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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【8−3】
しおりを挟む「それでね。さっきの浮見堂から見えた立葵をね、あとで一緒に見たいなぁって思ったの。ライトアップされてたから、きっと見応えあると思うんだけど……」
落ち着かない。
「あっ、それから、この神社ね。秋の紅葉もとっても綺麗で、有名なんですって」
行き交う人波の中、はぐれたりしないよう、しっかりと手を繋いでくれてるけど。私の歩く速度に合わせて、ゆっくりと進んでくれてるけど。斜め下から見上げる奏人の横顔は、真っ直ぐ前を向いたままなの。
話しかけ続ける私に、「わかった」とか「ふーん」という返事は返してくれるけれど、それ以上の会話が続かないの。
こういうのを、ぎくしゃくしてるって言うのかな? 『怒ってない』って言ってたけど、やっぱりちょっとは怒ってるのかな?
そう思ったら、だんだん頭が下を向いてしまう。
私、何してるんだろ。この日をずっと楽しみにしてたのに。
こんな季節はずれの紅葉の話なんかじゃなくて。ほんとは、奏人がいま着てる浴衣のお話とかしたいのに。すごく頑張って着つけをした私の浴衣のお話だって、聞いてもらいたいのに。
「樹齢八百年の大銀杏の木もあるんですって。その銀杏の木ね、煌先輩が子どもの頃に萌々ちゃんと一緒に……」
なのに、どうして。思ってることと違う話題を口にしちゃうのかな?
「――涼香、そろそろ黙ってくれる?」
だから、奏人のこんな冷たい声を聞く羽目になっちゃうんじゃないの?
ひやりと冷たい声。抑揚のない口調。初めて向けられたきつい言葉にびっくりして、歩く足が止まった。その弾みで繋いだ手がピンと伸びて、奏人もすぐに足を止める。
「……あ……」
次いで、斜めに見下ろしてきた奏人の瞳の無機質さに、思わず息を呑むことになった。
賑やかな祭り提灯の灯を跳ね返す眼鏡のレンズの奥には、闇と同じ色の昏い瞳が見えたから。
初めて、『黙れ』って言われた。
どんな時でも、たぶん奏人にとっては興味のない話をしてた時ですら、私の話を穏やかに聞いてくれてたはずの奏人が、初めて『黙れ』って言った。
どうしよう。怖い。
だって、今までこんな冷たい雰囲気を見せられたこと、ないんだもの。
いつだって私に優しかった奏人なのに。
――怖い。
そう思ったら、身体が自然と1歩うしろに下がっていて。しっかりと繋いでいたはずの手を、自分から離してしまっていた。
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