13 / 17
第三章
衝撃の告白【6】
しおりを挟む「てゆうか、俺の質問に答えてよ。誰に片想いしてるの? 俺じゃ、だめ? 俺、あなたのこと、本気で好きなんだ。好きすぎて、もうすぐ国外に行っちゃうよ、いなくなっちゃうよって嘘ついて、あなたの反応を見たいって思ったくらいで」
「ええぇーっ?」
——ドンっ!
「おわっ!」
「それっ、本当ですかっ?」
「ななっ、何っ?」
「今の! 嘘をついて、って部分です。その嘘の話、本当ですか? 嘘は本当っ?」
自分でもちょっと何を言ってるかわからないと思ったが、勢いのまま、乃亜はユージンに迫る。ここに他者がいれば、掃除用具入れのドアに相手を片手壁ドンで追い詰めた乃亜の鬼気迫る表情が見られたことだろう。
勢いがつきすぎて、大事に抱えていたはずのリナリアをもう片方の手で鷲掴みにしていたことに気づいたが、最早どうでもいい。
いや、花が可哀想だし、どうでもよくはないのだが、それどころではない、が正解。花弁をぶらぶらさせてユージンに触れさせるよりは鷲掴みが正解。
「どうなんですか? 海外に行かれる件、嘘だったんですかっ?」
「う……そうです。嘘つきました。すみません」
そして、最重要の正解を乃亜は得た。
「嘘? あれ、嘘?」
「ご、ごめんなさい。中国に撮影に行くのはほんとだけど、北京を拠点にアジア各国を巡るってのは大嘘です。もしかして、びっくりさせたなら……」
「良かったぁ」
「え?」
安堵のあまり、その場にくず折れそうになるのを何とか堪えると、自分より背の高いカメラマンの肩にぽすんっと頭を預ける形になった。
「それなら、会えますね。国内でなら、僕、いくらでも会いに行ける。というか、行きます! ああぁ、本当に良かったぁ」
「え? え? えーと、俺、実はもう出版社に掛け合って、関西支社メインで仕事もらえるよう話はつけてあるんですけど。それとは別に、嶋村さんが個人的に俺と会ってくれるってことですか? 俺の告白、オッケーってこと? え? 間違ってる?」
「いいえ、間違ってません」
相変わらずユージンの肩に額を乗せたまま、乃亜は低い笑いを零す。
自分もかなり鈍いが、金髪のカメラマンも相当なものではないか? と。
12
あなたにおすすめの小説
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
リスタート・オーバー ~人生詰んだおっさん、愛を知る~
中岡 始
BL
「人生詰んだおっさん、拾われた先で年下に愛される話」
仕事を失い、妻にも捨てられ、酒に溺れる日々を送る倉持修一(42)。
「俺の人生、もう終わったな」――そう思いながら泥酔し、公園のベンチで寝落ちした夜、声をかけてきたのはかつての後輩・高坂蓮(29)だった。
「久しぶりですね、倉持さん」
涼しげな顔でそう告げた蓮は、今ではカフェ『Lotus』のオーナーとなり、修一を半ば強引にバイトへと誘う。仕方なく働き始める修一だったが、店の女性客から「ダンディで素敵」と予想外の人気を得る。
だが、問題は別のところにあった。
蓮が、妙に距離が近い。
じっと見つめる、手を握る、さらには嫉妬までしてくる。
「倉持さんは、俺以外の人にそんなに優しくしないでください」
……待て、こいつ、本気で俺に惚れてるのか?
冗談だと思いたい修一だったが、蓮の想いは一切揺らがない。
「俺は、ずっと前から倉持さんが好きでした」
過去の傷と、自分への自信のなさから逃げ続ける修一。
けれど、蓮はどこまでも追いかけてくる。
「もう逃げないでください」
その手を取ったとき、修一はようやく気づく。
この先も、蓮のそばにいる未来が――悪くないと思えるようになっていたことに。
執着系年下×人生詰んだおっさんの、不器用で甘いラブストーリー。
貴方へ贈る白い薔薇~思い出の中で
夏目奈緖
BL
亡くなった兄との思い出を回想する。故人になった15歳年上の兄への思慕。初恋の人。忘れられない匂いと思い出。黒崎圭一は黒崎家という古い体質の家の当主を父に持っている。愛人だった母との同居生活の中で、母から愛されず、孤独感を感じていた。そんな6歳の誕生日のある日、自分に兄がいることを知る。それが15歳年上の異母兄の拓海だった。拓海の腕に抱かれ、忘れられない匂いを感じる。それは温もりと、甘えても良いという安心感だった。そして、兄との死別、その後、幸せになっているという報告をしたい。亡くなった兄に寄せる圭一の物語。「恋人はメリーゴーランド少年だった」も併せてどうぞよろしくお願いいたします。
想いの名残は淡雪に溶けて
叶けい
BL
大阪から東京本社の営業部に異動になって三年目になる佐伯怜二。付き合っていたはずの"カレシ"は音信不通、なのに職場に溢れるのは幸せなカップルの話ばかり。
そんな時、入社時から面倒を見ている新人の三浦匠海に、ふとしたきっかけでご飯を作ってあげるように。発言も行動も何もかも直球な匠海に振り回されるうち、望みなんて無いのに芽生えた恋心。…もう、傷つきたくなんかないのに。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
恋人ごっこはおしまい
秋臣
BL
「男同士で観たらヤっちゃうらしいよ」
そう言って大学の友達・曽川から渡されたDVD。
そんなことあるわけないと、俺と京佐は鼻で笑ってバカにしていたが、どうしてこうなった……俺は京佐を抱いていた。
それどころか嵌って抜け出せなくなった俺はどんどん拗らせいく。
ある日、そんな俺に京佐は予想外の提案をしてきた。
友達か、それ以上か、もしくは破綻か。二人が出した答えは……
悩み多き大学生同士の拗らせBL。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる