もふもふホワイトタヌキに転生したオレ~ほら第二王子、もふもふしてもいいんだゼ☆

まと

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大好きだよ

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(お、王子…)

当然のようにアティカスからオレを受けとる王子が、おじさん達に気付く。


「誰?」

「はあ、その…」

アティカスも困惑顔だ。


そして、王子達が何者なのか何となく分かってしまったおじさんとおばさんは、ガクブルが止まらず可哀想だ。 



( あの、王子!村のパン屋のおじさん達だよ!おばさんとディルもいる)


「ああ…彼らが…」

成る程と言うように、おじさん達を見る王子。

王子、ちょっと王族オーラ消してあげて!
おじさん達、また「ヒィィィ」とか言っちゃってるから!!

(ぐっ、偶然会ったんだ。でもオレの事、人間のニナって知らないから…)

「言わなくていいの?」

(気持ち悪がられちゃうかも)

「そんな訳ない。こんなに可愛いのに」

(も、もう…)

って、照れてる場合じゃない。

まるで会話しているかのように見えるオレ達を、不思議そうに見るおじさん達。
まあ事実会話しているんだけど…。

「あ…あの、そのタヌ…えっと…」

「ホワイトタヌキだ」

戸惑うおじさんに、王子が言う。
そうなんだおじさん。オレ、野生のタヌキじゃないんだよ。

「ホワイト…タヌキ?噂で聞いた事が…ってそれじゃあ魔物??!!」

おじさん…。

魔物とは知らず仲良くしちゃってた訳だからな…と、おじさんの驚いた表情を見てツキリと胸が痛む。

やっぱり魔物と触れ合うのは不気味だよな? 
きっとこれからも、ホワイトタヌキのオレが人化したニナでもある事は言わない方がいいんだ。


「このホワイトタヌキが恐ろしいか?」

「恐ろしいだなんてそんな…こんな可愛らしい魔物?見たことありません。…ただ、王族様の大切になさっているペット?とは知らず…馴れ馴れしくしてしまったかもしれません。もっ、申し訳ありません!!」

可愛らしい魔物??!本当に?…あ、でも王子のペットだと思って気を使ってくれているのかも…。

オレの正直なしっぽがふわりふわりと嬉しそうに揺れたり、へにょりとしょんぼりしたりで忙しい。

そして、おばさんがおじさんに「ペットなんて失礼じゃないのかい??!!」っと小声で怒っている。ははは。


「ペットではなく婚約者だ」

(おっ、王子!)

ちょちょっ!!!王子それ言っちゃうの!?嘘でしょう?

大丈夫かな…?
王子、おじさん達に頭おかしいと思われちゃわない?

「こ、婚約者?様…」

「私の婚約者はあなたの店のパンやあなたの家族が大好きなようだ。これからも良くしてやって欲しい」

「はい…?」

ぽかんとした顔で、おじさん達が王子とオレを交互に見る。

おじさん達は王子に、村でパン屋を営んでいるとは一度も話していない。

なぜ?と言った顔だ。

「にーなっ」

ディルがオレに向かって、ニコニコと笑いかけてくる。

(ディル…)

「ニナって…まさか」

おじさんとおばさんが、目を見合わせる。
王子の言った事やディルの様子に、まさかとよぎった考えが、だんだんと真実味をおびてきているようだった。

不安げな顔をしたオレの背中を、 大丈夫だよと優しく撫でてくれる王子。
その穏やかな眼差しに、少しずつ勇気が湧いてくる。

(王子…)

よし!っと覚悟を決めたオレは抱っこ状態から地面に降ろしてもらい、ぽぽんっと人化する。

「ニッ、ニナ?!!」

人間の姿をしたニナに。

そして突然人化し現れたニナの姿に、驚くおじさん達。

ごめんねと少し苦笑いしてしまう。


「…おじさん、おばさん、ディル…今まで黙っていてごめんなさい。オレ…人間じゃない…魔獣なんだ」

「ニナ…おまえ…」

「初めてこの森であった時、おじさんがとても優しくしてくれて…その時食べさせてくれたパンも美味しくて…オレ、おじさんの事もパンの事も大好きになっちゃったんだ…それで別れた後、こっそり後をつけてっいっちゃった…ごめんね…」

「…ニナ」

その時初めて自分が人間になれると知った事、ギルドでお金を貯めて、パンを買いに行っていた事を全て話した。

「ごめんね。気持ち悪かったよね…」

「…ばかだなぁ、ニナ。確かに驚いたがもっと早く言って欲しかったよ。オレは人間のニナも好きだし、魔獣のお前にもずっと会いたかったんだぞ…そうか、そう言う事だったんだな…」

オレに近付き、オレの頭をぽんぽんと優しく叩くおじさん。

その瞬間に、ぽろりと溢れてしまう涙。

ああ、オレって本当に泣き虫だ。

「本当だよニナ。…気持ち悪いもんか。あんたはいつも可愛くて優しい子で…もう家族みたいなもんなんだよ。ね、ディル」

「にーな、だいすきぃ」
.
おばさん、ディル…!

そんな風に言ってもらえる事が嬉しくて有り難くて、もはや涙が止まる気がしない。

「おじさん…おばさん…ひっく…う…ディルぅ…」

「ニナ、お前…幸せなのか?」

おじさんが心配そうに、オレの顔を覗き込む。

きっと、王子の事だよね。

「うん、とっても幸せだよ。凄く凄く大切にしてもらってる」

そうか…と呟くおじさんが王子に頭を下げる。



「…王族様…私共が言えた義理でもなく、とても無礼な事かもしれません…ですがどうかニナの事を宜しくお願いします」


おじさん…!





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