ケルベロスは甘く囁く

冴月希衣@商業BL販売中

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3 ケルベロスとオルトロス

#3

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「ねぇ、いっちゃん!」

 尋ねたいことが、一気に噴き出してきた。

「いっちゃんは知ってたの? 伊織さんのメスが模造品って。それに隠し持ってる場所とか知ってるくらい仲良しなの? あと、伊織さんとの打ち合わせって何? それに慶太くんが関わってるのは、なんでなのか、チカ知りた……」

「チカ。少し、待て。先に俺とコイツが話をつけるから。お前は、その後だ」

 そして、それを矢継ぎ早に質問するも、またもやトントンとあやされ、なだめられて『待て』をされてしまう。

 うぅぅっ。いっちゃんてば、ひどいよ。

 だって、だって……!

 トントンのついでに、クイッと抱え直された時。「チャラドクターとの話にケリがつけば、その後はもう俺の時間は全部お前のモンだから、今はおとなしくいい子にしてろ」って、振り向いて囁くんだもん。

 大好きな色めいた声で、「ふっ」て笑いながらそんなコトを囁かれたら、チカはチョロいから、即キュンときちゃうじゃん。

 そんで、素直(馬鹿)だから、しっかりと口閉じて、おとなしくしちゃうに決まってるじゃん。

 『待て』の命令を全力でお利口に守っちゃうじゃん!

 もう、ほんとずるいぃ……。


「オラ、さっさと話つけんぞ。チャラドクター。何がどうして『チカの細胞』云々の流れになった? あ?」

「うふふん。やっと僕の出番かぁ。じゃあ、宮城先生の質問に先にお答えしようかな。で、親切な僕が、その後に秋田くんの質問にも答えてあげるねっ」

 スチャっと人差し指を立てて左右に振った笑顔の伊織さんが、壁にもたれかけていた身体を真っ直ぐに起こした。

「実はねぇ。僕、昨夜、藤沢先生と飲んでたんだよ」

 そして、思わせぶりにニヤリと笑ってから、おもむろに語り出すのを、息を詰めて聞く体勢に入る。藤沢先生――――チカが種明かしを聞きたかった慶太くんの名前がここで出てきたことに、バンバン興味を引かれながら。

「んで、藤沢先生がその時にね。『俺の知り合いには各部門の最強が揃ってるんですけど、その中でも一番の最強は、幼なじみのチカちゃんなんすよ。めっちゃ天使で可愛いのに俺を片手で持ち上げられるくらいの力持ちだし。武道の達人だし。チカちゃん、本気のマジで、純粋な最強なんすっ♪』って情報を教えてくれるもんだからぁ。ついつい、どんな『マジで純粋な最強』なのか、一度会って確かめたくなったんだよねぇ」

 慶太くん、飲み会でそんなコトを……。

 というか、なんで酔っ払って喋る話題がチカ……?

「チッ。スピーカーは慶太だったか。アイツめ、余計な情報をベラベラと漏らしやがって」

 おんぶされてるという密着体勢のせいで、壱琉の低い呟きが、またまたしっかりと聞こえてきた。

 舌打ちしてイラついてる様子が自分のためなんだと分かるから、再び身体が沸騰していく。

「それにねぇ、宮城先生。そーんなオイシい情報を教えてもらったら、是非とも『最強の細胞』を手に入れて調べたくなるものでしょ? 人類の未来を憂うスーパードクターとしては!」

「ケッ。何が、『人類の未来を憂うスーパードクター』だよ。アンタのマッド趣味が、だだ漏れてるだけじゃねぇか」

 またもや、壱琉の低い呟きがスタート。

「お前に、チカの細胞は渡さねぇ。ほんのひと欠片も、1ミクロンでも渡してたまるかよ」

「とっとと店から……いや、今後チカに一歩も近づけないようにボコって追い出してやる」

「そんで、余計なこと喋りやがった慶太も、後でシメるっ」

 いっちゃん……凶悪なほどにフェロモンたっぷりの美声だからさぁ。しっかりくっきり、全部チカに聞こえてるよ……。


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