66 / 85
キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【8−7】
しおりを挟む「お月様、ほんとに綺麗ねー。今まで満月の時ばかり注目してたけど、上弦の月もこんなに綺麗なのね。こうして池の水面に映る月と両方眺められるから、余計にそう思うのかしら」
「水面に映る月と言えば、平安時代の貴族たちは月を直接見ることはせずに、こんな風に水鏡に映した月のほうを愛でていたらしいよ」
「そうなの? 平安時代の貴族さんたちは、雅な楽しみ方をしてたのねぇ」
ふたり、露台に腰かけてのお月見。両方のほっぺにチュッてしてくれた後。とーっても優しく笑った奏人は、その後そっと露台におろしてくれて、『今夜は七夕だけど、月見も楽しんでみようか』と、隣に並んで座った。
「浴衣、新調したんだね。去年の朝顔の柄も良く似合ってて可愛かったのに」
「お、覚えててくれたの?」
「もちろん、忘れるわけないよ。でも、この華やかな牡丹柄も良く似合ってる。帯は、梅? 折り返して二色で見せてるところも可愛いよ」
「うんっ。うん、そうなの。牡丹と梅の花なの……嬉しい」
嬉しい。浴衣、褒めてくれた。帯を折り返して巻いてるのも気づいてくれた。
何より、去年の浴衣の柄まで覚えててくれた。
ちゃんと見てくれてる。それを確信させてくれるところ、すごく好き。
「髪型も、可愛いよ。編み込みのシニヨン?
今度、学校でもやってあげようか。ちょっと後ろ側、よく見せてくれる?」
「え? こ、こう? ……っ、ひゃあっ! かっ、奏人っ?」
「ご馳走さま。可愛いうなじに、ずっと誘われてたから仕方ないよね。キスしただけだから、許してくれる?」
「……っ、『だけ』って!」
後ろ見せて、って言うから素直に見せたら、うなじにチュッてされて。それで、そのことを『許してくれる?』って聞きながらも、悪びれずに綺麗に微笑んでるこのひとに、なんて答えよう?
「い、いきなりじゃなくてっ。先に了解とってください!」
この笑みには絶対に勝てない気がするから、こう答えときますぅ。
「それでね、おばあちゃんが色合いが私に似合うって言って選んでくれたのが、この組み合わせなの」
奏人に浴衣を褒めてもらえたことで、帯についてもウキウキと説明中。
牡丹柄の浴衣に合わせたのは、濃いピンクの地に小さな白梅が染め抜かれた帯。リバーシブルになっていて、前で斜めに折り返したことで薄いピンクの地と、濃いピンク、両方を一度に楽しめてるところがお気に入りだと力説した。
「ん、その通りだね。涼香の肌の色が際立つ、とても良い見立ての品だと思うよ。良く似合ってて、可愛い」
「あ、ありがと。えっと……嬉しい。あっ、さっきも言ったけど。私、奏人の浴衣の柄、これ、すごく好き。奏人も、とても良く似合ってるよ?」
「ふっ、ありがとう。でも、俺のことを『かっこいい』なんて言うの、涼香くらいだけどね」
うわぁ……黒地に紺とグレーの縦縞、それに薄いピンクのラインがほどこされたオシャレな浴衣をさらっと着こなしてるくせに、何言っちゃってるのかしら。
この無自覚さんをどうにかしないといけないわ。でないと――。
「ねぇ、涼香。俺、知りたいことがあるんだけど。答えてくれる?」
奏人の声色が、不意に変わった。
表情は変わらずに優しいままだけど、さっきまでとは、どこか雰囲気も違う気がする。何だろ? 『知りたいこと』って。
でも、尋ねながらそっと絡め直された指から伝わる温もりも優しいままだから、笑って答えた。
「うん、何でも聞いて。なぁに?」
「俺が待ち合わせに遅れてた間。あの人と、何かあった? ――どこか触られたり、した?」
あの人? 『あの人』って……煌先輩、のこと?
10
あなたにおすすめの小説
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
各務課長が「君の時間を十分ください」と言った結果
汐埼ゆたか
恋愛
実花子はカフェで恋人と待ち合わせしているが、彼はなかなか来ない。
あと十分でカフェを出ようとしたところで偶然上司の各務と会う。
各務から出し抜けに「君の時間を十分ください」と言われ、反射的に「はい」と返事をしたら、なぜか恋人役をすることになり――。
*☼*――――――――――*☼*
佐伯 実花子(さえき みかこ) 27歳
文具メーカー『株式会社MAO』企画部勤務
仕事人間で料理は苦手
×
各務 尊(かがみ たける) 30歳
実花子の上司で新人研修時代の指導担当
海外勤務から本社の最年少課長になったエリート
*☼*――――――――――*☼*
『十分』が実花子の運命を思わぬ方向へ変えていく。
――――――――――
※他サイトからの転載
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※無断転載禁止。
私の赤い糸はもう見えない
沙夜
恋愛
私には、人の「好き」という感情が“糸”として見える。
けれど、その力は祝福ではなかった。気まぐれに生まれたり消えたりする糸は、人の心の不確かさを見せつける呪いにも似ていた。
人を信じることを諦めた大学生活。そんな私の前に現れた、数えきれないほどの糸を纏う人気者の彼。彼と私を繋いだ一本の糸は、確かに「本物」に見えたのに……私はその糸を、自ら手放してしまう。
もう一度巡り会った時、私にはもう、赤い糸は見えなかった。
“確証”がない世界で、私は初めて、自分の心で恋をする。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる