閉鎖都市

世界の真実

２３

　
ナビが突然とつぜん、前方車両に向かって、
駆かけ出して行く所だった。

少女が慌あわてて後を追っていた。


僕は正気に戻ると慌てて後に続いた。

前方車両から近付く球光体ストラムの姿に、
少女の足は止まっていた。

見るとナビは、その球光体の下を、
駆け抜けて行く所だった。

球光体はそれに興味きょうみも示しめさず、
真まっ直すぐにこちらを目指めざしていた。


『どうしよう？』


少女が僕を見上げる。


「ちょっと待って」


僕はバイザーを掴つかむと、
心の中でナビに話しかけた。


(ナビどうしたんだ？)


トラフィックに時間がかかっているのか、
返答へんとうがない。


半場諦はんばあきらめかけた時、|
唐突とうとつに返信がかえって来た。

【僕は車両を止める。
　その間、時間を稼かせいでくれ】

健闘けんとうを祈いのると言う様ように短く通信は切れた。

全まったく無茶むちゃを言ってくれる。


「大丈夫だいじょうぶだ。ナビが列車を止めるそうだ」

心配しんぱいそうに僕を見上げる少女にそう囁ささやいた。


何が大丈夫なのかは解らないが、
少女を守ると言う決意けついだけは本物だった。

僕は少女の手を引き、
逃げる様に後方に進んだ。


がっすぐに後方から近付くストラムに、
挟はさまれる形となっていた。


前後を挟はさまれ刻一刻こくいっこくと近付く球光体が、
緊迫きんぱくした時間を永ながく感じさせていた。

僕は近場の開閉扉に手をかけ、
人力で開こうと力を込めていた。

そんな努力もむなしく扉は、
ぴくりとも動かなかった。

少女が手伝う様ように僕の腰元こしもとを持ち、
支ささえていた。

両側から近付くストラムが間近まじかに迫せまり、
半場はんば諦あきらめかけた時、
唐突とうとつに車両にブレーキがかかるのわ感じた。

宙に浮いたストラムが急にスピードを増まし、
前方に飛ばされて行くのが目に入った。

一瞬だけかかったG(重力)に飛ばされない様よう、
少女が僕の腰にしがみついていた。

不思議な事に、慣性かんせいの法則で、
前方に飛ばされそうになったのは一瞬で、
すぐに体を飛ばそうとするGは、
消え失うせていた。

前方に飛ばされたストラムも、
空中で固定された様ように停止している。

助かったのか？

僕と少女は固まった様に体を硬直こうちょくさせ、
前方で停止したストラムを見つめていた。