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第二章
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しおりを挟むひつじ雲とは、上手く名付けたものだ。
空一面に広がるモコモコした白雲の群れを見上げ、一番最初にこれをひつじ雲って命名した人、すごいな、なんて感心してしまう。
からっと晴れた秋空から下ろした目線は、前方の体育館に。
祥徳学園には体育館が二つある。普段、バレー部の練習は小体育館で行ってるけど、他校を呼んでの練習試合は大体育館を使用する。
大体育館は二階に観覧席があって生徒や保護者が応援に来てくれるから、選手たちは張り切っちゃうのよね。
「あーっ、ひかる先輩! おはようございます!」
「優里ちゃん、来たよー」
体育館に入る前に、後輩のほうから見つけてくれた。頭の上で両手を大きく振ってくれてるけど、こっちは両手が塞がってるから声だけ張り上げる。
「これ、差し入れー。悪いけど、半分持ってくれる?」
「こんなにたくさん、ありがとうございますっ。全部、持ちますよ」
「いいよ、いいよ。半分で。二本持ってくれるだけで助かる」
2リットルのペットボトルが二本減るだけで、だいぶ違う。部活引退しても筋トレは続けてるけど、手助けしてくれるのはありがたい。
「あ、一本はオレンジジュースだ。しかも私らの好きなやつ。さすが、ひかる先輩っ」
「気が利くでしょ? でも先生に見つからないよう、試合が終わってから飲みなさいよ」
「はーい」
ほんとはスポーツドリンクオンリーのほうがいいんだろうけど、試合後のご褒美なら大丈夫だろうとオレンジジュースも一本選んだ。選手のカロリーチェックは、頼れるマネージャー、優里ちゃんに任せておけばオッケーだからだ。
「ひかる先輩っ。今日の相手校のセッター、ファンクラブ会員番号、60番の子なんですよ。ひかる先輩が観戦に来てくれるって言ったら、めちゃ張り切ってました」
「え、そうなの? えーと、じゃあ、対戦相手だけど、目立たない程度に手とか振っとく?」
敏腕女子マネ、二年の十束優里ちゃんは、なぜそんなものが出来たのか非常に不可解なんだけど、中等科の頃に発足したという私のファンクラブの会長でもある。
高身長でハスキーボイス、手足が長くてベリーショートのエースアタッカーを某歌劇団の男役みたいに慕ってくれてる子がたくさんいるから、というのが発足理由らしい。
もう部活引退したんだからファンクラブも解散かなと思ってたけど、まだ活動は続くようだ。
鼻持ちならない言い方をすれば、顔立ちが整ってるのも、スタイルと運動神経が良いのも、そつのない人付き合いができるのも私自身だけど。
八十人以上いるというファンクラブ会員のうち、何人が『バレー部のひかるちゃん』ではなく、『瀧川ひかる』本人の中身を見てくれているのかなーって、たまに……ごくたまに思ったりする……。
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