27 / 66
第一章
二十六話
しおりを挟む
私は、弱者だ。
物語の中の人間だとしたら、きっと名前すらない。
勇者にも戦士にも魔法使いにもお姫様にもなれない。
でも、だから、逃げていい。
私はただの村娘で戦う力も勇気もないのだから。
化け物を前にして逃げるのは何一つおかしいことじゃない。
――― そう、リンナは思うだろう。
「ッ、ハアッ」
森の中を全速力で駆ける。
通い慣れた道の筈なのに、まるでゴールのない迷路に放り込まれたような恐怖がついてくる。
たとえば、後ろから魔物姿のリンナが追いかけてきたら。
そんなことを考えるだけで背筋がぞっとした。
でも恐らくそれはない。墓地にはライルがいる。エミリアさんやレン兄さんもいる。
彼らよりも私を優先する理由なんてリンナにはないだろう。
もし、私がしようとしていることに気づいたら話は別だけれど。
二本だけ残った根を踏まないようにしながら、必死で走る。
リンナの家から墓地に延々と続いているそれを。
一本は家にあるおじさんの人面花と繋がっている。
では、もう片方は?
残りの一本は何と繋がっているのだろう。
家にあった複数の植木鉢たち、それらから確かに根は伸びていた。
あるものは小動物の死体に絡みつき栄養を吸い取っているようだった。
けれど今残っている二本の内、一本は人面花になったおじさんの頭と墓場にある胴体を繋いでいるとして。
同じように墓場へと続いていたもう一本は『何』と繋がっているのだろう。
私はそれを確かめる必要がある。
そして予想通りなら、その後のことも、果たさなければいけない。
「はっ、リンナ、待ってなさいよ……!」
私は走る。勇者じゃなく、戦士じゃなくても。
できることをやる為に。
油断させて、逃げて、辿り着いて見せる。
これが私の戦い方だ。
物語の中の人間だとしたら、きっと名前すらない。
勇者にも戦士にも魔法使いにもお姫様にもなれない。
でも、だから、逃げていい。
私はただの村娘で戦う力も勇気もないのだから。
化け物を前にして逃げるのは何一つおかしいことじゃない。
――― そう、リンナは思うだろう。
「ッ、ハアッ」
森の中を全速力で駆ける。
通い慣れた道の筈なのに、まるでゴールのない迷路に放り込まれたような恐怖がついてくる。
たとえば、後ろから魔物姿のリンナが追いかけてきたら。
そんなことを考えるだけで背筋がぞっとした。
でも恐らくそれはない。墓地にはライルがいる。エミリアさんやレン兄さんもいる。
彼らよりも私を優先する理由なんてリンナにはないだろう。
もし、私がしようとしていることに気づいたら話は別だけれど。
二本だけ残った根を踏まないようにしながら、必死で走る。
リンナの家から墓地に延々と続いているそれを。
一本は家にあるおじさんの人面花と繋がっている。
では、もう片方は?
残りの一本は何と繋がっているのだろう。
家にあった複数の植木鉢たち、それらから確かに根は伸びていた。
あるものは小動物の死体に絡みつき栄養を吸い取っているようだった。
けれど今残っている二本の内、一本は人面花になったおじさんの頭と墓場にある胴体を繋いでいるとして。
同じように墓場へと続いていたもう一本は『何』と繋がっているのだろう。
私はそれを確かめる必要がある。
そして予想通りなら、その後のことも、果たさなければいけない。
「はっ、リンナ、待ってなさいよ……!」
私は走る。勇者じゃなく、戦士じゃなくても。
できることをやる為に。
油断させて、逃げて、辿り着いて見せる。
これが私の戦い方だ。
12
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる