からくれないに、色づいて【Eternity -エタニティ- シリーズ】

冴月希衣@商業BL販売中

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ありがとう #5

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「シャケとタラコ」

「は?」

「だから、おにぎりの具。シャケとタラコにしてくれ。おかずは、何でもいい。任せる」

 なぁ、これでいいのか?

「あ、うん……シャケとタラコ、ね。わかった」

 初琉からの歩み寄りに応えるべく、取りあえず弁当の希望を口に出してみた。

 が、反応を返してくれた初琉の表情は、まだ硬く強張ったままだ。なら、もう少し――。

「あと、ひと目で見分けがつくように、シャケは三角、タラコは俵型に握ってくれ」

「うわ! めんどくさっ! 何なん、その我が儘ぶりっ!」

 あぁ、良かった。やっと表情が動いた。

 発声は「うわ!」だったが、その表情はどう見ても「うぇっ!」にしか見えない初琉の顔。俺に向けられた、心底嫌そうな表情。形を歪めた唇が、こんなにも愛しいものに思えるだなんて。

 俺……もう、末期だな。

「ありがとう――――初琉」

「え、何? 急に、そんな……」

 俺の突然の『ありがとう』に、戸惑いの表情が浮かべられる。

 そりゃ、そうだろう。何に対しての御礼なのか、俺自身も、ひと言でなんて言い表せない。胸に渦巻くものが多すぎて。ただ――。

 こうして話せる、きっかけを作ってくれて、ありがとう。気まずい空気をはらってくれて、ありがとう。

 こういったことの経験値が低すぎる俺には、どうすることも出来なかったことだ。

「弁当、作ってくれるんだろ? だから、ありがとう、だ」

「ふふっ。そういうのは、食べた後に『ごちそうさま』と一緒に言うもんちゃうの?」

 おかしそうな、からかうような、けれど穏やかな笑み。なんて温かいんだろう。

 初琉。もう一度、言わせてくれ。

 笑ってくれて、“ありがとう”。


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