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第三章
衝撃の告白【5】
しおりを挟むすごい大声だ。館内中に響いたんじゃないだろうか。
人は、驚愕が過ぎると、逆に冷静になると言ったのは誰だったか。ユージンの絶叫を聞いた直後の乃亜は、彼の声量の度合いを客観的に観察する余裕を見せていた。
「どうしてだよ! 俺っ……俺が一番、誰よりも嶋村さんをっ」
この人は、さっきから何を言ってるんだろう。僕の名前を何度も連呼して。
けれど、冷静なのは思考の表面のみ。喚き続ける金髪のカメラマンの言葉をちゃんと追っているのに、その内容が頭に入ってきていない。聞こえているのに、語彙として咀嚼できていない。
持っていたリナリアを、そっと胸に抱え込んだ。乃亜の恋情の結晶を。
「何を、怒ってるんですか?」
「は?」
そうして、気づけば、脳裏に浮かんだ言葉だけを素直に口にするということを始めていた。
「僕が誰を好きでも、リンゼイさんには関係ないです。じきに海外に行ってしまわれる、あなたには」
「そ、それは……」
乃亜の静かな呟きは、ユージンの感情任せの勢いを一瞬で霧散。そして、口ごもったユージンは何かがおかしいと首を傾げ、話が噛み合っていないと気づいた。
「それは、そうだけど。嶋村さんの言う通りだけど……え? 待って。俺、言ったよね。今、告ったよね? どさくさ紛れにだけど、『俺が、こんなにあなたを想ってるのに』って。なんで、肝心の告白はスルーされて、俺、責められてんの?」
「え? 告白?」
今度は、乃亜が首を傾げる番だった。
「いつ?」
「いやいやいや、言ったよ。恥ずかしながら、めっちゃ大声で」
え? いつの間に? 僕、そんな嬉しいこと聞いてなかったってこと? この人がもうすぐいなくなってしまうってショックが大きすぎて情報処理できなかったんだろうか。
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