からくれないに、色づいて【Eternity -エタニティ- シリーズ】

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秋祭りの夜 #1

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 ――風が、変わった。

 十月に入って、秋の気配が濃くなった。しつこく肌に纏わりついていた湿気が、いつの間にか、さらりとした感触の涼風に変わっている。

 あちこちで咲き誇っていた彼岸花の盛りを過ぎた姿に、何とも言えないセンチメンタルな感情までが沸き起こってきそうだ。

「……光陰矢の如し、か」

「何? 今、何か言った?」

「ん? いや……腹減ったなぁと思って。今日の晩飯、何?」

「今日は、餃子! 後はねぇ――」

 学校帰りの初琉を駅で捕まえて一緒に帰宅する、平日お決まりのコース。

 飽きることなく姫の待ち伏せをすることに「ほんま、いっつも暇なんやねぇ」と憎まれ口を叩く初琉と、それにヘラヘラするストーカーの俺との毎度お馴染みのやり取りにも、ほんの少しの変化が起きていた。

 手を差し出せば、目を泳がせながらも、そっとその指を俺に預けてくれるようになっていた。

 俺も、しっかりと絡めることは敢えてしない。指先だけを絡めて歩く。ゆっくり、ゆっくりと。

 会話の合間、きゅっと力を込めてみたり、じっと見つめてみたり。俺がそうした時に見せてくれる反応が、とにかく可愛らしく、楽しみでもあるからだ。

 だが、それも家の門塀が見えてくれば終わりを迎える。頼りない指先だけの繋がりは、するりとほどけていく。初琉の意志によって。

「ただいまぁ」

 門をくぐれば、初琉は俺の手を離し、小走りで先を行く。

 鍵のかかっていない玄関ドアを開ける後ろ姿を見送って立ち止まり、それまで初琉と繋がっていた右手を見た。

 まさかとは思うが。俺のこと、帰り道のボディーガード程度に思ってんじゃねぇだろうな? そう思ってしまうくらいに呆気なく離れていく温もりに、一抹の寂しさを覚えてしまう。

 繋いだ指先に、時折思い出したように力を込めた時の、俺を見上げる初琉の表情を見ていなければ。あの、俺を自惚れさせる、慌てたような恥ずかしそうな表情を見せてくれていなければ。

 この寂しさに、焦りさえもが加わるんだろうな。


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