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第25話・求めるものは何か
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「???????」
「????」
「!!!???????????」
うるさい。
耳元で2人が大声で言い争っている声がうるさすぎて、私は眠りから起こされた。
「誤魔化して無駄ですよ!?私ははっきり見ましたからね!あなたを絶対訴えますわ!」
「お嬢さん、私は本当に無実なんです。ただリリス様の調子を診に・・・」
「何が…あったのかしら」
夢うつつのまま、なんとか起き上がった。
「リリス様!お目覚めですか!私がここに戻ってきた時ちょうどこのメガネがリリス様に不逞を働こうとしたのをこの目で見ましたの!」
ファティーナは慌てて駆け寄ってきて、そう説明した。
「そうではありません。私はただ病人を看病しようとしていただけで、何も変なことをするつもりはありません。」
メガネをして白衣をまとった見習医の格好の青年が、全力で弁解している。
今が通常の休憩時間じゃなくて良かった。さもないと2人の喧嘩は学校中の人を引き寄せていたに違いない。
「あなたは…」
「あっ、申し遅れました。私はカヴィット・ミセシルと申します。私の姉が先ほどリリス様を診察したカロリン・ミセシル子爵です。」
カロリン子爵の弟?私は頑張って前世の記憶を探ってみた。確かにそのような人物は存在したが、その記憶では…
『若くして事故で亡くなった』
それからカロリン子爵も真実を見つけるため色々と頑張って、しかもそのために何かをやらかしたとも聞いたことがあった。恐らく不幸で可哀想な者なのね。
「そう…カロリン子爵は今、私のために王室薬局へお薬を取りに行っているよね?それで、あなたは子爵が留守中の医師なのね?」
「はい、えっと、その通りです」
事情は大分分かったけど、 カヴィットは少し緊張しているようにみえる。
「リリス様、この人は今っ」
ファティーナはさっき見たことを強調したいらしく、会話に割り込んで来た。
「ファティーナ、彼がカロリン子爵の弟であるのなら、大丈夫だと思うわ。子爵の人柄は皆知っていることじゃないの?」
私はファティーナの話を中断した。ファティーナが心優しい貴族であることは知っているが、それなりに過激な人でもある。
カロリン子爵は非常に医学に精通した女性で、多くの成果を出し、若くして栄えある爵位を手に入れた。そのような立派な女性の弟なら、きっと品行の良い人だと私は信じた。
「信じてあげて、ファティーナ」
私はとりあえずファティーナの気持ちを落ち着かせることにした。
「そうです、そうです。私を信用できなくても、姉のことは信用してもらえますよね?」
ファティーナは私のしっかりとした、優しい目を見て、やっと納得した。
「…分かりましたわ。それではリリス様、午後の試験まであまり時間がありません。そろそろ行きましょう。」
ファティーナは分かったと言いつつも、まだカヴィットのことを疑う目で見ていながら、私を支えようと手を伸ばした。
けど、私の手に触れた瞬間、驚きのあまりに声を上げた。
「熱い!リリス様、体温が高いですわ!解熱薬を飲む前よりもずっとっ!」
確かに何かが違う。休む前の疲れに比べて良くなるどころかキツくなる一方。
「解熱薬を飲んでから逆に体温が上がったんですか?そんなわけがありません。リリス様、さっきのカロリンの診断結果は覚えてますか?」
『まって、カヴィットはカロリン子爵に言われて私の看病をしに来たんじゃあないの?私の病状を知らないってどういうこと?』
「カロリンはその、特に診断結果は言わなかったのです。ただ王室薬局に特効薬があるとだけ言い残して…」
そういえば、王室薬局にしか置かれてない特効薬?つまり私は難しい病気を患っているというの?医学は一般的な学問ではなくて、医学専攻の人しか深い知識を学ばないので、医学についてはよくわからない。
「リリス様、発熱以外にどこか具合が悪いところはありますか?」
「体が凄く疲れていて、力が入らない。めまいがして、胸が苦しくて、どんどん呼吸をするのが辛くなってきている」
「それ・・・は・・・」
私の話を聞いて、カヴィットもカロリン子爵と同様にしばらく黙り込んだ。
「そう…分かりました。それならやはり姉が薬を持ってくるのを待つしかないですね。それまでは我慢してもらうしかありません。」
やはり、難しい病気なの?カヴィットもやはり私に診断結果を言わなかった。
「わかったわ。それなら私はまずテストの準備をしに行く。後でまたカロリン子爵を探しにくるよ。」
「でも、リリス様の今の状態で、本当にまだテストを続けられるんですの?」
ファティーナは私をとても心配しているのがわかるけど、最優秀の貴族として、テストを諦めるなど、名誉毀損になるわ。
でも、やっぱり体の調子が悪すぎる。
「…うん、さっきよりは大分良くなったから大丈夫よ」
こんな嘘は他人を騙すことはできても、既に意識をはっきり保てないフラフラの私には何の役にも立たなかった。できればベッドで寝て薬が来るのを待ちたかった。しかし公爵令嬢として、この程度の病気で試験を諦めることはできない。前世での出来事を考えれば、生徒会から遠ざかるのは最も良い選択だが、既に選挙に立候補した以上、途中で棄権するのは公爵の名を汚すことになる。私のプライドもそんな途中で諦めるようなことを許さない。
だから、いくらどんなに辛くても耐えるの!頼む私の体!
「ファティーナ、悪いけど教室まで支えてくれない?」
「勿論ですわリリス様、まかせてください」
ファティーナにそう言われ、安心して体をファティーナの方へ少し寄せたが、表面上はやはりファティーナにあまり頼りすぎる失態を見せるわけにはいかなかった。
短い距離を、私は長い時間をかけてやっと教室までたどり着いた。教室内では皆午後のテストに向けての復習に集中していた。私はファティーナから離れ、姿勢を崩さないようにしながら席に戻った。
「リリス様!ご無事でしたか?」
もの好きな貴族少女たちがすぐに集まってきた。
正直言って、この行動には非常に嫌悪感を覚える。特にこの極限状態にいる時は尚更そう感じた。とはいえ彼女らの挨拶を無視するわけにもいかず、明らかな嫌悪感を表すこともできないので、適当な言葉でこの会話を終わらせるしかなかった。
「ええ。薬を飲んだら大分良くなったわ。みなさん心配してくれてありがとう。」
笑う気力がないので、優しい表情で対応するしかなかった。
「そうなんですか。リリス様、健康には気をつけた方がいいですね…」
「…」
締めの世辞が、こんなにも沢山あるとは思わなかった。
「もうすぐテストが始まる。みんなはもうそろそろ席についてくれ。」
カシリアが突然冷たい声で彼女らの熱弁を打ち切った。
「はい…わかりました、殿下…」
貴族少女達は散っていった。
振り返ると、カシリアは不機嫌そうにしていた。殿下は元々口数が少なく、貴族との交流を嫌っていた。今の貴族少女たちの挨拶が彼を怒らせたのだろう。
本当に最悪。生徒会に入る前からこんなにも沢山悪い印象を殿下に残してしまった。
「…殿下、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません」
私は少し頭を下げて、殿下に詫びた。
「ああ…いや、なんともない」
殿下はなんだか少し申し訳なさそうに言った。
ええ?どういうこと?
ジリリリリリ、鐘の音が響き、午後のテストが始まった。今は他のことを考えないで、テストに専念しよう。問題が配られて、以前の問題と同じだと確認した。よし、早く終わらせてしまいましょう。
私は頭を抱え、目眩と戦いながら、迅速に解答を書いていた。
けれどもすぐに息苦しくなり、口で息をしなければならなくなった。まるで窒息寸前のようだった。生きるための酸素が少なくなったかのように、口を大きく開けて空気を取り入れようとしても、だんだん意識が遠のくように感じられた。
#
#
#
#
#
「リリス?大丈夫?」
苦しそうな喘ぎを聞いたカシリアが周りを気にしながら、小さな声で訊ねたが、リリスは何も聞こえてないかのように無反応だった。
「…リリス?」
カシリアは声のトーンを少し上げた。
それでもリリスは何の反応も見せず、視線はさまよい、瞳も虚ろで、今にも眠ってしまいそうだった。
「リリス!!大丈夫!?」
カシリアは異常に気付き、大声で呼んだが、リリスは意識を失い、大きな音とともにテーブルに頭を強く打ちつけた。
「リリス様!キャァァァァァ!?」
教室中の生徒たちがこの突然の出来事に驚いて絶叫し、教室はしばらくの間大混乱に陥った。
「みなさん落ち着いてテストを継続するように。私は今から医師を呼びに行きます」
試験監督の教授が生徒たちを落ち着かせながら、教室を出た。
「リリス!?」
カシリアは軽くリリスの細くて小さな体を揺すってみたが、完全に意識を失って、無反応のようだ。
手から伝わった体温はあり得ない程の高温で、明らかに通常の発熱ではない。可憐な顔は苦痛に歪み、口で息をしていた。
ショック!?恐ろしい医学用語がカシリアの頭に浮かんだ。ショックとは血圧が下がって、瀕死の状態になる急性の症候群のこと、治療が間に合わなければ死に至る可能性も……
クソ!どうしてこんなことに!リリスは昼にもう一度医師に診てもらったはず!一体どこのヤブ医者が招いた事態だ!
冗談じゃない!これ以上は待ってられない!
「もう間に合わない!私は先にリリスを医務室へ連れて行く!」
カシリアは取り乱し気味に叫び、リリスを抱え上げ、慌てながらも優しく運んでいった。
「キャァァァァァ!」
カシリアの後ろから耳障りな貴族少女たちの叫び声が聞こえていた。
「殿下、どうなさいましたか?」
門番をしていた護衛の騎士たちが集まってきた。
「後で説明する!今は医務室へ急げ!」
カシリアは止まることなく、走りながらそう叫んだ。
今更とはいえ、カシリアはここ数年間自分をずっと上回っていたライバルに再び違和感を感じた。
軽すぎる体重で脆く感じる細い体、きめ細やかで柔軟な肌、かすかに漂う香り。ありとあらゆるものは、その強さには全く似合わない。
今腕に抱えているのは、恐らく世の中で最も美しい宝石なのだろう。
それはどこにあっても、人々に追い求められる幻想。
リリスは準太子の任を背負う自分とは違い、守るべき国はなく、背負うべき未来もない、羨ましいほどの自由を手にしているはず。
なのに・・・なぜ、庭でひっそりと佇めば無数の要人を惹きつけることができるこの花は、そこまで必死になるのか?
愚かで哀れで非論理的なことをするのか。
全く理解出来ない、意味がわからない。
リリス、君は一体何を望んでいるのだ!?
いくら考えても、カシリアは依然答えを得ることはできなかった。
「????」
「!!!???????????」
うるさい。
耳元で2人が大声で言い争っている声がうるさすぎて、私は眠りから起こされた。
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「お嬢さん、私は本当に無実なんです。ただリリス様の調子を診に・・・」
「何が…あったのかしら」
夢うつつのまま、なんとか起き上がった。
「リリス様!お目覚めですか!私がここに戻ってきた時ちょうどこのメガネがリリス様に不逞を働こうとしたのをこの目で見ましたの!」
ファティーナは慌てて駆け寄ってきて、そう説明した。
「そうではありません。私はただ病人を看病しようとしていただけで、何も変なことをするつもりはありません。」
メガネをして白衣をまとった見習医の格好の青年が、全力で弁解している。
今が通常の休憩時間じゃなくて良かった。さもないと2人の喧嘩は学校中の人を引き寄せていたに違いない。
「あなたは…」
「あっ、申し遅れました。私はカヴィット・ミセシルと申します。私の姉が先ほどリリス様を診察したカロリン・ミセシル子爵です。」
カロリン子爵の弟?私は頑張って前世の記憶を探ってみた。確かにそのような人物は存在したが、その記憶では…
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それからカロリン子爵も真実を見つけるため色々と頑張って、しかもそのために何かをやらかしたとも聞いたことがあった。恐らく不幸で可哀想な者なのね。
「そう…カロリン子爵は今、私のために王室薬局へお薬を取りに行っているよね?それで、あなたは子爵が留守中の医師なのね?」
「はい、えっと、その通りです」
事情は大分分かったけど、 カヴィットは少し緊張しているようにみえる。
「リリス様、この人は今っ」
ファティーナはさっき見たことを強調したいらしく、会話に割り込んで来た。
「ファティーナ、彼がカロリン子爵の弟であるのなら、大丈夫だと思うわ。子爵の人柄は皆知っていることじゃないの?」
私はファティーナの話を中断した。ファティーナが心優しい貴族であることは知っているが、それなりに過激な人でもある。
カロリン子爵は非常に医学に精通した女性で、多くの成果を出し、若くして栄えある爵位を手に入れた。そのような立派な女性の弟なら、きっと品行の良い人だと私は信じた。
「信じてあげて、ファティーナ」
私はとりあえずファティーナの気持ちを落ち着かせることにした。
「そうです、そうです。私を信用できなくても、姉のことは信用してもらえますよね?」
ファティーナは私のしっかりとした、優しい目を見て、やっと納得した。
「…分かりましたわ。それではリリス様、午後の試験まであまり時間がありません。そろそろ行きましょう。」
ファティーナは分かったと言いつつも、まだカヴィットのことを疑う目で見ていながら、私を支えようと手を伸ばした。
けど、私の手に触れた瞬間、驚きのあまりに声を上げた。
「熱い!リリス様、体温が高いですわ!解熱薬を飲む前よりもずっとっ!」
確かに何かが違う。休む前の疲れに比べて良くなるどころかキツくなる一方。
「解熱薬を飲んでから逆に体温が上がったんですか?そんなわけがありません。リリス様、さっきのカロリンの診断結果は覚えてますか?」
『まって、カヴィットはカロリン子爵に言われて私の看病をしに来たんじゃあないの?私の病状を知らないってどういうこと?』
「カロリンはその、特に診断結果は言わなかったのです。ただ王室薬局に特効薬があるとだけ言い残して…」
そういえば、王室薬局にしか置かれてない特効薬?つまり私は難しい病気を患っているというの?医学は一般的な学問ではなくて、医学専攻の人しか深い知識を学ばないので、医学についてはよくわからない。
「リリス様、発熱以外にどこか具合が悪いところはありますか?」
「体が凄く疲れていて、力が入らない。めまいがして、胸が苦しくて、どんどん呼吸をするのが辛くなってきている」
「それ・・・は・・・」
私の話を聞いて、カヴィットもカロリン子爵と同様にしばらく黙り込んだ。
「そう…分かりました。それならやはり姉が薬を持ってくるのを待つしかないですね。それまでは我慢してもらうしかありません。」
やはり、難しい病気なの?カヴィットもやはり私に診断結果を言わなかった。
「わかったわ。それなら私はまずテストの準備をしに行く。後でまたカロリン子爵を探しにくるよ。」
「でも、リリス様の今の状態で、本当にまだテストを続けられるんですの?」
ファティーナは私をとても心配しているのがわかるけど、最優秀の貴族として、テストを諦めるなど、名誉毀損になるわ。
でも、やっぱり体の調子が悪すぎる。
「…うん、さっきよりは大分良くなったから大丈夫よ」
こんな嘘は他人を騙すことはできても、既に意識をはっきり保てないフラフラの私には何の役にも立たなかった。できればベッドで寝て薬が来るのを待ちたかった。しかし公爵令嬢として、この程度の病気で試験を諦めることはできない。前世での出来事を考えれば、生徒会から遠ざかるのは最も良い選択だが、既に選挙に立候補した以上、途中で棄権するのは公爵の名を汚すことになる。私のプライドもそんな途中で諦めるようなことを許さない。
だから、いくらどんなに辛くても耐えるの!頼む私の体!
「ファティーナ、悪いけど教室まで支えてくれない?」
「勿論ですわリリス様、まかせてください」
ファティーナにそう言われ、安心して体をファティーナの方へ少し寄せたが、表面上はやはりファティーナにあまり頼りすぎる失態を見せるわけにはいかなかった。
短い距離を、私は長い時間をかけてやっと教室までたどり着いた。教室内では皆午後のテストに向けての復習に集中していた。私はファティーナから離れ、姿勢を崩さないようにしながら席に戻った。
「リリス様!ご無事でしたか?」
もの好きな貴族少女たちがすぐに集まってきた。
正直言って、この行動には非常に嫌悪感を覚える。特にこの極限状態にいる時は尚更そう感じた。とはいえ彼女らの挨拶を無視するわけにもいかず、明らかな嫌悪感を表すこともできないので、適当な言葉でこの会話を終わらせるしかなかった。
「ええ。薬を飲んだら大分良くなったわ。みなさん心配してくれてありがとう。」
笑う気力がないので、優しい表情で対応するしかなかった。
「そうなんですか。リリス様、健康には気をつけた方がいいですね…」
「…」
締めの世辞が、こんなにも沢山あるとは思わなかった。
「もうすぐテストが始まる。みんなはもうそろそろ席についてくれ。」
カシリアが突然冷たい声で彼女らの熱弁を打ち切った。
「はい…わかりました、殿下…」
貴族少女達は散っていった。
振り返ると、カシリアは不機嫌そうにしていた。殿下は元々口数が少なく、貴族との交流を嫌っていた。今の貴族少女たちの挨拶が彼を怒らせたのだろう。
本当に最悪。生徒会に入る前からこんなにも沢山悪い印象を殿下に残してしまった。
「…殿下、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません」
私は少し頭を下げて、殿下に詫びた。
「ああ…いや、なんともない」
殿下はなんだか少し申し訳なさそうに言った。
ええ?どういうこと?
ジリリリリリ、鐘の音が響き、午後のテストが始まった。今は他のことを考えないで、テストに専念しよう。問題が配られて、以前の問題と同じだと確認した。よし、早く終わらせてしまいましょう。
私は頭を抱え、目眩と戦いながら、迅速に解答を書いていた。
けれどもすぐに息苦しくなり、口で息をしなければならなくなった。まるで窒息寸前のようだった。生きるための酸素が少なくなったかのように、口を大きく開けて空気を取り入れようとしても、だんだん意識が遠のくように感じられた。
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「…リリス?」
カシリアは声のトーンを少し上げた。
それでもリリスは何の反応も見せず、視線はさまよい、瞳も虚ろで、今にも眠ってしまいそうだった。
「リリス!!大丈夫!?」
カシリアは異常に気付き、大声で呼んだが、リリスは意識を失い、大きな音とともにテーブルに頭を強く打ちつけた。
「リリス様!キャァァァァァ!?」
教室中の生徒たちがこの突然の出来事に驚いて絶叫し、教室はしばらくの間大混乱に陥った。
「みなさん落ち着いてテストを継続するように。私は今から医師を呼びに行きます」
試験監督の教授が生徒たちを落ち着かせながら、教室を出た。
「リリス!?」
カシリアは軽くリリスの細くて小さな体を揺すってみたが、完全に意識を失って、無反応のようだ。
手から伝わった体温はあり得ない程の高温で、明らかに通常の発熱ではない。可憐な顔は苦痛に歪み、口で息をしていた。
ショック!?恐ろしい医学用語がカシリアの頭に浮かんだ。ショックとは血圧が下がって、瀕死の状態になる急性の症候群のこと、治療が間に合わなければ死に至る可能性も……
クソ!どうしてこんなことに!リリスは昼にもう一度医師に診てもらったはず!一体どこのヤブ医者が招いた事態だ!
冗談じゃない!これ以上は待ってられない!
「もう間に合わない!私は先にリリスを医務室へ連れて行く!」
カシリアは取り乱し気味に叫び、リリスを抱え上げ、慌てながらも優しく運んでいった。
「キャァァァァァ!」
カシリアの後ろから耳障りな貴族少女たちの叫び声が聞こえていた。
「殿下、どうなさいましたか?」
門番をしていた護衛の騎士たちが集まってきた。
「後で説明する!今は医務室へ急げ!」
カシリアは止まることなく、走りながらそう叫んだ。
今更とはいえ、カシリアはここ数年間自分をずっと上回っていたライバルに再び違和感を感じた。
軽すぎる体重で脆く感じる細い体、きめ細やかで柔軟な肌、かすかに漂う香り。ありとあらゆるものは、その強さには全く似合わない。
今腕に抱えているのは、恐らく世の中で最も美しい宝石なのだろう。
それはどこにあっても、人々に追い求められる幻想。
リリスは準太子の任を背負う自分とは違い、守るべき国はなく、背負うべき未来もない、羨ましいほどの自由を手にしているはず。
なのに・・・なぜ、庭でひっそりと佇めば無数の要人を惹きつけることができるこの花は、そこまで必死になるのか?
愚かで哀れで非論理的なことをするのか。
全く理解出来ない、意味がわからない。
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いくら考えても、カシリアは依然答えを得ることはできなかった。
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