サークル戦記 〜そして「空気」だった青年は独裁者になった〜

高梨龍彦

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第1章

第8話 廃部の気配

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 新入生歓迎会の翌週。

 考古学研究会では、早速、三年生の研究報告会が行われた。

 一時間ほどで三人の発表が終わり解散。周りが動き出すとすぐに、隣に座っていた真木が声を掛けてきた。

「明日、講義何限から?」
「明日は三限からだよ」

 おそらく麻雀の誘いであろうことはすぐに分かった。

「じゃあ、今日もウチ来いよ」
「うん、いいよ。あと誰誘う?」
「うーん、とりあえず前回と同じ面子に声かけて。新しい人も呼びたいところだな」

 新しい人が増えていくのは、まだ少し抵抗があるが、慣れていかなければしょうがない。

「そうだね、だれにしよう」
「刈谷さんとか?」
「うーん、刈谷さんかー。来てくれるかな?」

 刈谷さんは尊敬すべき部分もあるが、少し威圧感があるので、かなり遠回しに否定の気持ちを表現した。

「どうだろうな? まあ、ちょっと聞いてくるよ」

 そう言って、真木は刈谷のところへ声を掛けに行ってしまった。

 僕はその間に、斉藤と服部さんに声をかけることにした。

 まず近くにいた斉藤に声を掛けると、服部がすぐに近づいて来たので、そちらにも声を掛けた。二人共すぐに承知して、最低限の面子は集まった。

 服部に「真木は?」と聞かれたので、刈谷に声を掛けに行ったことを伝えると、「ああ、刈谷か。あいつ来るかな」と宙を見た。

 たぶん、服部は僕と同じ気持ちなのだろう。

 面子は揃ったので、麻雀はできる。この四人でいいだろうと思ったが、どうやら交渉は成功したらしく、真木が刈谷を連れて戻ってきた。

「刈谷さんも来てくれるってさ」
「よかった。ありがとうございます」

 僕は笑顔を作り、刈谷の方を向いて心とは反対のリアクションをした。

「おう、真木の家でやるんだろ。腹減ったから、コンビニ寄ってから行こうぜ」

 刈谷の提案通り、コンビニでそれぞれ弁当を買ったあと、真木の家に向かった。

 しばらく、五人で川沿いの道を歩き、広い公園に入る。その公園を抜けた場所にある大きめなマンションが真木の住まいだった。

 部屋は一階のワンルーム。真木が鍵を開けた青い鉄扉を入り、窓側に敷かれたカーペットの上のテーブルに、麻雀セットがまとめて置いてあった。

「今日、やるだろうと思って、テーブルの上、片付けといたんだ」
「用意がいいな」

 刈谷が笑いながら言った。

 前回と違い今日は五人なので、半荘ごとに最下位の人間が交代することになった。じゃんけんの結果、初めは斉藤が待機となり他の四人で卓を囲んだ。

「麻雀久しぶりだな。しかも手積みだし。イカサマとかするなよ、真木」
「イカサマも技術のうちですから」

 ニヤリと笑って真木が言った。

「おいおい。神原、見つけたら腕掴んでやれ」

 刈谷が楽しそうに牌を混ぜながら言う。

 半荘が二回終わったところで刈谷が最下位になった。一回目に負けて、抜けていた服部と交代して座を離れた。先輩たちはあまり強くはないらしい。

「そういえば、神原は史究会にも入ったんだろ? あそこどうなんだ?」

 暇になった刈谷が話しかけてきた。

「そうですね、どうなんでしょう。俺の他だと三年生の先輩しかいないので……。考研の雰囲気とは全然違いますね」
「だろうな。二年がいないんじゃ、次の役員も出せないし、今年で廃部になるかもな」
「そうかもしれません」
「まあ、考研はそんなことにならないから安心しろ」

 バシッと背中を叩かれた拍子に手元の牌を倒してしまった。

「あー、もう、刈谷さん」
「ハハハ、悪い悪い」

 この日も一晩中遊び、明け方になって解散となった。眠気でぼんやりとしながら自転車を漕ぎ、家に辿り着いてからは倒れ込むように、午前中いっぱい眠った。
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