【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん

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4章。ベオウルフ盗賊団

23話。盗賊団が配下になる

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「はぁ!? 元【神喰らう蛇】一番隊隊長ですって?」

 レイナは俺を信じられないといった目で見つめた。

「な、なんで、そんな野郎が辺境でFランク冒険者なんかしているんだよ!?」

「俺たち、皆殺しにされる……!?」

 野盗たちは騒然となる。
 【神喰らう蛇】の名は野盗たちにとって恐怖の象徴だ。なにしろ、4番隊が野盗を狩りまくっているからな。

「ぐぅ……こ、こここ、殺すなら私だけにしなさい! コイツらは私に強要されて、略奪していただけだわ!」

 レイナが震え声で叫んだ。

「お嬢……っ!?」

「お嬢、それはないですよ! 俺たち【ベオウルフ盗賊団】は、一蓮托生の家族でしょう!?」

「うるさい、黙りなさい……! わ、悪いのは全部、私よ! 責を負うべきは私だわ! それから、お嬢じゃなくてお頭よ!」

「お、おい、てめぇ! お頭を手に掛けやがったら、俺たちは全員、死ぬまで抵抗するからな!」

「やめなさい! ホントに皆殺しにされるわよ! 【神喰らう蛇】の無慈悲さは、みんな知っているでしょう!?」

「で、でも……ここでお嬢を死なせたら、俺たちは先代に顔向けできねぇです!」

「いいから! アッシュ、こいつらには殺人だけはしないように言い聞かせてきたわ。私の首を差し出すから、どうか見逃してあげてちょうだい!」

 レイナと野盗たちは言い争いを始める。
 どうやら俺が野盗たちを殲滅すると思い込んでいるらしい。
 そんなことをするつもりはないんだけどな。
 俺は彼らを安心させるため、剣を鞘に収めた。

「……とりあえずユーステルムの領主代理として頼みたい。レイナ、お前たち盗賊団を辞めて、ユーステルム子爵家お抱えの兵になってくれないか?」

「はぁ? 何を言って……」

 レイナは目を瞬いた。
 俺は懐から身分証明書代わりにユーステルム子爵家の家紋入りの短刀を取り出す。
 野盗たちの目が釘付けになった。

「俺の今の名前は、アッシュ・ユーステルム。ユーステルムの領主ミリアの義理の兄という立場なんだ。
 今、ユーステルムはエルフの侵攻を受けていて、兵を必要としている。これだけの練度の騎兵に味方になってもらえれば、ありがたいんだが?」

「あ、あんた、貴族だったの? って、本気!? 野盗は縛り首が常識なんじゃ…」

 ほとんどの国の法律では、野盗は死刑ということになっている。犯罪抑止のためだ。
 だが、俺の考えは少し違う。

「今は食料難で、仕方なく盗賊に身をやつしたヤツも多いだろう? 厳罰にすれば野盗がいなくなる訳じゃない。レイナは無益な争いや殺生はしない性格のようだし。なにより、部下を大切にする良いヤツだ。
 野盗よりも、領主お抱えの兵になった方が良いじゃないか? とりあえず、俺の配下となったら、一生、食いっぱぐれないことを約束する」

 俺のかつての仲間には、元々野盗をやっていたヤツもいた。野盗は危険が大きくて割に合わないと、そいつは漏らしていた。
 野盗になる以外に生活の糧を得る方法があれば、ほとんどの人間は野盗にはならないんじゃないかと思う。

 俺は手を掲げて、大量のリンゴを召喚する。ゴロゴロと、赤い実が地面を埋め尽くして転がった。

「あっー! リンゴ!」

 リルがリンゴを拾って、片っ端しから食べ出す。

「おいしい! もぐもぐっ!」

「なっ!? どこからこれだけのリンゴを!? ホ、ホンモノ!?」

 レイナが目を丸くした。

「俺はスキルで、野菜や果物をいくらでも出現させることができるんだ。どうだろうか? 俺の配下になったら、絶対に飢えることはなくなるぞ」

 その言葉に、野盗たちの多くが喉を鳴らす。その日暮らしの生活をしている彼らにとって、魅力的な提案のハズだ。

「お頭、これなら俺たちの家族にも腹いっぱい食わせることが……」

 思った通り野盗たちの背後には、女子供などの家族がいるようだ。不作によって税が払えなくなって、家族ごと領地を追われて、野盗化する者もいる。
 野盗を殲滅するということは、彼らに養われている女子供も飢え死にさせるということだ。
 なんでも力で解決すれば良いという訳じゃない。

「ちょっと待ちなさい! あ、あたしの父さんは【神喰らう蛇】4番隊隊長ギルバートに殺されたのよ! アンタの古巣の連中は、あたしたちの殲滅を依頼されていて……必ずあたしたちを殺しにくるわ!」

「何っ?」

 俺はいささか面食らった。

「あたしたちが、ユーステルムにやって来たのは、ここには【神喰らう蛇】の支部が無いからよ! でも、アンタがあたしたちを雇えば噂が広がって、ギルバートが襲ってくるかも知れないわ!」

 レイナは恐怖に顔を引きつらせた。
 領主お抱えの兵になっても、過去に犯した罪が消える訳ではない。
 【神喰らう蛇】の依頼主が【ベオウルフ盗賊団】の殲滅を依頼していたのなら、それは十分に考えられることだ。

「……残念だが、それは情報がちょっと古いな。ユーステルムには、ちょうど【神喰らう蛇】の支部ができて、4番隊隊長のギルバートもやって来ている」

「な、な、なんですって……!? なぜ、こんな辺鄙な場所に!? まさか、あたしたちを追って!?」

 言われて気づく。考えてみればおかしな話だった。親父は何を狙って、ユーステルムに支部を出したんだろう……?
 だが、とりあえずその疑問は後回しだ。

「でも安心して欲しい。【神喰らう蛇】が【ベオウルフ盗賊団】を皆殺しにするように依頼されていたとしても。レイナたちがユーステルムの兵ということになれば、絶対に手出しはさせない。不安なら俺がギルバートと話をつける」

 俺が断言すると、野盗たちの間に安堵が広がった。

「お嬢、それなら……」

「そ、そうね。あ、安心かも知れないわね」

 レイナは口をぱくぱくさせた。よほど、ギルバートが恐ろしいらしい。
 まあ、無理もないが。【神喰らう蛇】の4番隊は、野盗を徹底的に殲滅することで知られている。

「わかったわ。アンタが、あたしたちの安全を保証してくれるというなら。あたしたちはアンタの兵となる。その代わり、給金は弾んでちょうだいよ!」

 給金って。ちゃっかりしているというか、たくましい娘だな。
 俺は苦笑した。

「わかった。じゃあユーステルムには【ベオウルフ盗賊団】は壊滅し、領主お抱えの兵となったと布告を出す。たぶん、それで【神喰らう蛇】が仕掛けてくることは無いハズだ」

「あ、ありがとう。で、アンタのことはこれから何て呼べば良い訳?」

 レイナは、ほっと胸を撫で下ろして尋ねた。

「そうだな。ユーステルムの兵団ということで、団長とでも呼んでもらえれば良いかな」

「わかったわ。アッシュ団長、これからよろしくお願いするわね!」

 レイナが右手を差し出す。俺はその手を握り返した。

「……理解しているだろうけど、野盗集団が街中にやってきて兵となることに不安や反発を覚える住民は多いと思う。しばらくは罪滅ぼしも兼ねて、エルフの襲撃で家を失った人たちの仮設住宅の建設や、軍務とは別に街の清掃作業なんかもしてもらいたいのだけど良いか?」

「それくらいなら、お安いご用だわ!」

「あと悪いけど、街の外での危険な偵察任務なんかをこなしてもらうことになると思う」

 住民感情やユーステルムの兵たちの気持ちを考えれば、【ベオウルフ盗賊団】を仲間として受け入れてもらうために必要なことだった。
 兵力を増すためとはいえ、あまり強引なことをしたら、内部に火種を抱えることになるからな。
 
「元々、あたしたちは野営生活がふつうだったんだから大丈夫よ。それにエルフの侵攻から街を防衛する仕事だっていうなら、望むところだわ! あたしはエルフなんて大嫌いなんだから!」

 レイナは怒りに歯をむき出しにする。
 その苛烈さに、俺はちょっと驚いた。

「レイナはハーフエルフだよな? 母親がエルフだったとか?」

 仲間になるなら、レイナの事情を知っておきたい。
 
「あたしは実の親から捨てられて、ベオウルフ父さんに拾われたのよ。実の親からもらったのはレイナという名前だけだわ。両親のどちらがエルフだったかも知らない」

 レイナは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
 ハーフエルフは人間からもエルフからも疎んじられる運命だ。おそらく、レイナの両親は娘の存在が重荷になって捨てたのだろう。

「ふん! 子供のころ、どうしても本当の親に会いたくて、アルフヘイムの森に行ったら……『ハーフエルフは入ってくるな!』って。弓矢で撃たれて追い返されたわ。私を捨てた親に、ベオウルフ父さんから受け継いだ魔法剣で復讐するのも、一興じゃない!」

 レイナはつらい過去を振り切るように不敵に笑った。
 なんとなくシンパシーを覚えた。実の親を見返したい、認められたいというのが、この娘の根底にある訳か。

「レイナさん……とても辛い思いをされたんですね。エルフの王女として、申し訳なく思います」

 それまで黙ってコレットが口を開いた。

「へ? アンタは……」

 レイナが呆気に取られる。
 その時、それは起きた。

「あるじ様、危ない、上!」
 
 リルが警告を発する。
 空を埋め尽くすほどの短剣が、俺たちに向かって降り注いできた。
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