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終
からくれないに、色づいて #4
しおりを挟む「――零央」
「ん? もう、いいのか?」
「うん、たくさんお話させてもらったよ。零央、ありがとう。一番最初に御挨拶したかったから……お母さんとお話出来て良かった」
「いや。俺のほうこそ、サンキューな」
母が既に他界していることは伝えてあったが、家に入るなり仏間の場所について尋ねられるとは思ってなかった。しかも、初琉は供え物まで携えてきてくれていた。
「それにしても、洋風建築やのに、ちゃんと和室もあるんやねぇ。床柱は紫檀?」
「よくわかったな。まぁ、和室はこの部屋だけだぞ。疲れてないなら他の部屋も見て回るか?」
「うんっ」
母の遺影に向け、もう一度丁寧に手を合わせてくれた初琉に心の中で礼を言って、螺旋階段に誘った。
「わぁ、すごく見晴らしがいいねぇ。ここ、高台になってるん?」
「それもあるが、こっち側にマンションが建ってないからな。それより、はしゃいで疲れたんじゃね? 大丈夫か?」
二階の部屋を見て回り、ひと部屋の広さと天井の高さ、内部の造りに歓声を上げた後。最後に入った俺の部屋の窓にへばりついている背中に、ぴたりとくっついてみた。
「だ、大丈夫。それに、子どもとちゃうんやから、別にはしゃいでないもん」
張り出し窓の木枠と俺の間で可愛らしく跳ねた肩に、顎を乗せて尋ねる。一番聞きたかったことを。
「なぁ、気に入った? ここ、お前んちにもなる予定なんだけど?」
「あ、うん。すごく綺麗で素敵。広いのに暮らしやすそうな間取りよねぇ。でもあの、零央のお父さんは……わ、私のこと……」
「あー、それな。気にすんなっつっても無理だよな、ごめんな」
やっぱ、それを気にかけてたか。
「あ、いいの。お忙しいのはわかってるし。それに、そんな中、先日うちのお父さんにお電話をかけてきてくださったんよ? でも、私がちゃんとした御挨拶を一度も出来てないから……このまま、お話を進めてていいのかなって思って」
そりゃ、そう思うよな。
外務省勤務の父は、今はアルジェリアに大使館公使として駐在中だ。もともと仕事人間だったが、俺が中学の時に母が亡くなってからは一層それが顕著になって、在外勤務メインの状態。
ひとり息子として、それなりに可愛がってもらった記憶はあるが、ここ数年、放任主義でまともな会話なんてしたことはない。
それでも、俺から連絡を取って、結婚の意志を告げた時は驚きつつも喜んでくれていたように思う。
自分は帰れないが、結婚を祝福すること。この家も車も譲るから、初琉とふたりで好きにすれば良いとも言ってくれた。まぁ、とっくに好きにしてたけど。
親父のドライさを知ってる俺にとっては、これだけで充分なんだが、温かな家族の情に包まれて育ってきてる初琉は不安なんだろう。
「大丈夫。お前の病気のこともちゃんと話した。その上で、ここでふたりで暮らせば良いって返事をもらってあるからさ。お前が心配することは、何もねぇよ」
これだろ? お前が一番気にかけてることは。
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