同居人は王子様。

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でこぼこ同居生活。

#9

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「ふーん。お前は都に引っ越すのか。」

「あんたは連れて行かないよ」

「は?連れてけよ!昨日約束しただろーが!」

「約束した覚えなんて無いんですけど」

ダイニングテーブルに座って、2人で朝食を取る。

相変わらず、2人が喋ると言い争いばかりの様子。この様子を見て、出会って2日目なんて誰も思わないだろう。

それにしても、一人暮らしに慣れたあおいにとって、誰かとこうして朝ご飯を食べたのは久しぶりの経験だった。

「....なぁ、なんだこれ。ネバネバする」

納豆を口に含んだあと、レオンは渋い顔をした。

貴族には納豆は口に合わないのか。

一応、覚えておこう。

そう考えていたあおいに対して、納豆なんてそっちのけでレオンは饒舌に喋り始めた。

「引っ越しか。俺は生まれてからずっとあの城だから、引っ越しとかよく分かんねえけどよ。引っ越しついでに俺用にキングサイズのベッド買ってくれ。あのベッドは狭いし固くて、寝起きが悪かった。あとあれだな、この部屋よりも天井が高い部屋がいい。起きた時、天井が低くてビビった。あとは....」

そこまで言うと、あおいに睨まれていることに気がついてレオンは喋りを止めた。

はあ。あおいは盛大に溜め息をつく。

「あのね、あんた。居候の分際で生意気なんだけど」

「生意気って....おい。居候って言い方はどうなんだ。あくまで俺はお前に誘拐されている程だからな」

誘拐されてるやつがこんな意気揚々とするか普通。口に出すと面倒だから、心の中でツッコミを入れておく。

「居候だよ。家事しないくせにあれしろこうしろってうるさいもん。そのくせさらに文句も言ってくるし。さっさと城に帰りなさいよ」

そう言った途端、レオンが険しい顔つきになる。

「無理だ。城だけには絶対帰らねえ!!!」

そういえば、何でこの人は頑なに家出したがるんだろう。

そう思っていたあおいの思考を見透かしたのか、レオンは不貞腐れた様子で言った。

「....知らねえ女と結婚して、子を産めって言われた。結婚まであの家に指図されるなんて御免だ」

真面目な顔をして話す様子から、きっと本当のことなんだろう。

「そ、そっか...」

確かに、それは可哀想だけど....

私まで巻き込まないでくれよ.....とあおいは思ったが、その時、名案がふと思い立った。

「じゃあ、荷物を段ボールにつめるの手伝ってくれたらあんたも東京に連れて行ってあげる」

実際、このままでは引っ越しの日までに荷造りが終わらない。

それにどうせこの男も、庶民の生活に飽きたら自分の居場所に戻るだろう。

そう考えてのあおいの発言だった。

「ほ、本当なのか?」
「俺、片付けは得意だからそういうのなら余裕だ!任せろ!」

目の前の男は、あのワガママで面倒くさがりな王子とは思えない勢いで立ち上がり、早速段ボールを組み立て始めた。


しまった.....これは、判断を誤ったかもしれない。
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