28 / 66
第一章
二十七話
しおりを挟む
予想よりも時間がかかりながらもリンナの家が視界に捉えられるまで近づく。
今のところ墓場から続く根は途切れていない。
途中でいっそこの根を爪先で踏み潰してしまえばとも考えたが、どうしても思い切れなかった。
その内の一本がリンナの父親の命綱になっていることもある。
ただ、それだけでなく……予想通りなら、私は相手の目を見て『終わり』を選びたかった。
そんなことを考え走っている内に目的地はいよいよ近くなる。
その時になって初めて私は分かれ道に誰かが立っているのに気付いた。
墓地へは当然村人の誰でも参ることができる。
手前に存在する鎮魂の森に一番近い民家はリンナの家だが、その脇には断りなく出入りできる通り道があった。
そこに、女性が一人立っている。
「ミランダさん!」
私は思わず叫んだ。
エミリアさんの声よりは小さいけれど彼女は気づいたようで手を振って駆け寄ってくる。
声を張り上げずに会話ができる距離まで歩み寄る。
彼女の豊満な胸が呼吸に合わせ上下しているのが見えた。急いでここまで来てくれたのだろうか。
「ごめんなさいね。遅くなって」
もう大丈夫よ。そう告げられただけで膝から力が抜け落ちそうになる。
私が幼い子供だったなら彼女に縋り付いて泣き出していただろう。
けれど私は年齢だけは十分すぎるぐらい大人だった。何より私には役目がある。
この高名な魔女に得た情報を伝えなければいけない。
だから自らの太腿を拳で殴りつけ、気合を入れる。
「ミランダさん、植物の魔物が、ライルたちを襲っています」
「……そう。命に別状は」
「今のところは、まだ。ライルを虐めるのを楽しんでいるみたいでした」
「魔物はここの村の人間の姿をしていた?」
「姿も声も、多分記憶もリンナでした、でも……」
リンナ本人ではなかった。そう私は伝える。
双子草という魔物が告げた名前をそのままミランダさんに答えると彼女は少しだけ怪訝そうな表情を浮かべた。
私はすぐ傍の屋敷を指さす。扉は開かれたままだ。一緒に来て欲しい、そう言いかけて舌先が固まる。
ミランダさんは強力な魔法使いだ。ここで時間を取らせるより墓場に向かってライルたちの加勢をしてもらった方がいいかもしれない。
リンナの姿をした魔物の気が変わって、もしかしたら弄ぶことを止めライルやレン兄さんたちを殺そうとするかもしれない。
墓場への道を振り返る。まるでそれに合わせたように向こうから一陣の風が吹いた。
『……迷わ いで、 ディー。自信を……って』
そう、酷く微かに少女の囁き声が聞こえた気がした。
幻聴かもしれない、けれど。姉さんの声が聞こえた。
私は美しい魔女に向かって声を張り上げる。彼女の知識と魔法が私の目的にもきっと必要だ。
「ミランダさん、リンナの家についてきてください!!」
そこに本物のリンナがいる筈です。
手招きするように扉がキィキィと鳴った。
今のところ墓場から続く根は途切れていない。
途中でいっそこの根を爪先で踏み潰してしまえばとも考えたが、どうしても思い切れなかった。
その内の一本がリンナの父親の命綱になっていることもある。
ただ、それだけでなく……予想通りなら、私は相手の目を見て『終わり』を選びたかった。
そんなことを考え走っている内に目的地はいよいよ近くなる。
その時になって初めて私は分かれ道に誰かが立っているのに気付いた。
墓地へは当然村人の誰でも参ることができる。
手前に存在する鎮魂の森に一番近い民家はリンナの家だが、その脇には断りなく出入りできる通り道があった。
そこに、女性が一人立っている。
「ミランダさん!」
私は思わず叫んだ。
エミリアさんの声よりは小さいけれど彼女は気づいたようで手を振って駆け寄ってくる。
声を張り上げずに会話ができる距離まで歩み寄る。
彼女の豊満な胸が呼吸に合わせ上下しているのが見えた。急いでここまで来てくれたのだろうか。
「ごめんなさいね。遅くなって」
もう大丈夫よ。そう告げられただけで膝から力が抜け落ちそうになる。
私が幼い子供だったなら彼女に縋り付いて泣き出していただろう。
けれど私は年齢だけは十分すぎるぐらい大人だった。何より私には役目がある。
この高名な魔女に得た情報を伝えなければいけない。
だから自らの太腿を拳で殴りつけ、気合を入れる。
「ミランダさん、植物の魔物が、ライルたちを襲っています」
「……そう。命に別状は」
「今のところは、まだ。ライルを虐めるのを楽しんでいるみたいでした」
「魔物はここの村の人間の姿をしていた?」
「姿も声も、多分記憶もリンナでした、でも……」
リンナ本人ではなかった。そう私は伝える。
双子草という魔物が告げた名前をそのままミランダさんに答えると彼女は少しだけ怪訝そうな表情を浮かべた。
私はすぐ傍の屋敷を指さす。扉は開かれたままだ。一緒に来て欲しい、そう言いかけて舌先が固まる。
ミランダさんは強力な魔法使いだ。ここで時間を取らせるより墓場に向かってライルたちの加勢をしてもらった方がいいかもしれない。
リンナの姿をした魔物の気が変わって、もしかしたら弄ぶことを止めライルやレン兄さんたちを殺そうとするかもしれない。
墓場への道を振り返る。まるでそれに合わせたように向こうから一陣の風が吹いた。
『……迷わ いで、 ディー。自信を……って』
そう、酷く微かに少女の囁き声が聞こえた気がした。
幻聴かもしれない、けれど。姉さんの声が聞こえた。
私は美しい魔女に向かって声を張り上げる。彼女の知識と魔法が私の目的にもきっと必要だ。
「ミランダさん、リンナの家についてきてください!!」
そこに本物のリンナがいる筈です。
手招きするように扉がキィキィと鳴った。
13
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる