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第29話・矛盾だらけ-1
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……
やはり、どう考えてもおかしい。
数日前にリリスが生徒会選挙を辞退しようとしたことを、カシリアはふと思い出した。
それは最初に気づいた矛盾だった。
解せない、いくら考えても理屈に通じない。
本当に、生徒会選挙を辞退したければ、本当に王子である自分に勝利を譲ろうとすれば、必死にテストで頑張っていい成績を取ろうとしている今の愚行に何の意味がある。大人しくさり気なく病で中退すればいいじゃない!
なんでそこまで強がってんだ!
諦めればいいんだ!
そもそも最も優秀な貴族であるあの公爵令嬢リリスであれば、たとえ相手が自分だとしても、選挙を辞退することはない…
どうやら何か隠し事でもしているようだ。
けど、情報はないし、矛盾に満ちている行動からリリスの考えを推測することも無理。
「は…」
カシリアがため息をついたら、ベッドで横になっていたリリスが僅かに動いた。徐々に目が覚めてきたようだ。
「リリス様!」
ロキナはリリスの目が覚めたことに気づいて駆け寄った。目覚めたばかりのリリスは状況を把握できず、困惑しているようだった。
「これは…一体何があったの?テストを受けていたはずなのに?」
「君は熱で突然倒れたんだ。私が君をここまで運んできた。」
カシリアはゆっくり近づきながら、少し厳しい表情でリリスに話した。
「殿…殿下!それじゃ…テストは!?テストはどうなったのですか?」
リリスは慌てた。自分の体調よりテストの方が気になるようだ。
「テストはもうすべて終わった。」
カシリアは不満気に言った。
「君は自分の体をなんとも思わないのか?」
「お気遣い頂きありがとうございます。でも、これは今まで何度もあったただの熱です。今回はテスト勉強の疲れが原因だと思います。大したことではありません。」
何がただの熱だ、すぐにも死に至る「熱死病」だったんだぞ!
しかしカシリアは真実を言うことはできない。
リリスを説得することができないことを認め、ただため息をする他なかった。
#
#
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#
「今はどう?体の具合は?」
ようやく意識がはっきりしてきた私は、殿下が不機嫌な顔で私を見ているの気づいたら、ふと息を呑んだ。
また殿下に何か迷惑でもかけたのかな…
先ず自分の額に手を当ててみた。
おかしい、さっきまで熱かった額が、今はもうなんともない。気絶している間に、何か薬を飲まされた?
「ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません。殿下。私はもう大丈夫です。」
「ならばいいのだが、さっきカロリンが薬を投与したから、空腹を感じ始める頃だろう。間もなく彼女が食事を持ってくる。」
もうすでに薬を投与された?でも何かを飲まされた記憶もないし、気絶した人にどうやって薬を飲ませたのかしら?そう思いながら、私は不意に自分の腕に触れ、小さな注射の跡があるのに気がついた。
注射?
注射というのは貴族でもめったにしない。通常はとても危険な状況でのみ使われる。私が気絶していて薬が飲めないから、注射をする必要があったの?さすがは殿下と言ったところね。殿下のおかげで、医師たちはより慎重に治療をしたのでしょう。
「ありがとうございます、殿下。」
私は優しく微笑んで礼を言ったが、受験できなかった悔しさと喪失感を抑えきれなかった。
「そうだ、ロキナ…父上はこのことをご存じなの?」
「はい。使いの者を出して、公爵様にこのことを知らせましたので、もうじきいらっしゃるでしょう。」
「そうなのね」
私は淡々と答えたが、心の中に喜びか悲しみか分からない気持ちがあった。
どうにもならない。一科目欠席となると、生徒会長にはまずなれないでしょう。生徒会長にならない方が、将来的には楽なのかもしれないが、何とも言えない喪失感と申し訳なさを感じた。
手の届くところにあったものを、こんな小さなことで取りこぼしてしまった。こういうのが恐らく世の中で一番人を残念な気持ちにさせるものでしょう。
【前世で副会長だった平民のロタシの点数よりも低いでしょう。】
父上に顔向けできない。
私はそんなに平民嫌いではない方だと思うが、決して平民に好感を抱いている訳ではない。平民の下で働くなんて、貴族の自分にとってはとても受け入れ難いことだった。
私もファティーナのようにただの平民である副会長の命に従わず辞めることになるの?相当情けないことでしょうけど、自尊心の高い私がファティーナの轍を踏まない保証はどこにもない。
「そんなにお気になさらないでください、お嬢様。公爵様もきっとお分かりになってくれるはずです。お嬢様のお体の方が、どんなことよりも大切なのです。」
ロキナは心配して言った。
「そうね、父上はきっと分かってくれるわ。」
父上は今までずっと父上なりに愛情を表現していて、私もそれを感じていないわけではない。だからこそ、さらに罪悪感が増してしまう。なぜなら私はいつも自分のことばかりに気を取られて、父上の気持ちを全く考えていなかったから。
【いや、私は全然父上を理解しようとしなかったと言うべきかもしれない。】
こんな自分が嫌い。
でもこれが私の本心で、認めざるを得ない事実。
やはり、どう考えてもおかしい。
数日前にリリスが生徒会選挙を辞退しようとしたことを、カシリアはふと思い出した。
それは最初に気づいた矛盾だった。
解せない、いくら考えても理屈に通じない。
本当に、生徒会選挙を辞退したければ、本当に王子である自分に勝利を譲ろうとすれば、必死にテストで頑張っていい成績を取ろうとしている今の愚行に何の意味がある。大人しくさり気なく病で中退すればいいじゃない!
なんでそこまで強がってんだ!
諦めればいいんだ!
そもそも最も優秀な貴族であるあの公爵令嬢リリスであれば、たとえ相手が自分だとしても、選挙を辞退することはない…
どうやら何か隠し事でもしているようだ。
けど、情報はないし、矛盾に満ちている行動からリリスの考えを推測することも無理。
「は…」
カシリアがため息をついたら、ベッドで横になっていたリリスが僅かに動いた。徐々に目が覚めてきたようだ。
「リリス様!」
ロキナはリリスの目が覚めたことに気づいて駆け寄った。目覚めたばかりのリリスは状況を把握できず、困惑しているようだった。
「これは…一体何があったの?テストを受けていたはずなのに?」
「君は熱で突然倒れたんだ。私が君をここまで運んできた。」
カシリアはゆっくり近づきながら、少し厳しい表情でリリスに話した。
「殿…殿下!それじゃ…テストは!?テストはどうなったのですか?」
リリスは慌てた。自分の体調よりテストの方が気になるようだ。
「テストはもうすべて終わった。」
カシリアは不満気に言った。
「君は自分の体をなんとも思わないのか?」
「お気遣い頂きありがとうございます。でも、これは今まで何度もあったただの熱です。今回はテスト勉強の疲れが原因だと思います。大したことではありません。」
何がただの熱だ、すぐにも死に至る「熱死病」だったんだぞ!
しかしカシリアは真実を言うことはできない。
リリスを説得することができないことを認め、ただため息をする他なかった。
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「今はどう?体の具合は?」
ようやく意識がはっきりしてきた私は、殿下が不機嫌な顔で私を見ているの気づいたら、ふと息を呑んだ。
また殿下に何か迷惑でもかけたのかな…
先ず自分の額に手を当ててみた。
おかしい、さっきまで熱かった額が、今はもうなんともない。気絶している間に、何か薬を飲まされた?
「ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません。殿下。私はもう大丈夫です。」
「ならばいいのだが、さっきカロリンが薬を投与したから、空腹を感じ始める頃だろう。間もなく彼女が食事を持ってくる。」
もうすでに薬を投与された?でも何かを飲まされた記憶もないし、気絶した人にどうやって薬を飲ませたのかしら?そう思いながら、私は不意に自分の腕に触れ、小さな注射の跡があるのに気がついた。
注射?
注射というのは貴族でもめったにしない。通常はとても危険な状況でのみ使われる。私が気絶していて薬が飲めないから、注射をする必要があったの?さすがは殿下と言ったところね。殿下のおかげで、医師たちはより慎重に治療をしたのでしょう。
「ありがとうございます、殿下。」
私は優しく微笑んで礼を言ったが、受験できなかった悔しさと喪失感を抑えきれなかった。
「そうだ、ロキナ…父上はこのことをご存じなの?」
「はい。使いの者を出して、公爵様にこのことを知らせましたので、もうじきいらっしゃるでしょう。」
「そうなのね」
私は淡々と答えたが、心の中に喜びか悲しみか分からない気持ちがあった。
どうにもならない。一科目欠席となると、生徒会長にはまずなれないでしょう。生徒会長にならない方が、将来的には楽なのかもしれないが、何とも言えない喪失感と申し訳なさを感じた。
手の届くところにあったものを、こんな小さなことで取りこぼしてしまった。こういうのが恐らく世の中で一番人を残念な気持ちにさせるものでしょう。
【前世で副会長だった平民のロタシの点数よりも低いでしょう。】
父上に顔向けできない。
私はそんなに平民嫌いではない方だと思うが、決して平民に好感を抱いている訳ではない。平民の下で働くなんて、貴族の自分にとってはとても受け入れ難いことだった。
私もファティーナのようにただの平民である副会長の命に従わず辞めることになるの?相当情けないことでしょうけど、自尊心の高い私がファティーナの轍を踏まない保証はどこにもない。
「そんなにお気になさらないでください、お嬢様。公爵様もきっとお分かりになってくれるはずです。お嬢様のお体の方が、どんなことよりも大切なのです。」
ロキナは心配して言った。
「そうね、父上はきっと分かってくれるわ。」
父上は今までずっと父上なりに愛情を表現していて、私もそれを感じていないわけではない。だからこそ、さらに罪悪感が増してしまう。なぜなら私はいつも自分のことばかりに気を取られて、父上の気持ちを全く考えていなかったから。
【いや、私は全然父上を理解しようとしなかったと言うべきかもしれない。】
こんな自分が嫌い。
でもこれが私の本心で、認めざるを得ない事実。
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