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本編(表)
04 ヤンデレがいのない彼女
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「どういう事?」
私はカフェテラスで、男の子とお茶を飲んでいた。
そこへやって来たのは私の彼氏の緑川くん。彼は物凄い負のオーラをまとい、つかつかと早足でやってきた。
整った顔を歪ませた緑川くんはテーブルについている私たちを見下ろし、冷え切った声をおとしたのだ。
「千夏、この男、誰?」
「同じサークルの長居くんです」
哀れな長居くんは、緑川の絶対零度の目線に怯え「ヒィ」なんて言っている始末。
「長居くん、ごめんね? じゃあまたサークルで」
「あ、ああ……うん。また」
「……」
長居くんは、慌てて鞄を掴んでコソ泥の様に逃げ帰っちゃって……。
(そんなに怖がらなくても……ここからが良い所なのに)
「ふぅん。またね?」
長居くんが座っていた席を、サッと払って緑川くんが座る。両手を組み、顎をのせて、取り調べを行う刑事のような鋭い目つきで私を尋問するのだ。
「どうして他の男と二人っきりでお茶を飲んでいるの?」
「サークルの合宿があるの。それの打ち合わせ」
「合宿? 聞いてないけど」
「今、言ったよ?」
私の悪びれもない態度に、緑川くんのこめかみは血管がピキピキと音をたてるくらい浮かんでいる。
眉間には深いシワ。折角の綺麗な白い肌が勿体無い。
私は人差し指と中指で緑川くんの眉間のシワをグイグイ押しやった。されるがままの緑川くんは、深いため息をついた後に更に低いトーンで話す。
(ああ)
ドドドドドドドドド
胸が早鐘を打ち、緊張と―から私の手汗はびっしょりだ。
(いよいよ)
「千夏は、ちっとも反省してないね」
(きた―!)
私の彼氏である緑川くんは“ヤンデレ”だ。
やけに美形のヤンデレが多い高校で私たちは出会った。
私は一目で彼の隠された狂気を感じ、二目には堕とされていた。運良く付き合えるようになっても、彼を繋ぎ止める事に必死になっていた私は、とある女子生徒にアドバイスをもらったのも思い出。
彼のヤンデレスイッチに切り替わったこの声。
大好きすぎる!
「千夏」
(あぁん。このトーンの声、子宮に響く!)
「僕は、できれば……千夏のその可愛い瞳に他の男を映したくない。僕以外と話して欲しくない……」
(うんうんうん! 他の男を“見るな”“話すな”ですね! はい! 私! 緑川くん以外の他の男は糞虫にしか見えませんので話すのも視界にいれるのも苦痛! むしろ、視界に入ったら射殺したい所存です!)
「ほんと、どこかに閉じ込めてしまいたいよ」
(いいよ! いいよ! ぜひ、閉じ込めてね。私は逃げられない様に衣類をはぎ取られ、身に着けられるのは緑川くんのシャツのみなんだよね! 足首にはベッドに繋がれた鎖。運動不足は愛の営みで解決。私の肌に浮かぶのは病的までにつけられた鬱血痕と歯形。緑川くんと私だけで成り立った世界。わかります。楽園ですね)
私は、ニヤケ顔を見られないように口元を手で隠し、目を伏せた。
緑川くんが心配そうに私を覗き込んでくる。泣いているの? なんて。そんな。寧ろヨダレが大変なだけです。
「僕はね。千夏の事ならなんでも知っておきたい」
(うん。私も知って欲しい。“盗聴”“盗撮”三六五日寧ろして欲しいの! でも、トイレ……は、流石に恥ずかしいかな? あ、嫌って言うわけじゃないんだけど……どうしてもっていうなら……トイレも……だ、大丈夫なんだからねっ!)
「……君を食べてしまいたいくらい、愛おしい。僕たち混ざり合えたらいいのに」
(゛ん゛ん゛ん。流石の私も……カニバは流石に痛そうだから怖いけど。緑川くんの爪の垢なら煎じて飲めます よ? 緑川くんの体液なら更に……ghじゅいこlp;[自主規制] ご褒美です!)
「ねぇ? 千夏をつなぎ止めるにはどうしたらいい? 子どもを作って君を僕から離れられないようにする?」
(もうっ! 子どもがいなくても、私のハートは雁字搦めに緑川くんのものなのに! でも、緑川くんとの子どもなら何人でも欲しいです! 子どもを沢山産む計画は着々と進行中だよ! 保育士の資格も取る予定だし、育児雑誌も定期購読しているし。いつでも大丈夫! 緑川くんには内緒にしているけれど、出逢った高校一年の時から排卵日にはゴムに穴を開けているんだぁ。はぁァん。緑川くんに似た赤ちゃんが欲しい)
「千夏?」
(激可愛すぎる。想像しただけで、萌え転がりそうになっちゃった)
妄想が止まらず、全身がプルプルと小刻みに震えている。この感動をどうか! 緑川くんに! 伝わって! 思わず、緑川くんの手を握りしめた。
「緑川くん……」
さぁ、今からレッツ子作りタイム! と、精一杯熱く潤んだ視線を緑川くんに送った―のに。
「……はぁ。千夏にはかなわないよ」
そして、握っていないもう片方の手で頭をなでなで。バックに華が舞うような笑顔と子どもをあやす様な優しい声で、私に囁いた。
「そんなに、怯えないで? 僕は千夏の心まで壊したいと思っていないし。自由な千夏も好きなんだ……いいよ。合宿に行っても。僕も勿論ついていくけどね」
(ちょっ、待っ!)
「さぁ、今日は帰ろう? 送っていくよ」
(また失敗!? 監禁は? 盗聴・盗撮! 子作りは?)
紳士的な態度な緑川くんに、不満いっぱいになってついつい文句のひとつもいいたくなった。
「緑川くんの……いじわる」
アヒル口に尖らせ下を向いて拗ねる。
そして、ギューと手を恋人つなぎに握り直した。
「……はぁ。本当に可愛くてまいっちゃうな……。僕の恋人は」
(ハァァァァァァァ~)
緑川くんに見えない所でため息をつく。
またお預けをいただいてしまった。彼にヤンデレてもらう為に長居くんと二人っきりになったのに。
(後で身体を消毒しよう)
今度はどんな作戦をたてようか。
ねぇ、緑川くん……お願い。
早く、私を閉じ込めて。
私の世界を“緑川くんだけ”にして欲しいの。
私はカフェテラスで、男の子とお茶を飲んでいた。
そこへやって来たのは私の彼氏の緑川くん。彼は物凄い負のオーラをまとい、つかつかと早足でやってきた。
整った顔を歪ませた緑川くんはテーブルについている私たちを見下ろし、冷え切った声をおとしたのだ。
「千夏、この男、誰?」
「同じサークルの長居くんです」
哀れな長居くんは、緑川の絶対零度の目線に怯え「ヒィ」なんて言っている始末。
「長居くん、ごめんね? じゃあまたサークルで」
「あ、ああ……うん。また」
「……」
長居くんは、慌てて鞄を掴んでコソ泥の様に逃げ帰っちゃって……。
(そんなに怖がらなくても……ここからが良い所なのに)
「ふぅん。またね?」
長居くんが座っていた席を、サッと払って緑川くんが座る。両手を組み、顎をのせて、取り調べを行う刑事のような鋭い目つきで私を尋問するのだ。
「どうして他の男と二人っきりでお茶を飲んでいるの?」
「サークルの合宿があるの。それの打ち合わせ」
「合宿? 聞いてないけど」
「今、言ったよ?」
私の悪びれもない態度に、緑川くんのこめかみは血管がピキピキと音をたてるくらい浮かんでいる。
眉間には深いシワ。折角の綺麗な白い肌が勿体無い。
私は人差し指と中指で緑川くんの眉間のシワをグイグイ押しやった。されるがままの緑川くんは、深いため息をついた後に更に低いトーンで話す。
(ああ)
ドドドドドドドドド
胸が早鐘を打ち、緊張と―から私の手汗はびっしょりだ。
(いよいよ)
「千夏は、ちっとも反省してないね」
(きた―!)
私の彼氏である緑川くんは“ヤンデレ”だ。
やけに美形のヤンデレが多い高校で私たちは出会った。
私は一目で彼の隠された狂気を感じ、二目には堕とされていた。運良く付き合えるようになっても、彼を繋ぎ止める事に必死になっていた私は、とある女子生徒にアドバイスをもらったのも思い出。
彼のヤンデレスイッチに切り替わったこの声。
大好きすぎる!
「千夏」
(あぁん。このトーンの声、子宮に響く!)
「僕は、できれば……千夏のその可愛い瞳に他の男を映したくない。僕以外と話して欲しくない……」
(うんうんうん! 他の男を“見るな”“話すな”ですね! はい! 私! 緑川くん以外の他の男は糞虫にしか見えませんので話すのも視界にいれるのも苦痛! むしろ、視界に入ったら射殺したい所存です!)
「ほんと、どこかに閉じ込めてしまいたいよ」
(いいよ! いいよ! ぜひ、閉じ込めてね。私は逃げられない様に衣類をはぎ取られ、身に着けられるのは緑川くんのシャツのみなんだよね! 足首にはベッドに繋がれた鎖。運動不足は愛の営みで解決。私の肌に浮かぶのは病的までにつけられた鬱血痕と歯形。緑川くんと私だけで成り立った世界。わかります。楽園ですね)
私は、ニヤケ顔を見られないように口元を手で隠し、目を伏せた。
緑川くんが心配そうに私を覗き込んでくる。泣いているの? なんて。そんな。寧ろヨダレが大変なだけです。
「僕はね。千夏の事ならなんでも知っておきたい」
(うん。私も知って欲しい。“盗聴”“盗撮”三六五日寧ろして欲しいの! でも、トイレ……は、流石に恥ずかしいかな? あ、嫌って言うわけじゃないんだけど……どうしてもっていうなら……トイレも……だ、大丈夫なんだからねっ!)
「……君を食べてしまいたいくらい、愛おしい。僕たち混ざり合えたらいいのに」
(゛ん゛ん゛ん。流石の私も……カニバは流石に痛そうだから怖いけど。緑川くんの爪の垢なら煎じて飲めます よ? 緑川くんの体液なら更に……ghじゅいこlp;[自主規制] ご褒美です!)
「ねぇ? 千夏をつなぎ止めるにはどうしたらいい? 子どもを作って君を僕から離れられないようにする?」
(もうっ! 子どもがいなくても、私のハートは雁字搦めに緑川くんのものなのに! でも、緑川くんとの子どもなら何人でも欲しいです! 子どもを沢山産む計画は着々と進行中だよ! 保育士の資格も取る予定だし、育児雑誌も定期購読しているし。いつでも大丈夫! 緑川くんには内緒にしているけれど、出逢った高校一年の時から排卵日にはゴムに穴を開けているんだぁ。はぁァん。緑川くんに似た赤ちゃんが欲しい)
「千夏?」
(激可愛すぎる。想像しただけで、萌え転がりそうになっちゃった)
妄想が止まらず、全身がプルプルと小刻みに震えている。この感動をどうか! 緑川くんに! 伝わって! 思わず、緑川くんの手を握りしめた。
「緑川くん……」
さぁ、今からレッツ子作りタイム! と、精一杯熱く潤んだ視線を緑川くんに送った―のに。
「……はぁ。千夏にはかなわないよ」
そして、握っていないもう片方の手で頭をなでなで。バックに華が舞うような笑顔と子どもをあやす様な優しい声で、私に囁いた。
「そんなに、怯えないで? 僕は千夏の心まで壊したいと思っていないし。自由な千夏も好きなんだ……いいよ。合宿に行っても。僕も勿論ついていくけどね」
(ちょっ、待っ!)
「さぁ、今日は帰ろう? 送っていくよ」
(また失敗!? 監禁は? 盗聴・盗撮! 子作りは?)
紳士的な態度な緑川くんに、不満いっぱいになってついつい文句のひとつもいいたくなった。
「緑川くんの……いじわる」
アヒル口に尖らせ下を向いて拗ねる。
そして、ギューと手を恋人つなぎに握り直した。
「……はぁ。本当に可愛くてまいっちゃうな……。僕の恋人は」
(ハァァァァァァァ~)
緑川くんに見えない所でため息をつく。
またお預けをいただいてしまった。彼にヤンデレてもらう為に長居くんと二人っきりになったのに。
(後で身体を消毒しよう)
今度はどんな作戦をたてようか。
ねぇ、緑川くん……お願い。
早く、私を閉じ込めて。
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