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秋祭りの夜 #8
しおりを挟む「宮城くぅん。レナ、あれ食べたーい」
「あ、買ってきてもいいよ。俺、ここで待ってるから」
「宮城くぅん。レナ、ちょっと疲れたみたい、どっかで座らない?」
「昨日、雨が降ったからベンチ濡れてると思うけど。それでも良かったら、座ってくるといいよ」
「宮城くぅん。レナ、宮城くんのお祭りウンチク、もっと聞きたいなぁ」
「この神社の歴史と成り立ちの説明から入るけど、いい? そのためには、まず君から何か質問してくれる?」
「……」
お、初めて黙った。
「……ねぇ。このジュースのカップ捨てたいからぁ、ゴミ箱、一緒に探して?」
……仕方ねぇ。それぐらいは探してやるか。
「あっ、あった! ねぇ、ここ、喫煙スペースも兼ねてるみたいよぉ。宮城くんも、ここで一服すればぁ?」
「……あぁ」
神社から少し離れた参道の一角に、自動販売機と分別のゴミ箱が設置されていた。
ま、いいか。ここで煙草吸ってれば時間稼げるしな。
「ねぇ、宮城くぅん。私にも一本、ちょうだい?」
お前も吸うのかよ。つか、腕にぶら下がるな!
「ねぇ。火、ちょうだい?」
俺がやった煙草を咥えて、顎を上げて催促してくる。その慣れた仕草に、コイツが何を期待してるのかわからない俺じゃないが、気づかないふりでライターを差し出した。
「あん、意地悪ねぇ。宮城くんの煙草の火でつけたかったのにぃ」
目を伏せてライターで火をつけた後、ふうっと煙を吐き出しながら、意味ありげに見上げてくる。睫毛、無駄に長ぇな。
「女子高生は問題外。女子大生とは飲み会だけ。基本的に社会人しか相手にしないことで有名な宮城くんと、今ふたりっきりなのよねぇ、私ー。うふふっ! みーんな、羨ましがるだろうなぁ」
そんなん、知らねぇわ。俺のことで誰がどう思うとか、欠片も興味ねぇ。
「ねぇ? これでも私、たまちゃんと飯田くんの邪魔をしてる自覚、ちゃーんとあるのよ? だからぁ、今から私と抜けない?」
効果的な身体のすり寄せ方を知っているとわかる動きで、女が胸を寄せてきた。暑苦しいな。鬱陶しい。
「ね、どーお? すごくいいアイディアでしょー?」
コイツ、黙らせてやりたい。やりたいが……飯田に迷惑をかけそうだしな。もう少しだけ、我慢するか? それとも、この暑苦しい腕だけでも振り払うか?
……いやいや、あと少し。煙草一本吸い終わるまで、その間だけ我慢してやろう。飯田のため、無言で耐えろ、俺!
「どう見ても神社やお寺以外は田んぼと畑しかなさそうな、辺鄙なド田舎だけどぉ。ふたりで楽しめるところは、たーっくさんありそうよねぇ? うふんっ」
いーや! やっぱり、黙らせる!
「おい……」
――カチャンッ
――ピッ
腕にまとわりついて耳障りな雑音ばかり吐き出す女を初めてまともに見おろした時、背後の自販機からドリンクが出てくる、ガコンという音が聞こえてきた。
俺たち以外には誰も居なかったスペースに誰かが来たんだ。反射的に振り向く。
「……っ」
いや、“誰か”じゃない。そこには、顔を見るだけで不愉快な気分になる相手が現れていた。
ムカつくほどに澄ましかえった眼鏡男。十束が。
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