可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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___ダダダダダッ!___


「ハァ…ハァ…終わったぞ!」

「あ、ベリル!」
「あ、殿下。お疲れ様です、もうこんな時間か。長湯し過ぎましね、リオ様はもう出ましょう。殿下、ゆっくりとお湯に浸かっていて下さい。リオ様のお着替えが終わり次第すぐ戻ります。お背中流す必要があれば、すぐ近くに騎士がおりますのでお声掛け下さいね。」

「お前っ!」

「わざとじゃないですよ?リオ様とお話をしていたら時間を忘れてしまって…逆上せてしまいますので、一旦お部屋に戻ってもらいますね。」

「あ、そうだな。こないだみたいに逆上せたら大変だ。」

妖精の庭のこともあるしな。

「じゃぁ、戻ってるよ。ベリル、また後でな。」

「リオ~ッ!」

フフッ…ベリル、ラリマーの前では子どもに戻ってる感じですごく可愛い。
あれ?…『可愛い』って…こんな感じなのか?俺の思ってた『可愛い』とは違うかな?

「どうかしましたか、リオ様?」

「ううん、何でもない。行こうか。」

可愛いって、容姿だけと思ってたけど…違うのかな。

「何か悩まれてるみたいですね。」

布で丁寧に身体を拭いてくれた後、服の着替えを手伝ってくれながらラリマーが話を振ってくれたので、俺は相談することにした。

「…ラリマーはって、どう思う?」

「ん~…例えば…お顔…とか。」

「うん、そうだよね。」

「あ…でも、それだけではないと思いますよ。」

「他には…小物とか…アクセサリーに可愛いのはあるよな。」

「それもありますね。」

「それも?他に何かあったっけ?」

「そりゃ、仕草や行動…ですかね。」

仕草や行動…

「それは可愛い令嬢だろ?」

「それもありますが、俺が言いたいのは…好意を持つ人の普段思っていたことと違う仕草や行動に、ふと『可愛い』と、思うことではないかな…と。」

なるほど。さっき、あったな。

「フフッ、そのお顔はありましたね。俺は『可愛い』というのは物の可愛さ以外に愛しさへの可愛さも含まれていると思いますよ。」

「そうなのか?」

「えぇ、リオ様はそりゃ見た目も可愛らし…フフフッ、その拗ねたお顔。正にそれ、お可愛い。恋愛でなくても好意を持つ相手のちょっとした自分への愛らしい仕草は「可愛い」と思うもの。それが愛しい人なら尚更でしょう。ベリル様がリオ様に『可愛い』と、仰るのはそういうことです。普通の見た目ではないのですよ。」

「そうなのかなぁ…」

「疑ってらっしゃいますね……そうですねぇ…例えば、俺はよく親に可愛いと言われています。大人になってるのにね。でも、親からしたら、愛する我が子の仕草はどんな時も愛らしく写るんじゃないでしょうか?って……あっ…これ、恥ずかしい…」

ポポポポポ…と、話していく内にラリマーの顔が赤くなっていく。
うん、確かに可愛く見えるな。

「自分を愛らしい…とか…いい歳した人間が言うもんじゃないですね…恥ずかしい…」

「アハハ、そっか。確かに今のラリマーは『可愛い』よ。」

「もう、リオ様。お人が悪い。」

「ありがと、ラリマー。何となく分かった。」

「…良かったです。」

俺は入学した頃、令嬢とかに「可愛いリオ様」と言われ、コーラルと2人で学園のアイドルのように令嬢達にもてはやされた。
今やコーラルは美男子へと階段を進みつつあって、アウィンと並ぶとなかなか圧巻だ。
俺だけが身長も見た目も取り残され、婚約してからは体型も取り残された。
元々筋肉の付きにくいフォスター家の俺は、あっという間に身長は伸びても筋肉は付かなかった。生っちょろい…どいつにも軽々とお姫様抱っこされる程、軽い俺。

「リオ様はご自分に自信がないようですけど、貴方は結構強くてカッコ良いお方なんですよ?」

「俺が?」

「そうです。ダメなものはダメと言える心を持ってますし、仲間への気遣いも出来ます。」

「仲間への気遣いは当たり前なんじゃないのか?」

「そりゃ、当たり前にしたいところですけど…人間、ピンチな時やいっぱいいっぱいで苦しい時ほど周りに目を配ることは出来ません。でも、貴方はそれをしようと努力する。何かをしてあげようと思っているだけじゃなく、貴方は行動に起こすでしょ?多少必要ではありますが、弱いと全ての新しい物事に失敗を恐れて足がすくんて動かない。でも…貴方は失敗を恐れずに行動するでしょ?立ち止まっても迂回路を見つけるじゃないですか。それは、今後ベリル殿下の助けにもなるでしょう。」

「ラリマー…」

「フフ、貴方は確か『可愛い』と言われるのを気にしてらっしゃいましたね。良いじゃありませんか。今のお姿は可愛らしく、心は強くてカッコ良く…その…ギャップ…萌え…と言うんでしたっけ?『リオはギャップ萌えでカッコ可愛い』って、こないだ聖女が教えてくれました。」

ベリィィ…何教えてくれてんのぉ⁈

「確かに…貴方は抱かれる方では流されやすいですけど…」

「…な゛っ!」

「フフッ…あの暴走気味な殿下の全てを受け入れて包み込む素直さも…全て俺にはカッコ良く愛らしいです。俺達は貴方と殿下をお守り出来ることを誇りに思っていますよ。」

「……ありがとう。」

___バァァン!___

「遅いっ!」

「あ、ベリル。」
「あ、殿下。」

2人で微笑み合ってたらベリルが元気良くドアを開けて戻ってきた。
そういや、もう服もとうに着替え終わってたんだった。
歩きながらついて行けば良かったな。

「リオッ!その顔をラリマーに見せんなっっ!」

「何言ってんだよ!ラリマーは俺の相談に乗ってくれてたの!」

「アハハ、申し訳ありません殿下。つい、ウッカリ。」

「お前っ!ここに来てからジルコンの影響受け過ぎてないか⁈何かジルコンと話してるみたいだぞ!」

「いやいや、これは俺の元々の性格というか…」

うん、多分ラリマーはジルコンと系統が一緒だ。

「ラリマーって、ジルコンと仲が良いだろ?」

「あれ?俺、言ってましたっけ?」

「ううん、多分そっかなぁ…って。」

「えぇ、みなさんがご入学されて知り合ったんですけど…かなり趣味や嗜好が合いまして。休みの日はよく会ってますよ。」

だから、自分の代わりにこっちに寄越したのか。

「オニキス様のことは…まぁ、聞いてましたからねぇ…」

「聞いてたの?」

「えぇ、彼は若いし将来性も高いですから。色々悩んでたみたいです。」

ラリマーには相談するんだな…

「あ、その顔…違います。ジルコンは弟みたいに可愛い貴方に心配を掛けたくなかっただけです。あと…お兄ちゃんの威厳ですね。」

「…お兄ちゃんの威厳…」

「可愛い弟にはカッコいいお兄ちゃんでいたいですからね。だから、弱みを見せ辛いんです。分かってあげて下さい。」

「リオ、その件に関しては俺にも責任がある。婚約して色々と大変な時だからお前に心配の種を増やしたくなかったんだろう。ジルコンに関しては俺に何か出来るか探ってみる。」

「俺も、色々と探ってみます。あ、すみませんが夜に妖精の庭を見に行ってもらっても良いですか?俺では分からないので…ジルコンから『リオなら分かるはず』と言われております。」

「俺なら?」

「えぇ、よく分からないのですが…『行けば分かる』と…」

「…分かった。」

その後、ラリマーは他の騎士に呼ばれて部屋を出て行き、ジルコンは夕食も難しいとラリマーが給仕を担当して顔を見せなかった。
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