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レッツ万能薬
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それから森に帰り、薬草探しに励んだ。
クロエから預かった瓶に薬草を詰めていく。
少し危険な場所に生えている、レアな薬草もゲットした。
ある程度、薬草が集まるとオレは深呼吸をした。
そして目を閉じ、抱えた瓶に集中する。
そして念じる。薬草を擂り潰すイメージだ。
「んむむむっ…」
歯を食い縛る。額に血管が浮き出し、汗が流れてくる。
ギルドの人間達を思い出す。今日は変なやつが来たと思われたかもしれない。
それでももしこの薬が完成し少しでも役立つ時が来たら…。
その時、ぶわっと瓶が光った。
「…はぁっ…はあ…やっぱりできた」
ゆっくりと目を開けると、瓶の中に緑色をしたペースト状のようなものが入っていた。
ホワイトタヌキには人化、見極め、癒しの力がある。
まさか、念じて薬草をペースト状にさせる事が出来るとは思わなかったが、何となく出来そうな気がしてやってみた。
オレの力は未知だな。だいぶ地味なものが多いけども。
そしてこの薬は、薬草の力とオレの癒しの力で出来ている。
薬草だけの薬より、効果は強まるはずだ。
次の日、さっそくギルドに薬を持っていった。
「えっアンタ、もう薬を作ったのかい?ふぅん…万能な塗り薬ねぇ…って仕事早すぎだろ…」
少し呆れ顔のクロエは、ちょっと待ってなと奥の部屋から白い棒のような物を持ってきた。
「何?それ」
「植物は恐いからね。玄人でもたまに間違えて大事になる事がある。危険な素材が入ってないか調べられる素材チェッカーだよ」
確かに見た目はそっくりな植物なのに、効能が全く違ったり、猛毒を含んでいたりすることもある。
けれどホワイトタヌキには見極めの力と、良く利く鼻があり、100%そう言った間違いは犯さないだろう。
もちろんそれは言わない。人間には人間ルールがある。そして今のニナは人間としてこのギルドにいるからだ。
「それじゃあ、始めるよ」
そう言いながら、薬の入った瓶にクロエがチェッカーを入れる。
少しして、チェッカーが緑色に光る。
「…マジで?あんた良い物作るじゃん」
「そうなの?」
「もし危険だとチェッカーが判断したら、赤色に光るんだ。緑色に光るのは安全で質の良い薬ってこと。だからアンタは合格!」
「本当!?良かったあ」
はい、とそこそこの硬貨が入った布袋をカウンターに置いてくれた。
「テストなのにお金もらえるの?」
「この薬はそのままこっちで売らせてもらうよ。だからこれは立派な報酬だよ」
「このお金でパン買える?」
「パン?…アンタそんなに食うものに困ってんのかい?」
心配そうに訪ねてくるクロエに、オレは急いで首をふった。森には沢山の実りがある。食べ物には困ったことはない。
「どうしても、買って食べたいパンがあるんだ」
「ふぅん…そりゃパンくらい沢山買えるよ。
実の所ね、アンタみたいに薬を買ってくれっていうやつがたまにいるんだけどさ、さっきのテストをするとほとんどが黄色く光るんだ」
「黄色?赤や緑じゃなくて?」
「そう、黄色く光るってのは質が悪いか、効果が薄いっていう事なんだ。だからその薬の価値は低いし、報酬ももちろん少ない。
けどあんたのは緑に光った。そういう薬は価値がつくし報酬も高くなるんだよ」
「凄いな、あの棒」
「あははっ!何言ってんだい、凄いのはあんただよ!
本当何者なのかねぇ?金の価値も知らないわ世間知らずだわ…まさかどっかの貴族の息子とかじゃないだろうね」
な訳ないか!と笑うクロエ。
オレは何とも言えず、うんうんと頷いた。
それからハイツのパン屋に行き、初めて自分で稼いだお金でパンを買った。ハイツやハイツの家族は、オレを見た瞬間ポカンとした顔をしていたが、話していくうちに優しく接してくれた。
この間、森の中で会ったホワイトタヌキだよ、とは言えなかった。
それでも薬を作れば、ハイツやおばさん、ディルに会える。ギルドのクロエや、冒険者にも。
それだけでオレの心は満たされた。
クロエから預かった瓶に薬草を詰めていく。
少し危険な場所に生えている、レアな薬草もゲットした。
ある程度、薬草が集まるとオレは深呼吸をした。
そして目を閉じ、抱えた瓶に集中する。
そして念じる。薬草を擂り潰すイメージだ。
「んむむむっ…」
歯を食い縛る。額に血管が浮き出し、汗が流れてくる。
ギルドの人間達を思い出す。今日は変なやつが来たと思われたかもしれない。
それでももしこの薬が完成し少しでも役立つ時が来たら…。
その時、ぶわっと瓶が光った。
「…はぁっ…はあ…やっぱりできた」
ゆっくりと目を開けると、瓶の中に緑色をしたペースト状のようなものが入っていた。
ホワイトタヌキには人化、見極め、癒しの力がある。
まさか、念じて薬草をペースト状にさせる事が出来るとは思わなかったが、何となく出来そうな気がしてやってみた。
オレの力は未知だな。だいぶ地味なものが多いけども。
そしてこの薬は、薬草の力とオレの癒しの力で出来ている。
薬草だけの薬より、効果は強まるはずだ。
次の日、さっそくギルドに薬を持っていった。
「えっアンタ、もう薬を作ったのかい?ふぅん…万能な塗り薬ねぇ…って仕事早すぎだろ…」
少し呆れ顔のクロエは、ちょっと待ってなと奥の部屋から白い棒のような物を持ってきた。
「何?それ」
「植物は恐いからね。玄人でもたまに間違えて大事になる事がある。危険な素材が入ってないか調べられる素材チェッカーだよ」
確かに見た目はそっくりな植物なのに、効能が全く違ったり、猛毒を含んでいたりすることもある。
けれどホワイトタヌキには見極めの力と、良く利く鼻があり、100%そう言った間違いは犯さないだろう。
もちろんそれは言わない。人間には人間ルールがある。そして今のニナは人間としてこのギルドにいるからだ。
「それじゃあ、始めるよ」
そう言いながら、薬の入った瓶にクロエがチェッカーを入れる。
少しして、チェッカーが緑色に光る。
「…マジで?あんた良い物作るじゃん」
「そうなの?」
「もし危険だとチェッカーが判断したら、赤色に光るんだ。緑色に光るのは安全で質の良い薬ってこと。だからアンタは合格!」
「本当!?良かったあ」
はい、とそこそこの硬貨が入った布袋をカウンターに置いてくれた。
「テストなのにお金もらえるの?」
「この薬はそのままこっちで売らせてもらうよ。だからこれは立派な報酬だよ」
「このお金でパン買える?」
「パン?…アンタそんなに食うものに困ってんのかい?」
心配そうに訪ねてくるクロエに、オレは急いで首をふった。森には沢山の実りがある。食べ物には困ったことはない。
「どうしても、買って食べたいパンがあるんだ」
「ふぅん…そりゃパンくらい沢山買えるよ。
実の所ね、アンタみたいに薬を買ってくれっていうやつがたまにいるんだけどさ、さっきのテストをするとほとんどが黄色く光るんだ」
「黄色?赤や緑じゃなくて?」
「そう、黄色く光るってのは質が悪いか、効果が薄いっていう事なんだ。だからその薬の価値は低いし、報酬ももちろん少ない。
けどあんたのは緑に光った。そういう薬は価値がつくし報酬も高くなるんだよ」
「凄いな、あの棒」
「あははっ!何言ってんだい、凄いのはあんただよ!
本当何者なのかねぇ?金の価値も知らないわ世間知らずだわ…まさかどっかの貴族の息子とかじゃないだろうね」
な訳ないか!と笑うクロエ。
オレは何とも言えず、うんうんと頷いた。
それからハイツのパン屋に行き、初めて自分で稼いだお金でパンを買った。ハイツやハイツの家族は、オレを見た瞬間ポカンとした顔をしていたが、話していくうちに優しく接してくれた。
この間、森の中で会ったホワイトタヌキだよ、とは言えなかった。
それでも薬を作れば、ハイツやおばさん、ディルに会える。ギルドのクロエや、冒険者にも。
それだけでオレの心は満たされた。
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