勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ

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第一章

五十一話

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「……私はお姫様じゃない」

「そうね、アンタはただの行き遅れの村娘」


 そして今の私は魔植物の母であり女王。

 完全に調子に乗っているリンナに、とうとうその母親が泣き崩れた。

 こういうものは本人でなく身内の方がいたたまれなくなるものだ。

 ミランダさんをちらりと見る。彼女の前にも私と同じように透明な盾がある。

 そしていつのまにかリンナの母親の前にも。 

 もういいと言いたげにミランダさんが首を振る。私も同じ意見だった。

 リンナも随分と話した。今までの分も含め、一生分己のことを語り尽くしただろう。

 だからもう、結構だ。


「……今の貴女みたいに恥ずかしい存在になるくらいなら、行き遅れの村娘の方が千倍マシね」


 わざと嘲笑ったりなんてしない。心の底から本音を言うだけでいい。

 それだけでリンナの表情が怒りに激しく歪み、片方の腕が植物化し長く伸びた。

 先端を鋭く尖らせたそれは、高速で突き出された槍のように私を穿とうとする。けれど避けなかった。

 音もなくリンナの凶手はミランダさんの盾で防がれる。

 そして、魔法の盾はただ防いだだけではない。

 神秘的に輝く透明な盾はリンナの片腕を弾くのではなく大蛇の顎のようにすっぽりと飲み込んだのだ。


「ハ?何これ、抜けないンだけど……!!」


 彼女は上半身を動かし手を自らの側に引き戻そうとしているようだった。

 しかしそれは叶わないらしく明確な焦りを顔と台詞に浮かべる。

 まるでタイミングを合わせたようにどこからか叫び声が聞こえた。

 地下にすら届く大声なんて心当たりは一人しかいない。

 リンナの額やむきだしの上半身に脂汗がふつふつと浮かぶ。


「……うるッせェェェ!!」


 どいつもこいつもうるさいとヒステリックに魔物が怒鳴り散らす。

 次に動いたはミランダさんだった。


「哀れな魔物よ、私の魔法で焼き尽くしてあげるわ!!」

「っ、させるかよォ!!」


 凛と張り上げた魔女の声に、リンナが再び怒りを取り戻す。

 拘束されていない片方の腕がミランダさんを刺し殺そうと対象を変えて先程と同じ動きをする。

 当然私の前に存在したものと同じ盾はミランダさんの前にもある。


「あッ、ああっ、もうッ……畜生っ!!」


 リンナも気づいたようだが、彼女の理性よりも殺意を優先した腕は魔法の盾に吸い込まれ封じられる。

 あっけないほどの容易さで私たちを苦しめてきた大怪物は拘束された。

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