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レースが終わった。
つむぎたちは3位になった。
橙のラスト半端分が効いての3位である。
公園のかまどを3つ使って、それぞれの親が集まって宴会していた。
3つともにジンギスカンが置かれていたので寛登がしゅんとなる。
「はい。一番速かった子に賞品。焼肉セットだよ」
祖母が寛登にビニール袋を差し出した。
一の家の店の袋。
中を覗くと牛肉6㎏と書かれている。
「ありがとう、おばあちゃん」
軍手をはめて、鍋を一つどかしてから寛登は肉を焼き始めた。
上位2チームは、普段ロードレースに出ている子たちのチームだった。
寛登にいろいろ話しかけていた。
「最高速度は大塚くんの37キロだけど、次が山内くんの31キロだね」
林太郎の報告に、舷がキッと琉人を見る。
本人は「へー」と言っただけだった。
「3周のアベレージは、二人とも一緒。26キロ」
「あはは。仲良し賞だ」
つむぎの祖母は二人にも袋を渡す。
ぎゅうぎゅうにウィンナーが入っていた。
「持久力があったのは橙さん。
初回の記録から一番伸びたのは亀さん」
祖母が橙に豚肉を、つむぎには野菜の入った袋を渡す。
「いや、ばあちゃんこれ、単に焼肉セット分けて配ってるだけだね?」
気づいたつむぎが声をあげた。
「そうだよう?」
とぼけた返事がくる。
昼ご飯を食べて、太陽の色が夕方になってくるころに解散した。
縁から、ステージに上って表彰されているチームの写真が送られてくる。
みんなそれぞれ違う方を向いている写真だったが、それがいいと思った。
ちゃんとしたのも後から送られてきた。
「ばあちゃん、北海道楽しかった」
家に帰ってから祖母に言う。
「でもね、たぶん前みたいに泣かないんだと思う。
お別れする日、私泣かないと思うよ」
祖母はそうかい?と聞いた。
「みんな、一人で考えててね。
何つーか、たぶん、向こうで会える気がするんだよ。
みんな歩いてく方向に、いつかばったり会う気がする」
そして、つむぎは冷蔵庫から水をとりだす。
二人分のコップに注いだ。
「まずは。健康第一。
今日は暑かったからね。
ばあちゃん。水分補給するよ」
帰ってから水を飲んでいないであろう祖母と乾杯した。
7月に入り、記念のように中間テストを受けた。
父からは軽ーく引っ越しの準備やっといてーと言われる。
つむぎは来る日も来る日もガムテープを引いた。
変な柄の服はこの際に全部捨てる。
祖母はもったいないかわいいまだ着れるとうるさかった。
自転車に括りつけて直接ごみの処理場に運び入れてやる。
両親から連絡の入った不動産屋さんが来て、家を買い取る手続きを済ませた。
正式に、祖母がこの家を手放す日が決まる。
祖母の品と、祖父の思い出なんかを中心に箱詰めした。
つむぎたちの分はなくなっているので、そんなに量でもない。
墓は引き払った。いま、中古物件として売りに出されている。
お墓の中古物件…。標準事故物件…。
つむぎはふふっと吹き出した。
祖母は位牌は手で持っていくという。
位牌堂から持って帰ってきた位牌といま一緒に寝起きしていた。
「つむちゃん、自転車どうするの?
向こうじゃ乗らないしょ」
祖母に尋ねられたが、これはつむぎの記念として持っていくつもりである。
「本州に帰ったら新しい自転車買うわ」
朝、山を走っているときに琉人に言ってみた。
「ロード?」
もうレースは終わったのだが何となく朝チャリは続いている。
先にやめると言うと負けた気がして言い出せなかった。
ちゃりんこレースの日からはツール・ド・フランスが始まってしまったし。
「どうしようかなあ。
一人でロードバイク乗ってるといろいろ難しそうだもんね。
まずはクロスバイクから?」
「したって向こうは自転車屋さんたくさんあるべ。
一人でも平気しょ」
確かに。
そんなに整備のスキルを持っていなくとも乗れるかもしれない。
「帰るの楽しみだなー」
「デリカシー」
海の日の連休に、つむぎは再び関東へ戻った。
チームのラインには全員からメッセージが入る。
東京に観光行ったら案内してくれ、とたくさんお願いされた。
一も行きたい行きたいとはしゃいだスタンプをくれる。
ごめん、東京には住んでない。
そう思いながらOKした。
舷からはよく分からないスタンプがひとつ来た。
実と林太郎は、勉強のお礼が中心である。
橙は受験頑張るよ。亀ちゃんに聞こうかなと言っていた。
寛登は冬に大会がある。近くに行ったら連絡するとあった。
琉人からは「またね」のスタンプだけだった。
縁は駅まで見送りに来てくれて、号泣しながら旭川方面に乗っていった。
ちょうど水泳部の大会の日だった。
じっとスマホを見ていたら、いつの間にか上野駅まで着いていた。
新幹線も悪くなかったのかもしれない。
祖母の荷物を持って、乗り換えのホームへ向かった。
つむぎたちは3位になった。
橙のラスト半端分が効いての3位である。
公園のかまどを3つ使って、それぞれの親が集まって宴会していた。
3つともにジンギスカンが置かれていたので寛登がしゅんとなる。
「はい。一番速かった子に賞品。焼肉セットだよ」
祖母が寛登にビニール袋を差し出した。
一の家の店の袋。
中を覗くと牛肉6㎏と書かれている。
「ありがとう、おばあちゃん」
軍手をはめて、鍋を一つどかしてから寛登は肉を焼き始めた。
上位2チームは、普段ロードレースに出ている子たちのチームだった。
寛登にいろいろ話しかけていた。
「最高速度は大塚くんの37キロだけど、次が山内くんの31キロだね」
林太郎の報告に、舷がキッと琉人を見る。
本人は「へー」と言っただけだった。
「3周のアベレージは、二人とも一緒。26キロ」
「あはは。仲良し賞だ」
つむぎの祖母は二人にも袋を渡す。
ぎゅうぎゅうにウィンナーが入っていた。
「持久力があったのは橙さん。
初回の記録から一番伸びたのは亀さん」
祖母が橙に豚肉を、つむぎには野菜の入った袋を渡す。
「いや、ばあちゃんこれ、単に焼肉セット分けて配ってるだけだね?」
気づいたつむぎが声をあげた。
「そうだよう?」
とぼけた返事がくる。
昼ご飯を食べて、太陽の色が夕方になってくるころに解散した。
縁から、ステージに上って表彰されているチームの写真が送られてくる。
みんなそれぞれ違う方を向いている写真だったが、それがいいと思った。
ちゃんとしたのも後から送られてきた。
「ばあちゃん、北海道楽しかった」
家に帰ってから祖母に言う。
「でもね、たぶん前みたいに泣かないんだと思う。
お別れする日、私泣かないと思うよ」
祖母はそうかい?と聞いた。
「みんな、一人で考えててね。
何つーか、たぶん、向こうで会える気がするんだよ。
みんな歩いてく方向に、いつかばったり会う気がする」
そして、つむぎは冷蔵庫から水をとりだす。
二人分のコップに注いだ。
「まずは。健康第一。
今日は暑かったからね。
ばあちゃん。水分補給するよ」
帰ってから水を飲んでいないであろう祖母と乾杯した。
7月に入り、記念のように中間テストを受けた。
父からは軽ーく引っ越しの準備やっといてーと言われる。
つむぎは来る日も来る日もガムテープを引いた。
変な柄の服はこの際に全部捨てる。
祖母はもったいないかわいいまだ着れるとうるさかった。
自転車に括りつけて直接ごみの処理場に運び入れてやる。
両親から連絡の入った不動産屋さんが来て、家を買い取る手続きを済ませた。
正式に、祖母がこの家を手放す日が決まる。
祖母の品と、祖父の思い出なんかを中心に箱詰めした。
つむぎたちの分はなくなっているので、そんなに量でもない。
墓は引き払った。いま、中古物件として売りに出されている。
お墓の中古物件…。標準事故物件…。
つむぎはふふっと吹き出した。
祖母は位牌は手で持っていくという。
位牌堂から持って帰ってきた位牌といま一緒に寝起きしていた。
「つむちゃん、自転車どうするの?
向こうじゃ乗らないしょ」
祖母に尋ねられたが、これはつむぎの記念として持っていくつもりである。
「本州に帰ったら新しい自転車買うわ」
朝、山を走っているときに琉人に言ってみた。
「ロード?」
もうレースは終わったのだが何となく朝チャリは続いている。
先にやめると言うと負けた気がして言い出せなかった。
ちゃりんこレースの日からはツール・ド・フランスが始まってしまったし。
「どうしようかなあ。
一人でロードバイク乗ってるといろいろ難しそうだもんね。
まずはクロスバイクから?」
「したって向こうは自転車屋さんたくさんあるべ。
一人でも平気しょ」
確かに。
そんなに整備のスキルを持っていなくとも乗れるかもしれない。
「帰るの楽しみだなー」
「デリカシー」
海の日の連休に、つむぎは再び関東へ戻った。
チームのラインには全員からメッセージが入る。
東京に観光行ったら案内してくれ、とたくさんお願いされた。
一も行きたい行きたいとはしゃいだスタンプをくれる。
ごめん、東京には住んでない。
そう思いながらOKした。
舷からはよく分からないスタンプがひとつ来た。
実と林太郎は、勉強のお礼が中心である。
橙は受験頑張るよ。亀ちゃんに聞こうかなと言っていた。
寛登は冬に大会がある。近くに行ったら連絡するとあった。
琉人からは「またね」のスタンプだけだった。
縁は駅まで見送りに来てくれて、号泣しながら旭川方面に乗っていった。
ちょうど水泳部の大会の日だった。
じっとスマホを見ていたら、いつの間にか上野駅まで着いていた。
新幹線も悪くなかったのかもしれない。
祖母の荷物を持って、乗り換えのホームへ向かった。
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