パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを１０倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

４章。限界突破の外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

６２話。フォルガナ王

「アンジェラが僕の家臣となるなら……しばらくは僕の屋敷で一緒に暮らすことになるな」

「アベル様！　ルーンナイツの兵舎がありますので、アンジェラ王女が寝泊まりする場所はそこへ！」

　ティファが、すごい剣幕で迫ってきた。

「いや、しかし……仮にもフォルガナの姫にその扱いはないだろう？
　アンジェラのお母さんを呼び寄せて暮らしてもらうにしても、魔族だというし。ふたりとも僕の目の届く範囲にいてもらった方が良いと思うけどな」

　アンジェラたちが迫害を受けないようにすると約束した以上、目を光らせておく必要がある。
　
「いや、しかしですね……！」

「おいティファ、なんで反対してくるんだ？
　何もおかしなことはないだろう？」

　むしろ、これが最善のハズだ。

「クスッ、これは願ってもないことだわ。よろしくお願いいたします。ご主人様」

　アンジェラが完璧な所作で、一礼する。

「では、せめて私とアンジェラ王女を同室にしてください！」

「えっ。うれしいわ、ティファ。私とお友達になってくれるの？」

「それが私をアンデッドにするという意味で無ければOKですが……それとアベル様に変なことをしたら、許しませんからね！」

「ティファ、アンジェラの監視はいろいろな意味で任せるわ！」

　リディアも話に加わってくる。
　お母さんと一緒に暮らす以上、アンジェラが裏切ることはないと思うけどな。そんなに心配なんだろうか？

「女の子の同室のお友達……ちょっと、うれしいかも」

「あなた、もしかしてアンデッド以外に友達っていなかったの？」

　リディアが聞きにくいことを、ズバッとストレートに尋ねた。

「ええ。王女と言っても私は半魔族、敵が多い身だったから。いつ裏切るかわからない人間なんて側においておけないでしょう？
　……私の部屋に来たいなんて奇特な女の子なんて、そもそもいなかったし」

　後半、アンジェラの声は沈んでいて、割とかわいそうだった。

「そうか……それじゃ、ティファ。アンジェラとなるべく仲良くしてあげてくれ」

「……はい。善処します」

　アンジェラの生い立ちを知って、ティファも同情したのか、コクリと頷いた。
　ハーフエルフのティファは、アンジェラの気持ちがわかる部分があるのだろう。

　その時、怒気のこもった声が突如、鳴り響いた。

「度し難いなアンジェラ。フォルガナを裏切って、次期アーデルハイド王の家臣になるだと？」

　同時に、僕たちの目の前に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
　魔法陣が黄金の輝きを放つと、その中から、真紅のマントを羽織った男が現れた。

「お父様！？」

　アンジェラが目を見開く。

「なっ！　ま、まさかフォルガナ王か！？」

　僕たちは度肝を抜かれた。

「さよう。余（よ）こそフォルガナ王ダレス・フォン・フォルガナである。貴様が次期アーデルハイド王のアベル・ベオルブか？
　余の娘をたぶらかすとは。存外に口達者な男であるな」

　フォルガナ王からは、身に収まらない魔力が溢れだし、気圧されるような強大さを感じた。

「アンジェラ……無能のお前に情けかけて、チャンスをくれてやったというのに。失敗したばかりか、敵に寝返るとは……
　覚悟はできておろうな？」

「お、お父様っ……！」

　アンジェラは怯えたように、後ずさった。僕は彼女を庇うように前に出る。

「フォルガナ王が、自らお出ましになってくれるとはありがたい。空間転移魔法というヤツか？
　さっそくだが、戦争の勝利者として、そちらと交渉をさせてもらいたい。
　こちらの要求は、アンジェラとその母親の身柄だ。その代わり、ミスリル鉱山を渡すがどうだ？」