高嶺の花は

まと

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「ふわぁあ...。あー、眠い。これはやばいわ」

ふらふらとゾンビのような足取りで、ようやく自分の靴箱の前に辿り着く。

それにしてもここ最近、随分と調子に乗ってしまっている。平日には禁忌の所業だと分かっているのに、つい海外ドラマを観てしまうのだ。それも夜が明けるまで。

その作品はミステリーもので、一度観だしたらやめられない止まられないで有名の人気作だ。

噂通り観だしたら続きが気になって、あと一話、もう一話と明日への不安に半泣きしながらも、結局物語の続きに手を出してしまう。

そして調子に乗りに乗った結果、ここ最近の睡眠時間は約3時間あるかないか。そのせいか頭は痛いし重いし回らない。眼痛もするし、身体中も非常にダルく超絶バットなコンディションだ。

ああ、自分を本気で殴りたい。

いやそれでも。完全に自業自得で自分が悪いのは認めるが、今は切り替えるしかない。問題は今日をどう乗り超えるか、なのだ。

確か一時間目は苦手な数学で、朝一の小テストが予定されていたような気がする。オレの記憶、嘘であれと心から願う。しかも4時間目は体育じゃなかったっけ?確かマラソン大会に向けて、グラウンドを何周か走らされるんだったような...。

あれ?オレ、今日持つかな。

「あ...気が遠退いていく...」

「ねえアンタ」

『ねえアンタ』という不機嫌な声に良い思い出はない。嫌な予感を感じつつ、声のする方へと視線を向ける。

「...あんたみたいな奴に...なんで」

「はい?」

腕を組み、憎々しい顔でこちらを睨む1人の女子。オレ、なんかしたっけ?

「最近、やたら望月君と一緒にいるよね?畏れ多くもあんたから声かけたんだって?」

「え...?まあ、そうかな」

出たよ、畏れ多いが。

「最悪...。身の程知らずだとは思わないの?彼は高嶺の花なのよ?!」

ああ、この手の話か...と心の中で溜め息をつく。悪いけど今はそんな余裕はない。頭が非常にクラクラして意識が吹っ飛びそうなんだ。だからまたの機会にしてもらえたらありがたい。

「...あの、話があるなら今度でいい?ちょっといま」

「は?ちゃんと最後まで聞きなさいよっ」

「でも...」

吐きそうかもよ?とは言えない。

「いいから望月君から離れてよ」

「え、なんで?」

「望月君はアンタなんかと一緒にいていい人じゃないの。それが分からないの?」

「...じゃあさ、どんな人だったら一緒にいていいの?」

「アンタじゃない事は確かよ」

「意味分からん。結局誰だろうと許せないんだろ」

「はあっ?!不細工の癖に偉そうに!知ったように言わないでよっ!!」

む...、不細工じゃないし。平凡だし。...まあ確かに今日は寝不足がたたってゾンビだから不細工かもしれないけどさ。

本来は特徴のないあっさり塩顔だ。それに見る角度によっては、隠れファンの1人や2人いてもおかしくないと自負している。

「ていうかさあ、君だってオレを知らないでしょ?なら知ったように言わないでよ」

「あんたのことは知らないしどうでもいいけど、望月君の事ならよく知ってるわ」

「じゃあ最近の怜のこともよく知ってるよな?わりと楽しそうじゃない?それが嫌なの?」

怜とは昼休みを一緒に過ごすようになってから、自然と一緒にいる時間が増えた。移動も一緒にするし、ヨシのこともヨシ君と呼ぶ。初めはヨシも怜に気を使っていたが、今じゃお前(麦)より話が合うかもとちょっぴり悲しい事を言われた。

クラスでもまだまだぎこちないが、話かけられればクラスメイトともポツリポツリと話す。何より怜自身、顔には出にくいがなかなか楽しそうに学校生活をおくっていると思う。

オレの勘違いでなければ。

「一緒にいるかいないかは怜が決めることだ。君に口出しされることじゃないよ」

「っ!なによ...!アンタには分からないっ...それにさっきから怜、怜って!気安く呼ばないでよ」

わなわなと震え、強気だった目にうるりと涙が浮かぶ。それを見たらこちらも怯んでしまう。泣くだなんてズルい。そっちから吹っ掛けてきた癖に。

でもその通りだ。オレには君が分からない。

そもそもどうしてここまで感情が昂るのか理解出来ないのだ。きっとこの子は怜の事が好きで好きで堪らないんだろう。オレにだってそれ位は分かる。

だけど相手は平凡なオレだ。それにオレと怜は男同士でまだ知り合ったばかりの友達だ。脅威に感じる必要があるだろうか?それとも恋とは誰も彼もが敵になりうるものなのか?

今だって靴を履き替えながら、こちらをチラチラと見る生徒が何人もいる。

そんな場所で人目も気にせず、こんなにも心を剥き出しにしてオレに訴えているのだ。

その熱がオレにはよく分からない。


「なによ...そんな冷めた目でこっちを見ないで...!どうせ彼を手懐けた気になって、優越感にでも浸かってるんでしょう?!そういうの本っ当に気持ち悪い!!!」

「ちょ...さっきから声が大きいって、頭に響..」

「うるさいっ!あんたなんか大嫌い!!」

『バンッ!!!!!!』

「っっっっ....!!!!」

そう大きな声で叫び、自分の持っている鞄を靴箱に激しくぶつけそのまま走り去って行く。

オレはといえばその大きな衝撃音が頭にクリーンヒットし、そのままその場に跪づく。


「あ、死んだな」


と、どこからかヨシの声が聞こえた気がした。







    
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