ヤンデレ乙女ゲームに転生したら

果桃しろくろ

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本編(裏)

08 怒れるサポートキャラ01

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 ブチブチブチッ。髪が何本か切れる音がする。痛い。痛い。鷲掴みされた髪は、私の顔を歪ませ……目の前に狂喜を孕んだあいつ(・・・)の顔が。
「あ―い―」
 どうして、こうなった? 何が、間違っていた?



 ―八時間前
 私は、乙女ゲームのサポートキャラ―六勝愛である。
 ヒロインに対象攻略者の好感度や誕生日などを教えるのがその役目……だったのだが。
「愛」
「……」
 なぜ、サポートキャラの私の横に、攻略キャラであった赤松純也(二十六歳 古典担当)が、馴れ馴れしくも私の寝ているベッドサイドに座っているのか。そしてなぜ、私の名前をエロボイスで囁いているのか。
「先生、もう私は大丈夫ですから、職員室に戻ってください」
「なぁ~に、つれないこと言ってんの? 俺と愛との仲だろ?」
 目の前で整った顔が、瞳に色気を乗せて、人差し指が私の頬を撫でる。
 つ―。ぞわぞわぞわぞわっ
「って! いつ、どこで、私とあなたが、どんな仲になったんですかっ!」
 手首のスナップだけで人差し指をなぎ払ってやった。
(ピンクのエロオーラ! マジでやめろ!)
 今、私とこのロリコン教師がいる場所は保健室。
 好感度が表示される端末(タブレット)を見て、ショックを受けた私を連れて来てくれたのはいいけど、どうしてこいつは私に対して色気たっぷりな声と仕草で接してくるのか!
(そうだ、端末!!)
 私が立ち上がろうとするのを、赤松が肩に手をやり押さえ込んだ。
「!!」
「ほら、安静に」
 そのまま、私の上に覆いかぶさってきて私を見下ろす笑顔は悪人面だ。赤い舌が薄い唇からチラリと見えて舌なめずりが良く似合う。無駄なピンクなオーラをムンムン垂れ流して私が感じるのは『貞操の危機』
 ありえないと思いたいところだけれど、こいつならありえる。頭の中はどうやって逃げようか。なんて追い詰められていたのに。
 目に飛び込んできた緩められて大きく開けられたシャツから見える色気を醸し出している鎖骨……じゃなくて、ブラリとした解けかけた趣味の良いネクタイ。
「……先生」
 自然と、手が赤松のネクタイに向かった。
 そして、遠い昔―毎日の習慣だったのを手が憶えていたのか―赤松のシャツを整えネクタイを締め直し、肩の線をなぞって「ほら、綺麗になった」なんてつぶやいていた。
「愛?」
 その様子を、面白そうに見下ろす赤松。
(し、しまった。手が勝手に動いていた)
 寝癖がついた子にはクシをかけ、シャツが出ている子には、無言で近づきシャツをいれる。付いたあだ名が「みんなのオカン」今は(・・)華も恥じらう女子高生の私になんたる不名誉なあだ名。
(これで幾分か落ち着きを取り戻せたから、結果オーライとも言えるけど)
「どいて下さい。人を呼びますよ」
「フッ、急に冷静になって。……やっぱり、面白いな。そうだなぁ~呼べば? 見せつけようか?」
「……っ!!」
 さも、余裕ありげな表情をする赤松。昔見た―スチルを思い出す。
(……スチル? あれ? これのシーンって、ゲームで見た? ……?)
「お前の親友の、桃園も応援しているんだから? 観念しろよ」
「! 葵が?」
 ―桃園葵。私の親友でもあるこの世界のヒロイン。
「ど……うして……葵? 何を応援……するの?」
「さぁ? あいつの事はお前の方が、よく知っているだろ? それに、何って……」
 そう言って、私の肩に顔をうずめて「スゥ―」と息を吸われ「愛の匂い」なんて言い放つ。
 ぞわわわわわわ。やめれ! このロリコン!!
「先生! 私は十七歳で先生は二十六歳ですよね?」
「……よく俺の年齢を知ってんのな。そうだ九歳差だ。それが珍しいか?」
「……私がこの制服を着ている限り、年の差って重要なんですよ。禁忌なんですよ? わかります?」
「それって、脱がせろって事? ご希望なら脱がせようか? それに……“禁忌”ってそそる言葉だよな。つい、犯したくなる。色々な意味を含めてな」
「犯罪者ですよって事です。……このロリコン」
「言うねー。俺には、時々お前の方が年上に感じるんだけど」
 赤松の薄く開いた瞳の奥が光って、私の奥まで見定めようとする。
(鋭い)
 私は、転生者だ。
 何歳の時に死んだかは覚えてはいないが、今の私と同じ年頃の娘がいた事だけは覚えている。二〇歳の時に結婚したとして、最低でも三十七歳にはなっていただろう。周りの環境に精神が引っ張られそうになるけれど、それでも目の前の赤松なんて子どもに見えてしまう。だから、さっきもつい、乱れた赤松の服装を直してしまった。もう、無意識怖い!
「……私が長女で……親戚でも一番年上なので、そういうふうに育っただけです。まぁ、先生よりは精神的に大人だとは思っていますが」
「お前ってば、面白いよな」
 ハハハと笑うのはいい。笑う場所が私の肩の上なのが気に食わない。だーかーらー! 息が当たって、ゾワゾワするではないか!!
「俺、年上が好きなんだけど」
「じゃあ、他所をあたってください。英語の宮部先生(四〇歳)はいかがですか? ボッキュッボンの美魔女ですよ? オススメです」
「俺よりも、中身は年上で、身体がピチピチの女子高生って最高じゃねぇ?」
「教育者の言うセリフじゃありませんね」
 ―その落ち着き振り。そのお前の落ち着き振りを、乱して、跪かせて、壊したくなるんだよな。俺。赤松の声なき声が聞こえた気がした。
 逃げなきゃ。と、身体が反応する瞬間っに、べろり。
「ひゃぁああああ」
「はっ、ハハハハハ」
 耳をべろりと舐められた!
 手を振り上げて、ひっぱたいてやろうと思ったら、赤松はさっさと身体を避けて、急に教師の顔に戻る。
「六勝(・・)、まだ顔が赤いぞ? 次の授業の先生には俺が報告しておいてやる。寝ていろ」
「なっ!」
 罵声を浴びせてやろうとした瞬間、“ガチャリ”と保健室の扉が開いて養護教諭がはいってきた。
「じゃあ、お大事に」
「~っ」
 赤松と養護教諭が何かを話していたが、私は背中を向けてシーツをかぶってさっさと寝る。
 やっぱり、あいつは油断ならない!! 気持ち悪い!!
 舐められた耳をシーツで拭ったのだった。

『……はい。愛ちゃん……頑張って(・・・・)ね』
『お前の親友の、桃園も応援してるんだから? 観念しろよ』

 ……葵
 どういうつもりなの?
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