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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【8−2】
しおりを挟む「か、かなっ……」
きつく寄せられた眉と、厳しい視線。それを見上げながら名前を呼ぶけれど、後が続かない。
「涼香、答えて」
鋭い口調とともに、私の肩を掴んだ奏人の手にも更に力が加えられて、振り向こうにも振り向けない。
あぁ……もう煌先輩の姿、見えなくなっちゃってるよねぇ。
そう思ったら、今、私に出来るのは奏人とお話することだけだよね、って、すーっと開き直れた。
「あ、あのっ……奏人、もしかしなくても怒ってる、よね?」
だから、まずはこれから聞かなきゃ。
「私ね、その……ちょっとだけ早く車から降りちゃってね? で、ここで男の人にしつこくお誘いされて困ってた時に、煌先輩に助けてもらったの」
それと、これも言わなきゃ。
「その時、ちょっとだけ泣いちゃって……自分が悪いのに、すごく怖くて。だから……奏人との約束破って、ごめんなさい!」
ちゃんと謝らなきゃ。車で待ってなかったこと。奏人が来たら、このこと謝らなきゃって、ずっと思ってたの。
でも、これでもっと怒っちゃうかしら? と、思いつつ。ぎゅっと目を瞑って奏人からのお叱りの言葉を待ってたら、短い溜め息が聞こえてきた。
あー、そうよね。やっぱり怒っちゃうよね、と身体を固くした途端。
「えっ?」
ふわりと、抱きすくめられた。
「ごめん……約束破らせて、ごめん」
耳元に落ちてきたのは、絞り出すような苦しげな声、だった。
「俺が遅刻したからだよね。本当にごめん」
「え? 違っ……勝手なことした私がっ」
さらに重ねて謝ってくれるから、悪いのは私だと続けながら顔を上げたんだけど。私の視線を受け止めた奏人がそれを途中でさえぎって、「いや、俺が悪い。ごめん」と言い切ってしまう。
そして、奏人の胸元にかけた私の手に手を重ねて、そこでそっと指が絡められた。
「俺のせいで怖い思いさせて、ごめんね」
指先から伝わる温もりと、背中に回された腕で身体ごと包み込んでくれる温もり。それに安心して、ポロッと問いかけてしまっていた。
「奏人? 怒ってないの?」
直後、目を見開いた奏人が、とても雄弁な表情を真っ直ぐに向けてきた。
口元をきゅっと引き締めた、何か言いたげな、激情を抑え込もうとしているような、そんな表情。
「……怒るわけないよ。悪いのは俺なのに。取りあえず、行こうか。――おいで」
けれど、向けられた表情に類する言葉を聞くことは出来なくて。
そして、この言葉と同時に視線は外され、絡め合った指を繋ぎ直して足を踏み出した奏人とともに、私も歩き出すことになった。
……私、変だ。おかしい。
奏人が遅刻してきた理由、聞かされずに済んでホッとしてる。
奏人の口から直接聞きたいって思ってたはずなのに。ハッキリさせたい気持ちと、このままうやむやになってもいいって気持ちの両方が、今せめぎ合ってるの。
このままでいいはずないのに、ね……。
……どうしよう。
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