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第三章
衝撃の告白【4】
しおりを挟む乃亜の心臓が、ぎゅうっと引き絞られる。
きっと気持ち悪がられる。こんな、ぼろぼろ泣きながら花を吐いてる三十路男。
みっともない。情けない。見苦しくて、汚らしい。百歩譲っても、ひどく哀れなだけだろう。
「……れ……すか」
「す、すみません。お見苦しいところをお目にかけて。すぐに掃除しますので、リンゼイさんは外に……」
「掃除なんか、どうでもいい!」
「えっ?」
乃亜の脳裏にあったのは、絶望。それから、すぐに逃げ出したいのを必死で堪えての、ユージンに迷惑をかけないよう早急に場の清掃をしなければという責任感だけだった。
だから、突然のユージンの怒鳴り声は乃亜の声をさえぎる以外に、彼の手足の動きを一瞬で止めた。
「誰だ?」
「リンゼイさん?」
背すじを伸ばした直立不動で、乃亜が目を見開く。ユージンが発した問いが、乃亜には理解不能。誰、と聞くまでもなく、トイレで花を吐いていたのは自分なのだ。
それなのに、誰? とは、何のための確認なんだろう。しかも、こんなに怖い顔のユージンは初めて見る。
「教えてくれよ。誰?」
また聞かれた。この質問には戸惑いしかない。つい先ほど、他ならぬユージン本人が『嶋村さんは花吐き病ですか?』と直球で尋ねて来たくせに。いったい、何をこんなにしつこく……。
「誰に片想いしてるの?」
え……。
「こんなに何本もの花を吐くほど、誰に恋してるんだ! 俺が! 俺が、こんなにあなたを想ってるのに!」
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