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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【8−5】
しおりを挟む「ごめんなさい」
力を入れずにふんわりと腕を回して、そっと包み込んでくれてる奏人。両腕を上げれば、すぐにその腕に手が届く。
「ごめんなさい、奏人」
奏人の浴衣の袖にきゅっと指をかけて、もう一度『ごめんなさい』と伝えた。悪いのは、私だから。
「涼香? 違うよ。謝っちゃ駄目だ。これは、俺の狭量さに原因があるんだから」
すると、慌てたように少し身を引いた奏人が、早口で否定してくる。奏人の袖を握ってる私の手を、片手で包み込みながら。
「俺が、もっと上手く対応出来てれば良かったんだ。でも、それが出来なくて……」
悔しそうな語尾の響きと同時に、包まれた右手に奏人の指から力が伝わってきた。
祭り提灯の仄かな灯りが、ゆらりと風に揺れながら照らしてる、奏人の表情。じっと見つめる私からその感情の色を隠すかのように、ふいっと横を向いてしまったけれど。
かろうじて見える形のいい唇と、綺麗なカーブを描いてる頬から顎へのライン。そこだけを見つめてたから、ちゃんと気づけた。
口元をキッと引きしめた後、奏人が唇をほんの少しだけ動かして発した、ごくごく小さな呟きに。
「ナンパされた君を助けただけにしては、あまりに親密な雰囲気だったから……だから、我慢できなかった。でも、あんな言い方するつもりなんて本当になかったんだ。ごめん」
あぁ、さっき言ってた『他の人』って。やっぱり煌先輩のこと、なんだよね。
「奏人? こっち向いて?」
私から表情を隠すように、横を向いたまま紡がれた奏人の言葉は、本当にかすかな声だった。
ほんとは、口にしたくない思いだったのかもしれない。
でも、最後に『ごめん』ってつけ加えてくれてたから、それでも私に聞かせてくれたってこと、なんだよね?
「もう、目、逸らしたりしないで?」
奏人と唯一繋がってる右手。それを離されたりしないよう、もう片方の手で奏人の手首を掴んで、きゅっと力を込めた。
「涼香……」
そうして、奏人の目線を私に引き戻す。
祭り提灯の灯りを反射する奏人の眼鏡のレンズ、それを至近距離で覗き込めた。そのことに、ものすごくホッとした。
その安心した笑顔のまま、絶対に放さないという意気込みで奏人の手を握りながら、言葉を紡いでいく。
「あのね、奏人。ちょっとたくさん喋るけど、最後まで聞いててね? えと、私ね。ほんとに今日を楽しみにしてたのよ? 奏人が来てくれるのをね、すごく楽しみに待ってたの。自分で言うなんておかしいけど、浴衣の着付けも、メイクもネイルもいっぱい頑張ってオシャレしたの。奏人との夏祭りデートだから。大好きな奏人とのお出かけだからよ? でもね、私のせいなんだけど、ちょっと色々上手くいかなくて……それで結局、奏人に嫌な思いさせて、ごめんなさい! それから、このお庭に連れてきてくれて、ありがとう。ここ、すごく素敵。私、毎年ここに来たい。――奏人と一緒に!」
謝らなきゃいけないことは、もっとある。たぶん。
でも違う。今、私がしなくちゃいけないことは、それじゃない気がした。
今は、奏人への『大好き』を伝えるの。
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