同居人は王子様。

mnkn

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何かが変わる予感。

#22

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俺は何てことをやっちまったんだ。


あおいが出社した後、レオンは1人家の中で自問自答していた。



感情が昂ぶって、あおいに無理やりキスをした。


しかし、あおいの泣き顔を見てすぐに我に返った。

あおいが男慣れしてないことは、一緒に過ごしてて何となく気づいてたはずだったのに。


.....酷いことをした。



ただ、そう思う気持ちと反対に、あおいの唇はものすごく甘かった。

口づけた瞬間に、今までしてきたどの女よりも痺れた。


もっと欲しい。


そう思って激しく求めると、俺の胸を押し返したあおいは泣いていた。


あの後、どんな顔をしてあいつと話せばいいのか。あいつは俺のことを嫌いになってしまったのではないか。

そう考えると、もう今までのようなたわいもない会話が思い浮かばなくなってしまった。




でも、こんなのでは駄目だと分かっている。

....早く、元通りになって2人で笑い合いたい。

あいつの笑顔が見たいんだ。

今日はあおいが喜ぶような料理を作ってあげよう。

部屋もピカピカに綺麗にして、布団は天日干ししておこう。

決意して、レオンは重い腰を上げた。



もうそろそろ、あおいが帰ってくる時間だ。

前に一緒にテレビを見ていた時に大好きだと言っていたハンバーグを作った。

テーブルには、花も飾った。

完璧だ。あとはもう一度、きちんと謝って.....





そう思っていた時だった。


ガチャリと玄関の扉が開いた。



まるで主人が帰ってきた飼い犬のように、レオンはリビングから玄関へ向かった。

「....た、ただいま」

「....おかえり」



「「....あのさ、」」


2人して、言葉が重なってしまった。

そっちから喋りなよ、とあおいに言われて、レオンはあおいの腕をリビングへと引っ張った。


「ちょ、どうしたの....って、え」

テーブルの上に置かれたハンバーグを見て、あおいは目をパチクリさせた。

「この間のお詫びに、あおいが大好きなハンバーグ、調べて作ってみた。この間は本当にごめんなさい.....」

大きい図体なくせに、しゅんとしている姿はまるで飼い主に怒られた小型犬のようだった。

「ねえ、顔あげて?」

そうあおいに言われて、レオンはうつむいてた目線をあおいに合わせた。

「実は....私もね、レオンと仲直りしたくて、レオンが好きな苺買ってきたの」

あおいはイチゴを袋から取り出して、ぽかんと開いているレオンの口に一粒咥えさせた。


「ふふふ、笑えちゃうね。お互い食べ物で解決しようとするなんて」

もぐもぐとイチゴを頬張って、レオンはニカッと笑った。

「.....なんか、安心したら一気に腹減った。また、一緒に食おうぜ....晩飯」

「....うん!」

そう言って、笑顔で椅子に座ろうとしたあおいの首根っこを、レオンが思いっきり掴んだ。


「その前にお家に帰ったらまず手を洗おうな?」

「あっ.....ごめんなさい」






レオンのやつめ、すっかり王子から専業主夫になっちゃって。

なんて心の中で思いながら、あおいは手を洗おうと洗面所に駆け込んだ。



....おっと、危ない。時計を外さないと。


左腕についた腕時計に手を触れた。


.....今日、レオンと仲直りできたのは、目黒さんにパワーを貰ったから....かな?


今朝、触られたことを思い出して頰がカッと熱くなる。


「.....もしかして、わたし」


目黒さんのことを、また......好きになってしまったのだろうか。




あおいがそんなことを考えているなんて全く知らないレオンは、冷めたハンバーグをもう一度温め直そうとしていた。
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