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 チョロ過ぎてこいつどんだけなんだと少し心配にもなるが、ライアスの未来を守る為だ。チョロくて助かる。


「大丈夫そう?」

 アシュマルナに“出力調整”させた後リビングに放置して、ソランツェに任せていたライアスの様子を見にダイニングの方へ行ってみる。

「申し訳ございません……」

 椅子から立ち上がろうとしているのを手で制し、近くへ行って顔を覗き込むと、顔色は戻っているけれど少々ぐったり気味のライアス。可哀想に……。

「声大きかったんで聞こえてたかもしれないけど、ああなったのはアシュマルナの所為だから。ライアスが悪い所なんて欠片もないから安心しろ」
「えー……っと」
「つーか、吃驚しただろ? ゴメンな」
「いえ……はい、はい。」

 いや、吃驚したってレベルの話じゃないよなって感じだけどもね。

「とりあえず、アシュマルナに近付いても大丈夫になったと思うし、他にも色々大丈夫だからな」
「色々……大丈夫、だという事ならば……はい」
「うんうん、大丈――って、あれ?」

 ふと疑問。ライアスにはマジもんの神の子だよとは言っていたけど死なない事不老不死までちゃんと説明してたっけ?してる?してない?
 どっちだったかとライアスに視線を向けた瞬間バチッとかち合い、俺が口を開こうとする前にライアスの手でサッと塞がれる。

「大丈夫です、大丈夫! ですから!」

 これ以上させてくれるなと言わんばかりの勢いのライアスに、俺も口を塞がれたままコクコクと頷いて同意を示す。うん、うん!
 俺が同意したのを見て口は解放されたけど、ライアスと二人、目で会話。OK、大丈夫。言わない!大丈夫だよ、ライアス!色々大丈夫なのを呑み込んで、大丈夫なんだよな!な!――って大丈夫って使い過ぎて『大丈夫』とは果たして一体……?みたいに頭の中がなってきたぞ。ゲシュタルト崩壊ってこんなのだっけ?

 まあ、とりあえず今はっきり判っている事と言えば、

「……大丈夫って便利な言葉だよね」
「はい」


 お互いヘラリと顔を見合わせて笑った後は、甘い物でも飲んで元気になれよって事で災害時の備蓄用だったチョコレートを使ってホットショコラを作って出してあげた。飲め。
 俺が用意している最中に、ソランツェがポツリと「ここに来る前にライアスを国に戻しておけば良かったか……まあ、今更遅いんだが」って言っていて「ほんとそれ」って思ったし、その後にライアスがすっげー小声で「色々知った今、国に戻る方が居心地悪いんだろうなあ……」って言っていて「ほんとごめん」って思ったよ。色々な物はホットショコラと共に呑み込んで忘れてくれ。

 いや、無理だよね。ほんとごめん。俺が悪いや。











++++++





「明日はどうしようかな」

 いつもの様に寝る前にベッドにゴロンと横になってソランツェとお話。俺の頭の定位置はソランツェの腕の上。腕枕はする方だったけどされる方になるとはなあ……あはは。

「滞在するんじゃなかったのか?」
「そうだったんだけど」

 予定としては数日滞在して枯れたりしない様に植え替えた苺の様子を見ようと思っていたので、入手した物に限るけど種とかが簡単に手に入る様になったのと植物の”時間操作”の力を手に入れた今はその必要もあんまり無いのかなという所。

 あの後、ホットショコラの虜になったライアスに数杯分出してあげて、何やら『少し準備がある』とか言って帰るというアシュマルナを見送った後は貰った”時間操作”能力の確認をした。
 芽出しの為に放置しようとしていたじゃがいもを使って、アシュマルナのアドバイス通り鑑定で調べた通りの方法で植えつけて芽が出るまで時を進め、芽かきした後は収穫まで一気に、と魔法をかける。
 そうすると、じゃがいもは昔見たアニメ映画のワンシーンみたいにぐんぐんと成長していって、結果一つのじゃがいもから良いサイズの物が15個くらい収穫出来た。豊作とする基準は知らないけれど結構いい線いってるんじゃないかと思う。
 因みにじゃがバターにして食ったら美味かった。良い。

 と、まあ、そんな感じだし家も作ったしでここでの滞在理由が無くなった。別に明日一日居ても良いんだけど他にこれと言ってしたいという事も無く……。例の執筆活動は馬車移動中の暇潰しとして取っておこうと思うし、凝った料理もいいけど何となく今じゃないかなって気分だし。

「何もしない一日ってのもなあ。惰眠を貪るっつーのは……」

 非常に魅力的だけど、何だかなあって。

「誰に咎められる事も無いのだから、そういうのも構わないと思うが」
「でも、俺が動かないって事はソランツェ達だって動けなくて暇しちゃうって事だからさー……近場に家と畑以外何も無い場所だし、この広い土地のどっかにある鉱山まで行ってみる? でも、行った所で見た目ただの山だろうし……。ここに居るのってかなり退屈だと思うんだけど……」
「そんな事はないぞ、俺はな」
「そう?」

 そうだと頷く代わりに軽く額にキスで答えられて、ギュッと抱き寄せられる。
 俺、ソランツェの首筋に近付いた時にフワッと香るソランツェの匂い好きなんだよな、それに腕枕状態でギュってされると安心感っていうか、それがいいよな~ってそれは置いといて。

「つーか、ソランツェは暇な時間って何してるんだ?」

 まだ話していたいので、このままだと安心感からウトウト寝ちゃいそうな腕の中からもぞもぞ抜け出してソランツェから少しだけ距離を取ると、

「…………」

 ん?なんかキョトンとした顔してる?

「どうした?」

 つーか、この謎の間は一体?

「……いや、何でもない」
「?」

 ソランツェは俺の(おそらく)不思議そうにしている(だろう)顔を見て、フフッと笑っている、けど?

「そうだな、暇な時間か……」
「うん」
「暇、というか移動中や食事中・就寝中、それに依頼を受けて活動している時間以外はほぼ全て鍛錬の時間に充てていたな」
「あ」

 …………はい。


 愚問だったー!謎の間はこれかー!!そうだよ、そうだ。ソランツェは元々そういうストイックな人だった。訊くまでも無い事過ぎた。脊髄反射的に質問してたわ。恥ずっ!!!

 ここで俺がだらけてる間にどこにも動けなくともトレーニングしてるから退屈にはならないっつー事だよな……すごい……俺とは根本が違うぜ。あ、もしかしなくても、騎士なライアスもそうだったりする?ひぇぇ。
 つーか、そういう事なら、ちゃんとトレーニングジム的なやつっていうか鍛錬場造ってみるのもいいかもしれない。俺がだらけていようともそうじゃなかろうともあった方が良いのでは?うん。
 造るなら剣技は勿論、魔法も遠慮なくぶっ放せる様にしたいからアシュマルナに良い感じに出来ないか訊いてみようっと。

「よし。俺、明日は鍛錬場造る事にする!」

 ――って明日の予定、決まった!って宣言してみたら「リヒトのそういう所が……」ってソランツェにしては珍しく声を上げて笑いながら抱き締められたんだけどどういう事?



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