からくれないに、色づいて【Eternity -エタニティ- シリーズ】

冴月希衣@商業BL販売中

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試される覚悟 #2

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「あれ? 庭に立ってるの、榊先生じゃないか?」

「あ、ほんまや。おじいちゃーん、ただいまー!」

「あぁ、おかえり。なんや、今日も零央くんに連れて帰ってもらったんか」

「ただいま帰りました、先生。駅からの道は物騒ですからね」

「ちょ、おじいちゃん! 零央に連れて帰ってもらったって、どういうこと? 昔から慣れた道やもん。零央がおらんでも、ちゃんと帰れるしっ」

「ここいらは田舎道やから、街灯も少ないし助かるわ。いつもありがとうな、零央くん」

「いえいえ。それはそうと、今日の発掘現場でですね――」

 横から抗議する初琉をスルーして追い抜きながら、榊先生に今日の発掘調査の内容について質問を始めた。

 俺がいなくても帰れるのは、わかってる。が、ここまで全力の大声で拒絶されるのは、少々面白くない。例え、可愛い照れ隠しだとわかっていても。



「おい、初琉」

 狭量さを発揮して先に玄関に入ってみたものの、なかなかドアを開けない初琉に焦れてしまって、結局先生との会話を途中で断念する羽目になる俺は、情けない男の代表だな。

「いつまで外に突っ立ってんだ。風邪引くだろ……って……ぶふっ! 何だよ、その顔!」

 榊先生に苦笑されるほどに挙動不審に初琉の名前を出して慌てて迎えに出てみれば。ドアに向かって盛大にアッカンベーをしてる小さな姿が、びくんっと肩を跳ねさせた。

「な、何って。これ、私の通常モードやし!」

「あっははは! この変顔が通常モードって、どんだけだよ。ほんと、お前は可愛いな」

 爆笑しながら、素直に『可愛い』と告げる。

 口は小さいのに舌は長いんだなと、変態な感想を抱いたことはおくびにも出さず、初冬の風にさらされた冷たい肩に手を伸ばした。

 薄い肩を包み込むように抱きしめた俺を、今度は拒絶しない初琉が愛おしい。

「ほら、こんなに冷たくなってる。身体、冷やしたら駄目だろ?」

 心のままに背中を優しくさすっては、柔らかな頬に何度も頬ずりを繰り返した。

 これも拒まない。それどころか、俺の名を呟いて、ぎゅっとしがみついてくる。普通なら勘違いして、ここでもう一歩進んでしまうところだ。

 が、そうはいかない。退院した初琉の態度に違和感を感じた俺は、あの夜の病室でのやり取りについて、それとなく尋ねてみた。

 すると、真っ赤に頬を染めた初琉が焦りながら漏らした言葉の端々で理解出来たことがある。

 コイツは、あの夜のやり取りを夢だと思ってる。あんなにハッキリと会話してたのに、だ。途中で寝落ちたとはいえ、有り得ねぇ。

 けど、夢と混同してるにしても、俺とのスキンシップの度合いが徐々に深まっていることには満足するべきだな。

 周囲の目がなければ、俺が自制を忘れそうなほどに素直に身を任せてくれるんだから。

「なぁ。明日、一緒に出かけないか? 榊先生には、さっき話しといたからさ」

「うん、行く」

 実際の会話は『話しといた』なんて、冷静なモンじゃない。「明日、初琉さんを誘って出かけますんで! よろしくお願いします! ではっ!」だった。

 仕方ねぇ。なかなか家に入ってこない初琉が心配で、何の拉致宣言だっつーくらいの勢いで言い切って外に出てきたからな。

 「ほぅ、そうか。よろしく頼むで」という榊先生の笑いを含んだ声が、忘れられねぇ。あー、遠い目になりそうだぜ。

 ま、初琉が外出を素直に承諾してくれただけで、よしとするか。

「そろそろ、中に入ろうか」

 名残惜しい。もう少し抱きしめていたい。が、仕方ない。これ以上、コイツを寒空の下に立たせておくわけにはいかない。

 囲った腕を緩め、初琉のほうから離れてくれるように仕向ける。

 ……ん?

「初琉?」

 せっかく仕向けたんだが、身体をゆっくりと引いただけで、俺のブルゾンを掴んだ手をなかなか緩めようとしない。

 まるで、離れがたいとでもいうように。


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