ヒュゲリ

明日葉

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 琥太狼が編集した映像になった。

 凪瑚のスマホの中のデータは好きに使っていいと言われていて、写真データの時期と、メッセージのやり取りの時期と重なるものをつなぎ合わせた。
 写真に被せて、メッセージを織り交ぜる。



 むぎくん、どこー?



 ごめんごめん、出かけてる。入ってて



 軽いやりとり。微笑ましくなるような当たり前のやりとりに、凪瑚が琥太狼の腕に無意識に頬を擦り寄せた。ぎゅうと腕にしがみついている手の力は緩まない。何か、不意打ちを恐れるように。





 なー、この間、話した人、見つけたよ

 そっか。
 どうなったの?

 今度、話すね


「これ、むぎくんが琥太狼くんに会った時だ」
「先に、話してたの?」
「こういう人いるんだってー、って話題にしてた」



 なー。
 子ども、できた

 おめでとう!いつ産まれるの?


 …どうしよう。ぼく、お母さんになるのか?


 むぎくん、そっち、行くね。お義兄さん今どうせ仕事で缶詰でしょ?
 なんにせよ、むぎくんはお義兄さんのこと好きだから結婚してくれた。
 わたしが大好きな2人のところに来てくれたその子が、わたしは待ち遠しい。
 むぎくんが大変じゃない「おや」でいいんだよ。周りに、大人はいっぱいいるんだから





 佳都がお腹にいることがわかった時のやりとり。
 離婚前。


 そして、奏真の妊娠の時。



 むぎくん、今からそっち行くよー。

 なー、いつも来てくれるけど。
 彼氏、大丈夫なの?

 先約はむぎくんだし。
 大丈夫大丈夫







 紬の病気がわかって、メッセージは短いものになっていく。


 何か欲しい?

 大丈夫

 ごめん、起き上がれない

 すぐいくよ





 凪瑚のスマホに見つけた、テキストファイル。
 凪瑚が気づかない可能性もあった。それでも、そうやってメッセージを残した紬は、どんな気持ちでこれを遺したんだろう。


 テキストファイルの画面をそのまま、最後に入れた。




 なー
 なこ
 ずっと、ありがとう
 ありがとう、なんて言ったら、あんたは怒りそうだけど。ぼくはなーがいたから、ぼくでいられた。
 高校を卒業するあの日
 凪瑚だから嫌悪感ないけど、やっぱり違う、なんて言ったけど、本当はちょっと違った。
 凪瑚の体に触れて、どうしようもなく、もどかしくなった。あるはずのものがないことが、凪瑚を孕ませられないことが、もどかしくて。
 でも、凪瑚と試したあれは、そういうことじゃなかった。
 なーとずっといられる未来があることが嬉しかったよ。
 なーが、このメッセージに気がつくかわからないけど

 なー、愛してるよ
 いなくなるぼくのメッセージはきっと、誰にも負けない。
 幸せに笑うなーが、大好きだから、幸せでいるんだよ
 その幸せに、ぼくがこう言っていたな、って思い出すことも含まれたら、それだけでぼくは、ものすごく幸せだ
 ぼくの声を残したかったけど、もう、ぼくの声は掠れてしまって、後から聞いたらなーが泣いちゃいそうだから、テキストにするよ。




「これ」
「凪瑚、気づかなかったろう。俺、預かってよかったな」


 凪瑚へのこのメッセージを削ったデータも用意してある。2人のやりとりはきっと、子どもたちが大きくなってから見たらいいと思って。


 そうして、諦めの悪かったんだろう紬の、ボイスメモ


「佳都、奏真、大好きだよ。
 なー…」


 凪瑚へは、呼びかけだけ。
 その後に続く言葉がありすぎるというように。




「こいつ、ずるいなぁ…わかってて、こんな手の込んだこと」
「むぎくんは、そういうやつなの」


 濡れた声なのに、なんだかすっきりしている。
 そう感じて、琥太狼が凪瑚の顔を覗き込もうとすると、逃げるように顔を伏せてしまう。そこには、琥太狼の腕があって、そこに埋めるようなものだったけれど。



「琥太狼くん、ありがとう。これ、最高だよ」




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