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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【8−6】
しおりを挟む奏人は悪くない。悪いのは、私だ。だけど私が謝れば、奏人だって謝る。
そしたら、お互いにずっとその繰り返しになっちゃう。そんなの、駄目。
だから、『大好き』だけを伝えるの。
「えと、これで終わりだけど。最後に、もうひとつ言わせてね。あの……今日の奏人、すごくかっこいい」
きゃーっ! 言っちゃったぁ!
「その浴衣、とっても素敵だし、すごく良く似合ってるわよ? 黒と紺の縦縞に薄ーくピンクのラインが入ってるなんて、着る人を選ぶオシャレなお仕立てなのに、それを難なく着こなしちゃってるとこも、かっこいい。わ、私ねっ。浮見堂で会ってから、実はずーっとドキドキしててっ。それからっ……っ、きゃっ!」
「涼香? ここで、それは反則だって。全く、どこまで煽る気?」
えぇっ? 『反則』って、何? というか、それよりこの体勢!
私、奏人の手を握って話してたはずなのに。なのに、露台に腰掛けてたはずの身体が、今、宙に浮いてるの。
つまり、奏人が片手だけで私を抱き上げて。それに慌てた私が放したほうの手で、今度は腰もしっかりと抱え直されて。ギューッて! ギューッて、されてますっ!
「はぁぁ……ほんと君って、俺をどうしたいわけ?」
どうもしません! というか、どうにかされてるのは私のほう! なんですけどっ?
「あのっ、奏人? お、おろしてっ? 重いから! 私、重いからっ」
「無理。今は、無理。離せないよ……可愛すぎて、無理」
「やっ、あの、でもっ……」
可愛い、なんて嬉しいけども! でも、でもっ、こんな体勢っ……ひっ、人目が気になるのよっ。
「涼香」
あ、ちょっとだけ『ギューッ』が緩んだよ? おろしてくれるのかな?
「涼香のこと好きすぎて、離せない。だから、無理。――ねぇ、嫌がらないで?」
もおぉっ! そんな色っぽいお顔と声で囁かれて、私のほうが色々と『無理』ですぅ。
「奏人、ずるい。私が嫌がって言ってるわけじゃないって知ってるでしょう? なのに、そんな言い方するなんて……」
「涼香が、先にめいっぱい煽ったんでしょ?
あ、そうだ。せっかくだから、さっきの続きを聞かせてもらおうかな。俺にずーっとドキドキしてて、の後、『それから』の続きは、何?」
最後の問いかけ。その部分だけが特に甘い声に変わった。
ほら、やっぱりずるい。
「あ、あのね。えと……そんな素敵な奏人だから、私がつり合えてない気がして、ものすごく不安になっちゃいました。でもでも! つり合えてなくても、隣にいたいんですっ」
だって、こんなこと私に言わせるんだもの。自分から、ぎゅっとしがみつかせたりするんだもの。
「大好きだからっ!」
「ふっ。何で、いきなり敬語? けど、涼香から抱きついてくれるなんて嬉しいな。ありがとう」
軽く笑った奏人が、抱きしめる力をまた強めた。
こうして、ぎゅっと出来ること。正直、私も嬉しい。
「え? 嘘っ」
けど、奏人の肩越しに見えてしまったものに声があがる。
「あ、ねぇ、奏人。人っ、人が居る。あそこ!」
月を浮かべた池にかかる、綺麗なアーチ型の石橋。その上に人影が見えた。何人も。
「ん、そうだね。今夜は夏祭りだからね。しかも、こんな絶景スポットなんだから、人が居ないわけないよ。でも気にしなくていいよ。見たところ子ども連れは居ないから」
うわぁ、しれっとした綺麗な笑顔キタ! じゃなくて!
「しっ、知ってたの? 人が居るって気づいてて、こんなことっ」
「んー? そりゃ、気づいてたけど。でも、あちらさんも俺たちと目的は同じなんだから、大丈夫。涼香が気にするほど、こっちのことは気にされてないよ」
ええぇ! あちらがよくても、私が気にするんですぅ。
だって、あちらの皆さんと私たちじゃ、密着度が全然違ってるんだもの。は、恥ずかしっ。
「それより、俺に集中して? 俺は、涼香だけを見てるんだから」
あぁ、やっぱり、ずるいひとだ。
吐息が零れるような、密やかな囁き。これひとつで、私の抵抗を難なく奪ってしまう。
その唇が、しっとりと吸いつくような感触を両の頬に落としてくるのを、じっと待ってしまう。
「可愛い。――大好きだよ」
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