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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【7−3】
しおりを挟む「あの、煌先輩の用事って、何ですか?」
「あー? ついてくればわかる」
用事って言うから、てっきり神社から出るのかと思ってたんだけど、「じゃ、行くぞ」と、参道を行く人たちの流れに煌先輩も加わったから、ちょっと驚いた。
んん? 先輩もお祭りに来たのかな?
デニムに黒のTシャツというシンプルな出で立ちの後ろ姿は、まるで慣れた道のりのように参道をサクサクと進んでいく。
というか、ちょっと足速すぎ? 広い背中がどんどん離れていくけど、私の足じゃ追いつけない。
やだ、またひとりになっちゃう!
「あのっ、こっ、こう……」
「涼香?」
あっ、振り向いてくれた。戻ってきてくれたのは申し訳ないけど、気づいてもらえて良かったぁ。
「悪い。気ぃ利かなくて。お前、歩きにくいんだったな」
「すみません。私が、こんな格好だから」
「や、違う。俺が悪い。――じゃあ、こうするけど、いいか?」
あ……これ。
「は、はい。大丈夫、です」
いいか、と煌先輩が私の手首を掴んで誘導した先は、Tシャツの裾。
「ちゃんと持っとけよ」
私が頷いたのを見てから、また歩き始めた。今度は並んで。
この歩き方、前にもしたことある。中三の初め、スキー合宿に向かう途中のサービスエリアで、奏人とこうやって歩いた。
「ふふっ」
何だか、懐かしいな。奏人とこんな風に歩いたのは、あの時の一度きり。
でも、布地一枚の繋がりだったけど、片想いの相手と並んで歩くことが出来て、すごく嬉しかったのを覚えてる。恥ずかしくて顔も上げられなかったけど、ほんとに嬉しかったんだぁ。
「おかしいか?」
「え?」
「こんな、まだるっこしいやり方してることが」
え、何が?
半歩だけ前を歩いてる煌先輩が斜めに見下ろしながら尋ねてきた言葉の意味がわからなくて、黙って見返したまま首を傾げた。
「笑ってるから……お前、さっきあんな目に遭って泣いたばっかだろ? だから、土岐じゃねぇ男に手ぇ引かれて歩くなんて怖いんじゃないかって思っただけなんだけど」
あっ、〝これも同じ〟だ!
あの時の奏人も、泣いてた私を怖がらせないために、こうやって歩いてくれたんだって後から教えてくれたもの。
「えと私、おかしくて笑ってたわけじゃなくて……あの、いろいろ考えてくださって、お気遣い嬉しい、です。あっ、それから私、煌先輩のこと怖いなんて思ったこと、一度もないよ?」
煌先輩は優しい。それは、昔から知ってる。
ぶっきらぼうな物言いの中に見せてくれる、優しさと温かさ。鋭い眼差しも、威圧感のある雰囲気も。どこも何にも、怖いなんて全然思えない。
「そ? なら、いいけど。でも、今はこのまま歩くぞ」
「はい」
すっと視線を外して、前を向きながら告げられた素っ気ない口調に、さっきとは違う笑みが浮かんだ。
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