キミとふたり、ときはの恋。【立葵に、想いをのせて】

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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【5−5】

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「待たせて、ごめん」
「ううん。全然、大丈夫!」
 足早に目の前に来てから謝られたけど、本当に全然大丈夫。奏人が来てくれた。それだけで嬉しいもの。だから、笑って返事した。
「……花宮先輩、お疲れ様です」
「おう」
「じゃ、帰ろうか」
 煌先輩に会釈して挨拶した後、私のバッグをサッと手に取った奏人が、もう片方の手をこちらに差し出してきた。
 え、これって……ここで手を繋ぐってこと? え? え?
 ちょっとだけ躊躇したら、すっと肩に手が回った。
「では、失礼します」
 そのまま奏人はエレベーターに向かって歩き出す。
「えっ? あの! 煌先輩は一緒に乗らないの?」
 ちょっと強引に促されながら煌先輩を振り向けば。両手を頭の後ろで組んで長椅子にもたれた体勢の先輩が、ニヤリと笑ってから、口を開いた。
「またな、涼香」
 エレベーターがすぐに開いて、奏人と私をそこに閉じ込める。
 煌先輩に、初めて名前で呼ばれた。涼香、とそう呼ばれた瞬間、肩を抱く奏人の指先に、くっと力がこもった。

「講習会、お疲れ。どうだった?」
「あ、うん。すごく、ためになったよ。特に――」
 手を繋いで外を歩きながら、奏人に講習会のことを話し始める。
 エレベーターに乗ってる間、奏人はずーっと無言で。ちょっと重い空気が息苦しかったんだけど、どうしたらいいかわからなくてグルグル考えてるうちに表通りに出て。そうしたら、奏人のほうから話しかけてくれたの。
 ……ちょっと、ホッとした。
 でもね? 講習会のお話をするには、煌先輩とペアを組んでたってことをスルーする訳にもいかず。そのことに、触れた。サラッとだけど。
「……ふーん。で? その後、どうしたの?」
 そうしたら、私以上にサラッと流してくれた。笑顔で。私が話しやすいようにっていう奏人の優しさだってわかるから、私もそのまま話を続けた。
 講習を受けた証の、救命技能認定証を見せた時も、「頑張ったね」って笑ってねぎらってくれたの。
 でもその時、私の髪を梳いてくれる手が全然離れなくて。何度も何度も、本当に優しく撫でてくれるから、とっても恥ずかしかった。駅のホームだったから。
 電車は少し混んでたけど、奏人と隣同士で座れた。混んでるせいで肩とか腕がぴったりとくっついてて、ドキドキして息苦しい。
「ところで、講習会はジャージ着用じゃなかった?」
「あ、うん。そうなんだけど」
 そう、講習会は動きやすい服装を指定されてたから、学校を出る時から皆ジャージに着替えてた。さすが奏人、事前の私の説明を覚えてくれてたのね。
「終わってから、着替えたの」
 奏人と帰るから、講習会が終わってすぐ、ジャージから制服に急いで着替えた。皆と帰るだけなら着替えたりなんかしなかったんだけど、奏人と一緒に歩くなら、制服がいい。
 高等科の制服は夏服もほんとに可愛くて、白地のセーラー服の丸襟に紺のチェックでラインが入ってるところも、紺と水色のチェック柄のプリーツスカートも、夏用ベストはアイボリーとベビーピンクの好きなほうを着ていいところも、全部お気に入り。
「奏人が迎えにきてくれるから……同じ制服を着たかったの」
 そう言うと、ふっと笑みを深めて、見つめ返された。
 電車の振動に身を任せながら、二人の間に、見えない糸がピンっと張られたのが見えた気がした。
 この後に言われる言葉は、わかってる。
「俺のために着替えてくれたの? 可愛いね、涼香は。本当に、可愛い」
 その笑顔、――大好き。


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