7 / 50
第7話・期待は裏切れない
しおりを挟む
決意した私は、指導室へ一直線。今こそ、担任教授に学生会会長の申請を撤回をしなければーー
「リリスさん?あら、ちょうどいいところに来ましたね。」
声をかけようとした私は、先に担任に声をかけられてしまった。
「先ほど、庭の掲示板に貼られた演説選挙の結果、見ました?王子殿下とはたった9パーセント、わずかの差ですね!」担任は物凄く興奮しながら笑っている。
期待されている。
「この9パーセントの差は、他の者にとっては致命的な差になるでしょうけど、リリスさんならこの程度は問題ないでしょう。後は王家テストを普通にこなせば、必ず勝つと思いますよ。そうするとリリスさんが学院設立以来数百年の歴史を破り、初めて王族を抑えて、学生会会長になる人になります!」
担任の笑い声が、鋭く私の心に突き刺さり、胸が痛くなる。
ええ。その通り。
王族を越え、今まで誰も辿り着けなかったところまで来た私は、公爵家に無上の名誉をもたらし、教授らと学院の実力の証明にもなる。
前世の私は、学生会長として社交界の動きをすべて支配していた。父上も大変うれしそうだった。
天国の母上も喜でくれたはず。
・・・・・・
でも、今回はやめなきゃ・・・
王子殿下との接点を切らないと・・・
不自然な作り笑いと、何か言いたげな私に、担任教授が気付いたらしい。
「ところでリリスさん、今日は何のご用件ですか?」
「褒めていただき、誠にありがとうございます。実は今日は・・・学生会の選挙を辞退しようとーー」
「な、なんですって!?」私の発言に驚いた担任教授は大声で叫んだ。
「ど、どういうことですか?」
「リリスさんに何かありました?」
担任教授の叫び声で、他の科目の教授も集まってきた。
「そ、それは、国王陛下から何か言われたのですか?」
「リリスさん、ここは王家学院ですが、例え国王陛下でも、王子殿下を優勝させるためにリリスさんに辞退させるなど、私たちが見過ごすことはできません。」
「そうですよ、ここは今までずっとラミエル侯爵家が守ってきた神聖な学術系学院、例えそれが国王陛下の意思でも、公平なる学院のルールに干渉させるわけにはいきません。」
「その通りです。全く心配しなくていいですよ、リリスさん。」
教授たちは何か勘違いしたようで、私が心配しないよう説明している。
もちろん私もわかっている。
ここは長い間、頭の固いラミエル侯爵家が厳しく管理している場所。王家学院という名ではあるが、王族の者に媚を売るような行動は一切なく、潔い学術系学院として世界中に知られている。
それがために、周辺国の王族も、王子をここに通わせることがある。
「違います。私自身の都合で、もう学生会会長の適任者ではないと判断しました。ご期待に沿えずすみません。」
「リリスさん・・・」
「そんなこと、ありえません・・・」
説得していた教授らが一瞬に口をつぐみ、気まずい空気が指導室を漂い、私の動きを固めた。
つらくて心が痛い。完璧な笑顔も罪悪感で崩れそうになる。
「リ、リリスさんってそういう人ではないはずでしょう?例えお家の事情があっても、頑張って乗り越えて前へ進もうとするのが、リリスさんのあるべき姿だと思います。」
沈黙を打ち破ったのは、担任教授だった。
「そ、そうですね、過去はいくら後悔しても取り戻せませんよ。今こそ、未来を見て歩むべきだと思います。」
「リリスさんの前回の演説も非常に素晴らしかったですし、今回の王家テストも絶対に問題ありませんよ。」
だ、だめ・・・動揺してはいけない・・・
ここは、王子殿下との接点を切らないと・・・
私から恋をしなければ・・・
「す、すみません。やはり私は・・・」
心が乱れてしまい、言葉に勢いを失って気弱になった。
「リリスさんは、もう子供ではありませんよ。」
「・・・!?わ、私はただ・・・」
担任教授の衝撃的な発言で、私は、びくっと体を引きつらせた。
「公爵様の唯一の継承者として、リリスさんは将来家を継ぐために、いろいろと頑張らなければならないことがあるでしょう?もしリリスさんが学生会会長になれれば、きっと公爵様も亡くなったサリス様もお喜びなさるはずです。」
「・・・!!」父上と母上の話を聞いたら、もともと不安定だった心が、ついに耐えられなくなった。
「そうですよ、一生にたった一度のチャンスですよ、ここから逃げたら公爵様も悲しむでしょう」
「私にも、リリスさんと同い年の子がいます。もしリリスさんと同様なことが起きたら、私もやはり心の奥から娘に頑張ってほしいです。」
「自分の子が立派な成績が取れた瞬間こそが、親として一番うれしいときですよ。」
「わ・・・私は・・・」
そ、そう・・・前世の不幸は、自分のわがままと傲慢さが引き寄せたもので、すべては私のせいだった。例え学生会会長になったとしても、王子殿下に恋をしなければそれで済む・・・
「わ、わかりました。私、もうちょっと頑張ってみます。」
「いえいえ、リリスさんがわかってくれたのなら、私たちも大変うれしいです。では今日のお話は、聞かなかったことにします。」
「あ、ありがとうございます。」
力なく笑って感謝の意を示しながら、私は重い体を動かし、うろたえる姿を必死に隠して教室に戻った。
「リリスさん?あら、ちょうどいいところに来ましたね。」
声をかけようとした私は、先に担任に声をかけられてしまった。
「先ほど、庭の掲示板に貼られた演説選挙の結果、見ました?王子殿下とはたった9パーセント、わずかの差ですね!」担任は物凄く興奮しながら笑っている。
期待されている。
「この9パーセントの差は、他の者にとっては致命的な差になるでしょうけど、リリスさんならこの程度は問題ないでしょう。後は王家テストを普通にこなせば、必ず勝つと思いますよ。そうするとリリスさんが学院設立以来数百年の歴史を破り、初めて王族を抑えて、学生会会長になる人になります!」
担任の笑い声が、鋭く私の心に突き刺さり、胸が痛くなる。
ええ。その通り。
王族を越え、今まで誰も辿り着けなかったところまで来た私は、公爵家に無上の名誉をもたらし、教授らと学院の実力の証明にもなる。
前世の私は、学生会長として社交界の動きをすべて支配していた。父上も大変うれしそうだった。
天国の母上も喜でくれたはず。
・・・・・・
でも、今回はやめなきゃ・・・
王子殿下との接点を切らないと・・・
不自然な作り笑いと、何か言いたげな私に、担任教授が気付いたらしい。
「ところでリリスさん、今日は何のご用件ですか?」
「褒めていただき、誠にありがとうございます。実は今日は・・・学生会の選挙を辞退しようとーー」
「な、なんですって!?」私の発言に驚いた担任教授は大声で叫んだ。
「ど、どういうことですか?」
「リリスさんに何かありました?」
担任教授の叫び声で、他の科目の教授も集まってきた。
「そ、それは、国王陛下から何か言われたのですか?」
「リリスさん、ここは王家学院ですが、例え国王陛下でも、王子殿下を優勝させるためにリリスさんに辞退させるなど、私たちが見過ごすことはできません。」
「そうですよ、ここは今までずっとラミエル侯爵家が守ってきた神聖な学術系学院、例えそれが国王陛下の意思でも、公平なる学院のルールに干渉させるわけにはいきません。」
「その通りです。全く心配しなくていいですよ、リリスさん。」
教授たちは何か勘違いしたようで、私が心配しないよう説明している。
もちろん私もわかっている。
ここは長い間、頭の固いラミエル侯爵家が厳しく管理している場所。王家学院という名ではあるが、王族の者に媚を売るような行動は一切なく、潔い学術系学院として世界中に知られている。
それがために、周辺国の王族も、王子をここに通わせることがある。
「違います。私自身の都合で、もう学生会会長の適任者ではないと判断しました。ご期待に沿えずすみません。」
「リリスさん・・・」
「そんなこと、ありえません・・・」
説得していた教授らが一瞬に口をつぐみ、気まずい空気が指導室を漂い、私の動きを固めた。
つらくて心が痛い。完璧な笑顔も罪悪感で崩れそうになる。
「リ、リリスさんってそういう人ではないはずでしょう?例えお家の事情があっても、頑張って乗り越えて前へ進もうとするのが、リリスさんのあるべき姿だと思います。」
沈黙を打ち破ったのは、担任教授だった。
「そ、そうですね、過去はいくら後悔しても取り戻せませんよ。今こそ、未来を見て歩むべきだと思います。」
「リリスさんの前回の演説も非常に素晴らしかったですし、今回の王家テストも絶対に問題ありませんよ。」
だ、だめ・・・動揺してはいけない・・・
ここは、王子殿下との接点を切らないと・・・
私から恋をしなければ・・・
「す、すみません。やはり私は・・・」
心が乱れてしまい、言葉に勢いを失って気弱になった。
「リリスさんは、もう子供ではありませんよ。」
「・・・!?わ、私はただ・・・」
担任教授の衝撃的な発言で、私は、びくっと体を引きつらせた。
「公爵様の唯一の継承者として、リリスさんは将来家を継ぐために、いろいろと頑張らなければならないことがあるでしょう?もしリリスさんが学生会会長になれれば、きっと公爵様も亡くなったサリス様もお喜びなさるはずです。」
「・・・!!」父上と母上の話を聞いたら、もともと不安定だった心が、ついに耐えられなくなった。
「そうですよ、一生にたった一度のチャンスですよ、ここから逃げたら公爵様も悲しむでしょう」
「私にも、リリスさんと同い年の子がいます。もしリリスさんと同様なことが起きたら、私もやはり心の奥から娘に頑張ってほしいです。」
「自分の子が立派な成績が取れた瞬間こそが、親として一番うれしいときですよ。」
「わ・・・私は・・・」
そ、そう・・・前世の不幸は、自分のわがままと傲慢さが引き寄せたもので、すべては私のせいだった。例え学生会会長になったとしても、王子殿下に恋をしなければそれで済む・・・
「わ、わかりました。私、もうちょっと頑張ってみます。」
「いえいえ、リリスさんがわかってくれたのなら、私たちも大変うれしいです。では今日のお話は、聞かなかったことにします。」
「あ、ありがとうございます。」
力なく笑って感謝の意を示しながら、私は重い体を動かし、うろたえる姿を必死に隠して教室に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる