【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん

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3章。【神喰らう蛇】と対立

15話。【神喰らう蛇】から冒険者ギルドを守る

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 俺たちはユーステルム唯一の冒険者ギルド【銀翼の鷲】までやって来た。
 冒険者ギルドは、冒険者の寄り合い所帯だ。ギルドから仕事を斡旋してもらい、所属する冒険者同士でチームを組んで、魔物や野盗を討伐したり、ダンジョンを攻略したりする。

 冒険者ギルドはランク分けされている。ランクの高いギルドほど高難易度の依頼を回されるので報酬は高くなり、所属するメンバーの質も上がる。
 【銀翼の鷲】はCランクのギルド。そこそこの組織だ。
 
 俺はリルの社会勉強として、冒険者ギルドに登録して、一緒に仕事を請け負うことにした。
 神獣フェンリルであるリルは、お金についてすら、よくわかっていない。これではまともに生活するのは無理だ。

 お金を稼いで使う体験をすることで、人間社会の仕組みを効率良く理解してもらえるのじゃないかと思う。
 あと、俺がそもそも冒険者しかやったことがないので、冒険者についてしか教えられないというのもある。

「いっしゃいませ! お仕事依頼ならこちらのカウンターで受け付けます……って、アッシュ様に、ご領主様!?」

 冒険者ギルドに足を踏み入れると、受付嬢が、驚きの声を上げた。
 エルフの襲撃から街を守ったことに加え、領主ユーステルム子爵家の養子に迎えられたことが発表され、俺はすっかり有名になってしまっていた。
 ギルド内の視線が一斉に俺たちに注がれる。

「本日は、ど、ど、どのようなご要件で、当ギルドに参られたのでしょうか? まさか、冒険者登録!? す、すす、すみません! アッシュ様であれば、即日、Sランクでの登録とさせていただきたいところなのですが、当ギルドのルールで最初は誰でもFランクからのスタートとなっておりまして……!」

 受付嬢はしどろもどろの様子で、聞かれてもいないようことを説明し出す。

「それで、まったく構いませんが……」
 
 変に特別扱いなどされても困る。
 俺は彼女を落ち着かせようとした。

「アッシュ・ヴォルンド……最強のSランクギルド【神喰らう蛇】の元隊長!」

「あれがこの国の英雄か……やべぇ、強そうだな」

「この街をエルフの襲撃から救ったばかりか、大量の食料まで支援してくれたと聞いたぞ!」

「おい、そんな奴が、なんで追放されたんだ?」

 冒険者たちが噂する声が聞こえてくる。ギルドには酒場が併設されており、そこで食事や賭博に興じている者たちもいたが、みな手を止めていた。

「ひゃあ! ご領主様までいらっしゃっているということは、大口のご依頼でしょうか!? あっ! アッシュ様はユーステルム子爵家のご養子に迎えられのですよね!? こ、ここ、これは大変失礼しました! す、すぐに応接間にご案内いたします! あいにくとギルドマスターは留守にしておりまして!」

 受付嬢はカウンターに額をぶつけそうな勢いで頭を下げた。

「あっ、いや。応接間に通していただかなくても、大丈夫です。今日は、俺とこの娘の冒険者登録に来ました」

「リル、冒険者登録する!」

 獣人少女リルがカウンターにしがみついて、尻尾を振る。物珍しいのか目をキラキラさせていた。

「俺とリルのふたりパーティということで、パーティ登録もしたいです。あと、魔物か野盗の討伐依頼があれば、紹介していただければと」

「私はアッシュお兄様とデートしているだけだから、気にしないで。ねっ、お兄様!」

 ミリアが周りの人間に見せつけるかのように、俺に腕を絡めてくる。

「用が終わるまで、ちょっとミリアは黙っていてくれ」

「はい! お兄様の恋人のミリアは、お兄様のご用が終わるまで、じっとしています。終わったら、デート再開ですね!」
 
 冒険者ギルドは情報の行き交う場所だ。こんなところで、恋人だのデートだのと大声で叫んだら、俺とミリアが恋仲であるなどというあらぬ噂が、街中に広がりかねない。

 さっそく、『血の繋がらない兄妹でデキているのか?』などというヒソヒソ声が、囁かれていた。
 おい、カンベンしてくれ。

「あっ、はい! しょ、少々、お待ちを! って、本当にこんな田舎ギルドに登録していただけるんですか!? アッシュ様ほどの実力があれば王都のAランク冒険者ギルドに即エースとして、スカウトされますよ!?」

 受付嬢がカウンターから身を乗り出して叫んだ。

「俺は外れスキルのせいで、【神喰らう蛇】を追放された身なんで、さすがにそれはないと思いますが」

「グリフォンの群れを撃退しちゃうような方が、何をおっしゃっているんですか!? Aランク冒険者ギルドの最精鋭パーティでも難しい偉業ですよ!」

 それも【世界樹の剣】とリルのおかげなんだが……

「そうよ! アッシュお兄様は最強の冒険者で、最高の英雄なのよ! そんなお兄様が、私の本当のお兄様で! これからずっと一緒に暮らしていけるなんて……幸せ!」

 ミリアがうっとりした感じで、俺に抱き着いてくる。

「リルもあるじ様といっしょにいられて、幸せ!」

「いや、お前ら、人前で抱き着くのはやめろ!」

 リルも俺にしがみついてきたので、慌ててふたりを引き離す。
 冒険者たちは嫉妬混じり目で、俺を見ていた。

「チクショウ……あんな美少女ふたりに言い寄られているなんて!」

「くっ。やっぱり俺たちとは住んでる世界が違うってか!?」

「俺、リルちゃんとパーティ組みてぇ!」

 初日から変な反感を買いたくなかったんだが。これはマズイかもな……

「わ、わかりました。それでは恐縮ですが、アッシュ様とリル様を【銀翼の鷲】のFランク冒険者として登録させていただきますので、こちらの書類にご記入ください」

 受付嬢が書類を出してくれたので、俺はペンを取って、リルの分の登録まで済ませる。

「ああっ! アッシュ様が【銀翼の鷲】に所属してくださるなんて、夢のようです!」

 受付嬢が瞳を輝かせた。そんな大げさだな……

 その時、冒険者ギルドの入口の扉が、乱暴に蹴破られた。

「邪魔するぜ【銀翼の鷲】のクソども!」

 見るからにいかつい男ふたりが、入ってくる。筋肉質な大男と、神経質そうな小男だ。大男は、傷だらけの気絶した男を引きずっていた。

「な、なんですか、あなたたちは……!?」

 受付嬢が問い質し、ギルド中から殺気立った視線が彼らに集中する。

「俺らはこの街に支部を出すことになった冒険者ギルド【神喰らう蛇】のモンだがよ。さっき酒場で景気良く飲んでいたら、てめぇらんとこのクソ冒険者が絡んできてな。俺らがギルドマスターから預かった貴重なエリクサーを割っちまいやがったんだよ」

「さて、この落とし前、どうつけてくれますかね? ああっ、こちらの方は丁重にお返ししますよ」

 小男が目配せすると、大男が受付カウンターにボコボコした男を放り投げた。

「きゃぁあああ!? バルドさん!?」

「おい、てめぇら、ウチのバルドに何しやがる!?」

 仲間がやられたと知って、ギルド内の冒険者たちが武器を手に立ち上がった。

「おいおい、俺らは哀れな被害者だぜ? エリクサーを弁償して、わびを入れれば、穏便に済まそうと思っていたのによ。はっ! どうやら潰されてぇみたいだな?」

 大男が獲物に喰らいつく肉食獣のように、歯を見せて笑う。

「え、エリクサーの弁償? そんなの無茶です!」

 受付嬢が悲鳴を上げた。エリクサーはひとつ100万ゴールドはする貴重品だ。豪邸がひとつ買える金額である。

「クククッ。それなら、まるで釣り合いが取れませんが、このギルドの土地の権利書をいただくということで、手を打ちますかね? 我々が進出して来た以上、あなた方は、もうお役御免な訳ですしね」

「クソギルドが潰れて【神喰らう蛇】が入ってくるなら、街の連中も喜ぶてなモンだぜ!」

「バカにしやがって、何が【神喰らう蛇】だ!」

「たったふたりで、俺たちに勝てると思うなよ!」

 激高した冒険者たちが、一斉に【神喰らう蛇】のメンバーに襲いかかる。

「おい、やめておけ!」

 俺が制止する暇もなかった。

 ドガァアアアア!

 大男がスレッジハンマーを一振りすると、冒険者たちはボールみたいにふっ飛ばされて、壁や天井にめり込んだ。
 一撃で、ほぼ決着がついてしまった。

「み、みんな……!?」

 魔法を詠唱していた女の子の冒険者たちが、恐怖で固まる。前衛が全滅したなら、脆弱な魔法使いはボコられるだけだ。

「まるで手応えがねぇな。まっ、ド田舎の底辺ギルドなら、こんなもんか?」 

「クククッ、躾のためにも彼女たちにも痛い目に合っていただきましょうか」

「兄者。よく見りゃ、割と上玉も混じっているぜ。慰謝料代わりに、一晩しっぽり楽しませてもらうってのは、どうだ?」

「あなたの女好きにも困ったモノですね。前みたいに壊さないでくださいよ」

 【神喰らう蛇】のふたりは腹を抱えて笑う。魔法使いの女の子たちは、歯の根が合わないほど震えていた。

「くぅっ……!」

「おっと! 【沈黙(サイレンス)】!」

 小男が魔法封じの魔法を使う。
 女の子のひとりが、果敢に魔法を放とうとしたが攻撃を封じられた。 

「……っ!?」

 女の子は突然、声が出せなくなって混乱する。【沈黙(サイレンス)】は沈黙を強制する魔法だ。使い手の少ない上位魔法であるため、初めて身に受けたらしい。

「遅い。その程度の詠唱速度で、この私に挑もうなど、無謀も良いところですね」

「ハハハハッ。詠唱速度で兄者に勝てる奴なんざ、一番隊のサーシャ様くらいじゃえねか?」

「かの【エレメンタルマスター】サーシャ様と比べられると、こそばゆいですがね」

 こいつら、見覚えがない顔だな。おそらく【神喰らう蛇】でも下っ端、Bランク以下の冒険者だろう。

 俺とサーシャが率いていた一番隊はAランク以上の精鋭のみで構成されていた。そのためBランク以下の者とは、接点がほとんど無かった。

 それにしても、ユーステルムに【神喰らう蛇】の支部を出す? 親父はこの田舎街に見切りをつけて出ていったというのに、どういう風の吹き回しだ?

「あん? なんだお前? さっきからジロジロ見やがって、何か文句でもあんのか?」

 スレッジハンマーの大男が、俺に因縁をつけてきた。
 
 親父はライバルとなる冒険者ギルドがあると、そことトラブルをワザと起こして力で叩き潰しているという噂があった。
 
 俺は一番隊の仕事で手一杯で、真偽のほどはわからなかったが、どうやら本当だったようだ。
 だとしたら許せないな。正直、不愉快極まりない。

「俺は【銀翼の鷲】のFランク冒険者だ。喧嘩なら買うぞ、蛇ども」

 俺は魔法使いの女の子を背中に庇って前に出た。
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