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しおりを挟む何考えてたんだ私。
だんっ!!!
しっかりしなきゃ。
だんっ!!!
ランデルはマリローズと幸せな結婚をし、私は何としても生き残る。
それが私の目標だったじゃない。
だん!だん!だん!だんっっっ!
「あっ、あのレオノールお嬢様?」
「え?」
はっとして、目の前に広がる大量にカットされた野菜や果物を見る。
「あ…私ったら…」
「はは…は。ハルトもきっと喜びますよ。なっ、ハルト?」
苦笑いでハルトの背を撫でるディドと、きゅるりとした愛らしい目で不思議そうな顔をするハルト。
そして髪を振り乱し包丁を握りしめる女、レオノール。
忘れていた。ここはハルトの厩舎で、私はハルトのゴハンの用意をお手伝いしていたのだ。
「ご、ごめんなさい…。驚かせてしまって」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ほらハルト、次は左脚だぞ。終わったらお嬢様が切ってくださった林檎を頂こうな」
そう言いながらあやすようにハルトの左脚に触れるディド。数年前に体調を完全に戻し職場復帰して、こうしてハルトや他の馬達の世話をしてくれている。
ディドの娘のナタリーも、変わらず今もオブライト家のメイドとして元気に働いてくれている。
「ほら、ハルト頑張って脚を上げような?」
ディドがハルトの脚を器用に上げさせている。
「…それ、裏掘りと言ったかしら?」
「はい。…こうして蹄の裏に詰まったおがくずや汚れを掻き出してやるんです」
「それ、やらないとどうなるの?」
「清潔でない蹄は、細菌感染などで腐乱してしまう事があります。そうなると立っていられなくなり命に関わる事もありますから…とっても大切な手入れなんですよ」
「…そうなんだ。それ、私も手伝だっていい?」
「レオノール、君はダメだよ」
突然後ろからかけられた言葉に驚き振り返ると、すぐ側にランデルがいた。
「…わっ、ランデル…!どうして…」
「君とハルトに会いに来たんだ」
「そっ…そう…なんだ」
ちっ、近い!!というか生のランデルに慣れない。どぎまぎしつつ目を合わせているようで、毛穴やシミひとつない肌を見つめる。
スッとしたキレイな顔の輪郭や鼻筋も惚れぼれしてしまう程、私の推しのものだ。
ランデルは慣れたようにディドと挨拶を交わし、ハルトの傍に行く。
ディドもランデルが王族だからと構えてはおらず、丁寧にだがにこやかにランデルに接している。
ここに何度も足を運び、ランデルのお気に入りの場所になっている事。
それが何だか少し嬉しい。
「裏掘りは素人がやると危険だよ。ハルトに負担がいく事もあれば、君が蹴られる可能性も」
「あなたはやった事があるの?」
「殿下はレオノールお嬢様がベリテに行ってらっしゃる間も、こうしてこちらに来られハルトの手入れをして下さいました。裏掘りもお手の物ですよ」
…そんな事まで。
「ランデル…本当にありがとう…」
「ハルトの世話は全然苦じゃないからね。ふふっ、今日も元気だね」
ハルトがぶるるんと鼻を鳴らし、撫でろと言わんばかりにランデルに頭を擦り付ける。
…こんな風に穏やかに笑うんだ。
これもレオノールがいなくなって、太陽のようなマリローズが傍ににいたお陰かな。
この時期、ゲーム内のランデルは病みきっていたから…。
やっぱり私の選択は間違ってはいなかったんだ。良かった…。良かったのに、胸がチクリと痛む。
それを振り払うように頭を横に降り、無理矢理笑顔を作った。
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