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第一章
六十一話
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植物の魔物に身も心も明け渡したリンナ。
妖花の女王アルラウネと名乗り村を脅かした彼女を私が騙し討ちにしてから数か月が経過していた。
偉大なる魔女ミランダの凍結魔法を受けたリンナの異形体は、その後改めて石化魔法を重ね掛けされたと聞く。
そして彼女がいた地下の隠し部屋は埋め立てられたらしい。
全てが伝聞なのは私、アデリーンがその場に居なかったからだ。リンナの『知人』として立ち会うか確認されたが断ってしまった。
リンナの家は庭も含め厳重に封印された。
彼女の母親は長女のエドナが引き取って連れ帰った。私と彼女はもう友人では居られないかもしれない。
鉢植えにされたリンナの父親の行方は知らない。リンナの家を庭の植物も含め調査と管理しているミランダさんなら知っているかもしれない。
ただ私はなんとくなく聞く気にはなれなかった。だって聞いて嬉しくなることなら聞かなくても教えてくれるはずだ。
リンナのことも、リンナの家のことも忘れてしまえたらいい。
、そんなことを考えても、この小さな村で起きた事件は世界的には結構重大な事件だったらしい。
魔王討伐時に殉死したと思っていた魔王軍幹部が生存していたこと。
そして配下を使い勇者のいる村を襲ったこと。そして魔王を倒した勇者がたかが魔物相手に苦戦し何とか辛勝したこと。
魔王討伐後に王族が勇者一行にその力を抑制する呪いをかけていたこと。特に勇者本人には体調を崩す程強いものをかけたのだと。
だから勇者は長いこと故郷の村で療養することになったのだということが気づけば街で噂になっていた。
「ぜーんぶ事実ですわ!!」
貸し切りにされた食堂でエミリアさんが吠える。
身内しかいない場、更にミランダさんが事前に消音魔法をかけていると言っても声量をもう少し控えて欲しい。
「そもそもあのアホ王家は、自分たちと血縁にならないなら謀反抑止の措置をさせて貰うとか言ってきて……」
「それで貴女が大暴れしたから尚更危険視されたのだけれどねエミリア?」
「だって魔王討伐の長旅から帰ってきたわたくしたちを労わることもせず、縁談話を脅し交じりにされたのですのよ?!」
うん。街中でしていい話ではない。けれど民衆全員に聞かせてやりたい気持ちもある。
数か月の追跡の末魔樹将軍の討伐に成功したエミリアさんたちの慰労も兼ねた食事会。
飲んだ果実酒で酔いが回ったのか、彼女は明け透けに当時のことを語る。
「特にライルは、婚約を断られてプライドを傷つけられた王女の怨恨の分も入っていたに違いありませんわ」
勇者が一番強力だから、その分力の封印も厳重にしなければいけない。
そうもっともらしく言っていたけれど、なんで死に物狂いで魔王を倒した後に更に苦痛を受けなければならなかったのか。
「あの仕打ちのせいでわたくしライルに過剰に同情し甘くなってしまって……結果としてライルもアデリーンさんも不幸にしてしまうところでしたわ」
本当に申し訳ありません。偉大な戦士の一人に深々と頭を下げられて慌てる。
しかし彼女がライルを特別甘やかしていた記憶はない。寧ろ通常通りならライルにどのような接し方をしていたのだろう。
彼が部屋でゴロゴロしていたら窓から蹴り落して魔物退治をしてこいと命じる感じだろうか。
私が想像している間にワインをすいすいと飲みながらミランダさんが言う。
「でもあの件で頭の悪い王家も実感できたのでしょうね」
魔王を倒したというのは、あくまで一番上の存在を倒しただけ。
いずれ次に強い者が新しい魔王になるだけのことだ。
つまり強力な魔族は当たり前のように存在する。その時に頼る存在は勇者だ。
彼が弱体化していれば国にも危機が及ぶ。
それを王家が認識したおかげで自分たちの封印は解かれたのだと。
「……そんなことも、犠牲が出なければわからなかったんですね。国は」
私が新たな料理を卓上に置きながら呟いた言葉に、ミランダさんは黙って目を伏せた。
妖花の女王アルラウネと名乗り村を脅かした彼女を私が騙し討ちにしてから数か月が経過していた。
偉大なる魔女ミランダの凍結魔法を受けたリンナの異形体は、その後改めて石化魔法を重ね掛けされたと聞く。
そして彼女がいた地下の隠し部屋は埋め立てられたらしい。
全てが伝聞なのは私、アデリーンがその場に居なかったからだ。リンナの『知人』として立ち会うか確認されたが断ってしまった。
リンナの家は庭も含め厳重に封印された。
彼女の母親は長女のエドナが引き取って連れ帰った。私と彼女はもう友人では居られないかもしれない。
鉢植えにされたリンナの父親の行方は知らない。リンナの家を庭の植物も含め調査と管理しているミランダさんなら知っているかもしれない。
ただ私はなんとくなく聞く気にはなれなかった。だって聞いて嬉しくなることなら聞かなくても教えてくれるはずだ。
リンナのことも、リンナの家のことも忘れてしまえたらいい。
、そんなことを考えても、この小さな村で起きた事件は世界的には結構重大な事件だったらしい。
魔王討伐時に殉死したと思っていた魔王軍幹部が生存していたこと。
そして配下を使い勇者のいる村を襲ったこと。そして魔王を倒した勇者がたかが魔物相手に苦戦し何とか辛勝したこと。
魔王討伐後に王族が勇者一行にその力を抑制する呪いをかけていたこと。特に勇者本人には体調を崩す程強いものをかけたのだと。
だから勇者は長いこと故郷の村で療養することになったのだということが気づけば街で噂になっていた。
「ぜーんぶ事実ですわ!!」
貸し切りにされた食堂でエミリアさんが吠える。
身内しかいない場、更にミランダさんが事前に消音魔法をかけていると言っても声量をもう少し控えて欲しい。
「そもそもあのアホ王家は、自分たちと血縁にならないなら謀反抑止の措置をさせて貰うとか言ってきて……」
「それで貴女が大暴れしたから尚更危険視されたのだけれどねエミリア?」
「だって魔王討伐の長旅から帰ってきたわたくしたちを労わることもせず、縁談話を脅し交じりにされたのですのよ?!」
うん。街中でしていい話ではない。けれど民衆全員に聞かせてやりたい気持ちもある。
数か月の追跡の末魔樹将軍の討伐に成功したエミリアさんたちの慰労も兼ねた食事会。
飲んだ果実酒で酔いが回ったのか、彼女は明け透けに当時のことを語る。
「特にライルは、婚約を断られてプライドを傷つけられた王女の怨恨の分も入っていたに違いありませんわ」
勇者が一番強力だから、その分力の封印も厳重にしなければいけない。
そうもっともらしく言っていたけれど、なんで死に物狂いで魔王を倒した後に更に苦痛を受けなければならなかったのか。
「あの仕打ちのせいでわたくしライルに過剰に同情し甘くなってしまって……結果としてライルもアデリーンさんも不幸にしてしまうところでしたわ」
本当に申し訳ありません。偉大な戦士の一人に深々と頭を下げられて慌てる。
しかし彼女がライルを特別甘やかしていた記憶はない。寧ろ通常通りならライルにどのような接し方をしていたのだろう。
彼が部屋でゴロゴロしていたら窓から蹴り落して魔物退治をしてこいと命じる感じだろうか。
私が想像している間にワインをすいすいと飲みながらミランダさんが言う。
「でもあの件で頭の悪い王家も実感できたのでしょうね」
魔王を倒したというのは、あくまで一番上の存在を倒しただけ。
いずれ次に強い者が新しい魔王になるだけのことだ。
つまり強力な魔族は当たり前のように存在する。その時に頼る存在は勇者だ。
彼が弱体化していれば国にも危機が及ぶ。
それを王家が認識したおかげで自分たちの封印は解かれたのだと。
「……そんなことも、犠牲が出なければわからなかったんですね。国は」
私が新たな料理を卓上に置きながら呟いた言葉に、ミランダさんは黙って目を伏せた。
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