勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ

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第一章

三話

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「恋人でもないのに今までずっと見返り無しで衣食住の世話を……?」

「いやアディ、それはお前も言わないと駄目だろうが」

「あいつの世話を見るのに代価を取ったら今まで以上に開き直られる気がして……」


 ライルの冒険仲間たちがたまに遊びに来る時に宿代や食事代のかわりに置いていってくれる珍しい素材やお酒や宝石。

 時々それらを街に行く人に頼んでお金に交換してもらってきて今まで家計の足しにしていたのだ。


「それにライルは大変な思いをして世界を救ってきたので、感謝のつもりで居座らせ続けたのもあります」

「アディちゃん、魔王との戦いで弱ったライルの看病をつきっきりでしていたものねぇ……」

「それを見て俺はライルとお前は恋人なんだとばかり……」

「違います」


 決して恋人なんかではない。ライル本人もはっきりと断言していたし。

 そう、それが問題なのだ。

 私に対して全く恋愛感情がない癖に私の家に入り浸る。

 そしてあれが食べたいこれが飲みたい、疲れたから足を揉んで欲しいなど我儘放題甘え放題。


「このまま私があの馬鹿の世話係でいると、ライルはどんどん駄目な人間になっていく気がするんです……!」


 魔王を倒すという輝かしい功績を若干二十三歳にして持つたライル。

 しかし私を前にした彼はただの甘ったれた血のつながらない駄目息子だ。もしかしたら私の接し方が悪かったのかもしれない。

 結婚前提なら一生をかけてその責任を負うこともできるが、彼にとって私はそういう存在ではないことが発覚した。

 だから私にとってもライルにとっても、この関係は完全に断ち切った方がいいのだ。


「迷惑をかけますが、私がいなくなった後のことをお願いします」


 そう私は実の叔父であり、このサテー村の村長である彼に深々と頭を下げた。

 厄介ごとを押し付けて申し訳ないけれど男同士ということでライルの性根を少しでも叩き直して貰いたい。

 横で話を聞いていた叔母さんは「これからどうするにしても今まで世話した分のお金は貰った方が良いよ」と私に言った。


「手切れ金、ともいうだろう? 関係を終わらせる為にも尽した分はしっかり払って貰いなさい」


 村長夫人の重みのある言葉に私は曖昧な返事をした。。

 心情的にはライルとは一言も話さずに別れて村を出て行きたいのだけれど。

 でも彼が私の家に入り浸っている以上それは無理か。

 というかいい加減ライルが連れ込んだ女性は自宅へと帰ってくれただろうか。

 相手は村娘の誰かだと思うけれど、どうせなら彼女がさっさとライルと結婚してくれればいいのに。

 そうすれば流石にライルも私の家に居座り続けてはいられないだろう。……そうだと言って欲しい。

 しかし私以外の人間と結婚した後も夫婦で食事をせびりに来るライルをリアルに想像できてしまい、私は朝から酷く陰鬱な気持ちになった。

 そんな私の様子を心配したのか、叔父さんが言う。


「……ライルに金の事を言いづらいなら、レンの奴を連れてけ。あんなんでも一応男だ」

「レン兄さんを?」

「そうだねえ、アディちゃん。家に帰る前に雑貨屋に寄ってレンを連れて行きなさい」


 あんた達の兄代わりみたいなものなんだから。

 そう叔母さんに言われて私は頷いた。

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