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※少しだけ流血表現あります。
(今…何と言った…)
「いつも狼の姿だったらいいのに」
(!…オレの声が聞こえるのか??オレが…誰かも?)
「殿下がさっき、アイリスに怒鳴ったでしょう?殿下のお声と同じだったので分かりました。それだけです」
言葉を失うエレンと、いまだエレンの首回りをわしゃわしゃと、夢中で撫でたくるアイリス。
(…アイリス、君は何故ここにいる)
「なぜ?ん…言っていいのかな?ここに抜け出して来たことをサミィ達に言いませんか?」
(言わないよ)
「この国に来て3日目位だったかな?精霊達に連れられてここに来ました。
そしたら寂しそうなお墓があったので、ちょっとずつ苗を運んで植えていたの。
昨日も庭師さんから苗を分けて貰ったので、枯れちゃわないうちにお花を植えに来たのです」
(…アイリス、敬語は使わなくていい。普通に話してごらん。そうしたらもっと話しやすくなるだろう?)
「いいの?」
(ああ。聞きたい事がありすぎるのだが、ゆっくり教えて?まず精霊とは?)
「えっと、アイリスのお家は、精霊に愛されし一族なの」
衝撃の一言をサラリと言ったアイリスに、エレンの目が大きく見開く。
精霊に愛されし一族…聞いたことはある。詳しくは知らないが精霊に愛されし一族の力は、その国の未来をも揺るがす力を持っていると言われている。
精霊はその一族を愛するが故に、一族を蔑ろにする者には罰を下し、一族を大切にすれば幸福が与えられるという。
だがエレンはそれを、お伽噺のようなモノだと思っていた。
だが目の前の少女は色々と普通じゃない。
獣姿の自分が言うのもおかしいが、現に今こうしてアイリスは獣のオレと話をしている。
エレンにはアイリスが嘘をついているようには思えなかった。
(だがそれが本当なら、ユーグランド国が君を手離す筈がないと思うのだが)
「この事は、一族しか知らないよ」
(…そんな大事な秘密を、なぜオレに話したの?オレはこの国の王子だ。無防備だと思わない?)
「だって殿下のこの姿も秘密でしょう?」
(…そうだね。誰にも言って欲しくないかな)
「じゃあ、アイリスの秘密も誰にも言わないでね」
(成る程…分かった。言わないよ)
アイリスは満足そうに微笑んだ。
(それで…精霊はオレやこの国に、罰を与えるのか?)
アイリスはきょとんとした顔で、エレンを見る。
「なんで?」
(だってそうだろう。君を親元から離し、知らない国で何のケアやフォローもせず、放っておいた最低な奴だ)
「そうなの?アイリス、お父様やお母様と離れて暮らすのはとても寂しいけど、この国も好きだよ?
サミィ達と毎日一緒で楽しいし、ご飯やサキュアも美味しいよ」
(アイリス、君はユーグランド国の第一王子に、婚約破棄をされたと聞いた。その彼やオレを恨んだりしないのか?
君はオレ達王族に、好き勝手に扱われているんだよ?)
「…よく分からないけど、ユーグランドにもナンバートにも大好きな人がいるのに、そんな事でみんなを危険な目に合わせる必要はないでしょう?」
エレンの額にたらりと汗が流れる。その言い方…やはり精霊の力は相当ヤバいらしい。
本気になれば国は荒れ、民にも被害が出るのかもしれない。
「殿下の事も怒ってないよ。でも嘘っぽい笑顔は好きじゃないなあ。今の姿はすっごくかっこいいし、可愛いね!」
ふふふっ、とまた首に抱きつき頭をぐりぐりしてくる。
顔についた土をペロリと舐めとってやると、きゃっきゃとくすぐったそうに笑う。
鋭い賢こさと、無邪気な部分が酷くアンバランスな少女だ。
でも、とエレンの瞳の奥を見つめるようにして続ける。
「とても嫌な呪いだね」
ドクリと心臓が音をたてる。
(アイリス)
オレから離れ、何やら園芸用のカゴを漁っている。あったよーっとまた、オレの前に小走りで戻ってくる。
(ハサミ?)
いぶかしげに見るオレに、アイリスはにこりと笑う。
「ちょっと待っててね」
ハサミの刃を自分の小さく細い人差し指にあてる。
(なっ…や)
やめろっ!と叫んだ時には、アイリスは何の躊躇もなくハサミの刃を引いていた。
ポタッ
ぷくりと膨らんだ真っ赤な液体が、ぽたりとこぼれ落ちる。
目の前で起きた事が信じられない。
たった6歳の少女のやった事に。
(何をやってるんだ!)
思わず「ガルゥッ…」と唸る。
「大丈夫だよ。傷も精霊が塞いじゃうから」
だからね、早く。
「この血を飲んで?」
(今…何と言った…)
「いつも狼の姿だったらいいのに」
(!…オレの声が聞こえるのか??オレが…誰かも?)
「殿下がさっき、アイリスに怒鳴ったでしょう?殿下のお声と同じだったので分かりました。それだけです」
言葉を失うエレンと、いまだエレンの首回りをわしゃわしゃと、夢中で撫でたくるアイリス。
(…アイリス、君は何故ここにいる)
「なぜ?ん…言っていいのかな?ここに抜け出して来たことをサミィ達に言いませんか?」
(言わないよ)
「この国に来て3日目位だったかな?精霊達に連れられてここに来ました。
そしたら寂しそうなお墓があったので、ちょっとずつ苗を運んで植えていたの。
昨日も庭師さんから苗を分けて貰ったので、枯れちゃわないうちにお花を植えに来たのです」
(…アイリス、敬語は使わなくていい。普通に話してごらん。そうしたらもっと話しやすくなるだろう?)
「いいの?」
(ああ。聞きたい事がありすぎるのだが、ゆっくり教えて?まず精霊とは?)
「えっと、アイリスのお家は、精霊に愛されし一族なの」
衝撃の一言をサラリと言ったアイリスに、エレンの目が大きく見開く。
精霊に愛されし一族…聞いたことはある。詳しくは知らないが精霊に愛されし一族の力は、その国の未来をも揺るがす力を持っていると言われている。
精霊はその一族を愛するが故に、一族を蔑ろにする者には罰を下し、一族を大切にすれば幸福が与えられるという。
だがエレンはそれを、お伽噺のようなモノだと思っていた。
だが目の前の少女は色々と普通じゃない。
獣姿の自分が言うのもおかしいが、現に今こうしてアイリスは獣のオレと話をしている。
エレンにはアイリスが嘘をついているようには思えなかった。
(だがそれが本当なら、ユーグランド国が君を手離す筈がないと思うのだが)
「この事は、一族しか知らないよ」
(…そんな大事な秘密を、なぜオレに話したの?オレはこの国の王子だ。無防備だと思わない?)
「だって殿下のこの姿も秘密でしょう?」
(…そうだね。誰にも言って欲しくないかな)
「じゃあ、アイリスの秘密も誰にも言わないでね」
(成る程…分かった。言わないよ)
アイリスは満足そうに微笑んだ。
(それで…精霊はオレやこの国に、罰を与えるのか?)
アイリスはきょとんとした顔で、エレンを見る。
「なんで?」
(だってそうだろう。君を親元から離し、知らない国で何のケアやフォローもせず、放っておいた最低な奴だ)
「そうなの?アイリス、お父様やお母様と離れて暮らすのはとても寂しいけど、この国も好きだよ?
サミィ達と毎日一緒で楽しいし、ご飯やサキュアも美味しいよ」
(アイリス、君はユーグランド国の第一王子に、婚約破棄をされたと聞いた。その彼やオレを恨んだりしないのか?
君はオレ達王族に、好き勝手に扱われているんだよ?)
「…よく分からないけど、ユーグランドにもナンバートにも大好きな人がいるのに、そんな事でみんなを危険な目に合わせる必要はないでしょう?」
エレンの額にたらりと汗が流れる。その言い方…やはり精霊の力は相当ヤバいらしい。
本気になれば国は荒れ、民にも被害が出るのかもしれない。
「殿下の事も怒ってないよ。でも嘘っぽい笑顔は好きじゃないなあ。今の姿はすっごくかっこいいし、可愛いね!」
ふふふっ、とまた首に抱きつき頭をぐりぐりしてくる。
顔についた土をペロリと舐めとってやると、きゃっきゃとくすぐったそうに笑う。
鋭い賢こさと、無邪気な部分が酷くアンバランスな少女だ。
でも、とエレンの瞳の奥を見つめるようにして続ける。
「とても嫌な呪いだね」
ドクリと心臓が音をたてる。
(アイリス)
オレから離れ、何やら園芸用のカゴを漁っている。あったよーっとまた、オレの前に小走りで戻ってくる。
(ハサミ?)
いぶかしげに見るオレに、アイリスはにこりと笑う。
「ちょっと待っててね」
ハサミの刃を自分の小さく細い人差し指にあてる。
(なっ…や)
やめろっ!と叫んだ時には、アイリスは何の躊躇もなくハサミの刃を引いていた。
ポタッ
ぷくりと膨らんだ真っ赤な液体が、ぽたりとこぼれ落ちる。
目の前で起きた事が信じられない。
たった6歳の少女のやった事に。
(何をやってるんだ!)
思わず「ガルゥッ…」と唸る。
「大丈夫だよ。傷も精霊が塞いじゃうから」
だからね、早く。
「この血を飲んで?」
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