ノケモノ黒魔術師のやり直し。勇者に裏切られ、命と愛する者を奪われた俺、過去に戻ってすべてを取り戻します!

こはるんるん

文字の大きさ
43 / 46
5章。最終決戦。勇者の最期

43話。魔王軍に聖王都の人々を救助させる。

しおりを挟む
(サーシャ、民たち──特に女子供を聖王都の外に一人でも多く避難させてくれ)

 俺はサーシャに念話を通して、指示を出した。

(カイ様!? すみません。人間たちが全員苦しみ出しているのですが、ど、どういった状況なのでしょうか?)
(勇者の身体を乗っ取った教皇クレメンスが、人々の生命エネルギーを吸収している。放置していれば、たぶんここは死の都になる。頼む、魔王軍の力を結集して、みんなを救うんだ!)
(……わかりました。勇者と戦っておられるのですね。そして、私たちの行動が、勇者の悪しき意図を挫き、カイ様を支援することに繋がると!)

 サーシャは多くを語らずとも理解してくれたようだ。さすがはグリゼルダの右腕として、長年仕えたことだけはある。

(必ず勇者を倒して、グリゼルダと一緒に帰る。頼んだぞサーシャ!)
(はい! ご武運を!)

 グリゼルダに視線を落すと、土気色だった顔に血色が戻ってきてきた。

「グリゼルダ、【光耐性Lv5】は俺が、ヤツに勝つために必要なスキルだ。気に病むことはない。回復に専念していてくれ」
「わ、わかったのじゃ。すぐに戦えるまでに回復して、カイ様に助太刀するのじゃ」

 グリゼルダは俺の教えた【ダーク・ヒール】を自らにかける。
 これでもう、グリゼルダは大丈夫だろう。

「……魔王軍の動きが。まさか、民たちを都市外に避難させようとしているのか?」

 教皇クレメンスは驚きの表情で、聖王都を見下ろす。
 ワイバーンやグリフォンなどの飛行型の魔獣が、苦しむ人々を背に載せて、せっせと都市外に運び出していた。
 獣人やゴブリンが女子供を背負って、城壁の外を目指して走っている。
 ひとりでも多くの人を救おうと、みんなが力を合わせてくれていた。

「そうだ。お前のスキル【生贄の制限】の効果範囲は、この聖王都内だけじゃないか?」

 俺は魔剣ティルフィングを構える。
 どんなスキルにも射程距離や効果範囲が存在する。教皇クレメンスの話から、俺は聖王都が【生贄の聖剣】の効果範囲だと当たりをつけた。

「その通りだが。くくくっ、どうやら余は、貴様を買い被っていたようだ。余の力を弱めるのが目的であれば、聖王都に放火し、民を皆殺しにすれば良いものを。まさか、本気で聖王国との和平を実現させる気なのか?」
「……ほ、本当であるか、カイ殿? 民たちを救ってくださると?」

 もはや虫の息の聖王が呼びかけてきた。

「もちろんです。俺は約束を必ず守ります」
「……あ、ありがたい。どうか、勝ってくれ。我らが真の英雄よ……」

 それだけ告げると聖王は動かなくなった。
 無論、負けるつもりは微塵もない。

「ふんッ。魔王を真の英雄などとは、笑止千万。このような愚かなる聖王家の血筋など、完全に絶えさねばならんな」
「できるものなら、やってみろ」

 その瞬間、教皇クレメンスが踏み込んで斬撃を放ってきた。
 俺は魔剣で弾くが、骨が軋むような衝撃が走る。

「この肉体はレベル800まで上昇している。どうだ、手も足も出まい!」
「くぅっ!」

 どうやら勇者のユニークスキル【自動回復・極】で、魔法薬【レベル・ブースター】の副作用は完璧に抑えらているようだ。
 相手の自滅は期待できない。

「カイ様ぁ!」

 グリゼルダが痛みを堪えながらも【黒雷(くろいかずち)】を放つ。だが、教皇クレメンスが展開した光の障壁に弾かれてしまう。

「ふっ、こんな小娘の助力を頼みにしているのだとすれば、ガッカリであるぞ、魔王? しょせん、ゴミはゴミであったな」

 教皇クレメンスは嵩に懸かって攻めてきた。
 光の聖剣と打ち合う魔剣に、亀裂が入る。闇属性は光属性に弱い。
 もし俺が【光耐性Lv5】を修得していなかったら、最初の一撃で、魔剣は圧し折れていたかも知れない。

「幕引きだ!」

 俺がバランスを崩したのを見て、教皇クレメンスは、大きく聖剣を振りかぶる。

「【毒沼(ポイズン・レイク)】!」

 その瞬間を狙って、俺は教皇クレメンスの足元を毒の沼地に変えた。
 新たに修得したスキル【高速詠唱】のおかげで、地形操作魔法を一瞬で発動できたのだ。

 俺を侮っていた教皇クレメンスとってこれは、完全に予想外だったようだ。

「ぬぅッ!?」

 ヤツは足を取られて転倒しそうになるのを堪える。
 そこに、さらにグリゼルダから【黒雷(くろいかずち)】が飛んだ。

「わらわは魔王カイ様の右腕、いついかなる時も、カイ様をお守りするのじゃ!」
「おのれ!」
「【瞬間移動】!」

 俺は教皇クレメンスの頭上に瞬間移動しつつ、魔剣を振り下ろした。
 その一撃は、教皇クレメンスの展開した光の魔法障壁を砕いて、ヤツの肩を斬り裂いた。

「がっ!? バカなぁ!?」
「やった! さすがはカイ様なのじゃ!」

 グリゼルダが歓声を上げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...