叔父さんたちは当初驚いた顔をしていた。

 だが最近のライルの行状について話し終える頃には頭痛を堪えるような表情を二人とも浮かべていた。


「何やってんだ、あの洟垂れ小僧は……」

「私達ずっとライルとアディはそういう仲だと思ってたんだけどねぇ……」


 だってあの子、昔も今も貴女の家に入り浸りだったじゃない?

 夫婦になるつもりで同棲していたのかと。

 そう叔母さんに言われて私は思いきり首を振った。そもそも同棲じゃない、押しかけられていただけだ。


「ライルは一人暮らしで家事をするのが嫌だから私の家に居座っていただけです」

「そうなのかい……まあ、あの子も男だからねぇ、外で働くなら家の事は苦手でも……」

「でも叔母さん、この前叔父さんが料理上手だって自慢していたじゃないですか?」


 私からの指摘に叔母さんと叔父さんは頬を赤くして照れた。本当に何十年経っても仲のいい夫婦だ。

 確かにお金を稼ぐだけならライルは有能だろう。魔王討伐の報酬だけで贅沢をしなければ親子で数十年暮らしていける分はある。

 それに勇者だけあって当然強い。村の近くに出た魔物の討伐だけじゃなく別の地方から頼まれて手強い魔物を退治しにいく事もある。

 強敵だけあって報酬はかなりのものだと聞く。

 でも私には一銭も入りませんから!

 今でもあいつは小さい子供の気分で私に面倒を見て貰っているつもりなのだ。

 私がそういうと二人は先程にも増して、信じられない物を見るような顔をした。

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...