百戦錬磨のバードは美味なる籠絡に首ったけ!

冴月希衣@商業BL販売中

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その瞬間 【2】

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「お待たせっ! あぁっ、僕が手当てしたかったのにぃっ」

 だらしなく気絶した賊を、ちょうど裏口の前にいた黒衣の魔導師にペイッと押しつけて高速で戻ってみれば、既にファナ自ら足首に包帯を巻いてるところだった。しかも――。

「ファナ? どうして、外套をかぶってるの? 頭から」

「さっ、触らないで! どうして、うちにいるの? 出ていってよ!」

 床にペタリと座り、包帯を巻いてる姿の目前に僕もしゃがみ、さっきまで身につけていなかったはずの外套をつんっと引っ張った途端。悲鳴のような拒絶が浴びせられた。

「無理。出ていかない。あと、触りたい。すごく可愛いから」

 でも、僕は怯まない。好かれてるっていう自惚れがあるから、強引に外套を剥ぎ取るんだ。

「見せて、ファナ。僕には何も隠さなくていいよ」

「あっ……」

「だって、こんなにも幻想的で美しいんだよ? ねぇ、触ってもいい? このモフモフの耳」

 満月が明るく照らす室内。そこで僕と向かい合う美女の髪から、ぴょこんっと飛び出てるモノ。それは、美しい毛並みの獣の耳。

「……っ、気持ち悪く、ないの? あたし……“本当のあたし”は、こんな姿で。醜くて……」

「全然。すごく綺麗だよ。うっとり見惚れてる。可愛すぎてドキドキが止まらないよ」

 ファナは、人狼族だった。


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