ヤンデレ乙女ゲームに転生したら

果桃しろくろ

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本編(裏)

ーー 怒れるサポートキャラ04

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「子育てもした事もない若造がぁ! 何、己の性癖を十七歳そこらのか弱い子供に、押し付けてんだよっ!」
「……愛?」
(イライラする! 本気でイライラする!)
「躾? 教育? 愛情? そういうものはねっ! 支配しようとしてするもんじゃない!」
 一瞬、動きが止まった赤松をベッドにあった枕で叩きつけた。
 ボスン!
「何が縛ってやるだ! 切り刻むだ! 犯罪者になる気か! 馬鹿者! その腐った性根を叩き直してやる!」
 ボスン! ボスン! ボスン! 枕の間抜けな音が憎らしい。
 この、屈折愛情破綻者(ヤンデレ)は、野放しにしては世間様に迷惑がかかる。ここで叩き直してやらなければ! なぜか強く感じた使命感。体格差がなければ、お尻もペンペンしてやりたい。
「フッ」
「!!」
「ハハハハハハハハハッ」
 私に枕で叩かれながらも、笑い出す赤松。しまった、強く叩きすぎたか!?
「ああ、その目! その目だよ! お前は生徒のくせに、悟りきったような目をして、俺らを見ていた。いいねぇ。ゾクゾクくる。従わせてやりたくなる。跪かせてやりたくなる。壊してやりたくなる」
「変態」
「なんとでも」
「私が躾しなおしてやるから」
「へぇ……ありがたいね」
「ねぇ……どうして、私になったの?」
「ん?」
「先生の相手は、本当は私じゃなかったでしょ?」
「もしかして……桃園の事を言っているのか?」
「……」
「あいつは順応でいいな。でも、所詮それだけだな。まぁ、桃園がお前に会わせてくれた……その点は感謝している。でないと、何も接点もないお前を知るなんて出来なかったしな」
「え?」
「桃園には、色々とサポート(・・・・)してもらったよ」
(サポート?)

『六勝さん。六勝さんはどうして、赤松先生と面識があるの?』

 そうだ。赤松は三年の担当。赤松は生徒会の顧問で、白兼会長経由で葵と知り合う。
 生徒会活動もなにもしていない二年生の私とは、接点がなかったはず……なのに、葵を通じて……赤松と話すようになって?

『桃園さん(ヒロイン)には気をつけて』
『……六勝さんと桃園さんって、仲が良いよね。タイプは全然違うのに。それって、始めから決められていたんじゃない?』

 はは。とんだ茶番。とんだ道化。二人してヒロインの手の平の上じゃない。
「絶対に、従わない」
 私は改めて、目の前の元攻略対象者―赤松を睨みつけた。
「卒業までは、手を出さないでやるよ。先生の情けだ。でも、おいたが過ぎると……わかるよな?」
「おいたって? 例えば?」
「そうだな。 俺以外の奴と話さない。触らない。近くに寄らない。ああ、特別サービスで、女友達の桃園だけは話していいぞ? 俺は優しいからな」
「明日から、学校中の男子と仲良くしよっと。ボディータッチとかしまくって、彼氏を百人作ってやる」
「殺されたいのか?」
「……言ってみただけです。それに、恋人でもない人に束縛される云われはありませんし、そんな戯言、守るつもりはないから」
「俺が決めた。お前に拒否権はないけど? お前の身体も声も全て俺の物だぞ。泣き顔も、恐怖する顔も、喘ぐ姿も、全部、全部、全部、ぜ―んぶ、俺の物だ」
(この、エロエロ暴力系俺様が!!)
 凄んで睨むと、また赤松は愉快そうに笑った。それに、一緒になって笑ってやった。
 ははははははは。
「本当、バカみたい」
「何だ? 早くこっちに来い。今なら優しくしてやるぞ?」
(ピンと張ったネクタイを持ったまま、言うセリフじゃないと思いますけど)
 背中にある窓の鍵に手をやり―開けた。
 ガラッ
「愛? ここは二階だぞ?」
「先生? 知っています?」
 私がサポートキャラとして生まれ変わったこの世界。娘が遊んでいたゲームだと気付いた時、何も対策をとらないとでも思った? 敵はヒロインを狙う変質者(ヤンデレ)。ヒロインに危害を加えるなんて許さない。前の世界では娘を置いて死んでしまい……失意の私は決意した。
 転生して葵の『サポートキャラ』になったのも、天が私に与えてくださった使命なのだから。ヒロインを護ろうと色々な対策を練って身体を鍛えて……来るべき時に備えていた。
(全ては、ヒロインの為だったんだけどな……)
 自称気味な笑を浮かべて、思い出すのは、思春期の娘を持った親だった前世の頃。
(まぁ、親の気持ち子知らずって事で。悪い子にはちゃんと躾(・)をしなきゃね)
「私、運動神経はいいんですよ?」
 私は目の前の赤松(元攻略対象者)に、宣戦布告する。
「絶対、捕まってやらない」
 窓枠に足をかけて、悠々と飛び降りた。
「愛!!」
 慌てて、窓に駆け寄る赤松を背に、近くにあった、出っ張りを利用して、無事に着地する。
「ふうぅ」
 見上げて見えるのは、私を見下ろす赤松の甘く……濁った瞳。ぞわぞわぞわ。ブルッと震えた身体をさすった後、校舎に背を向けて歩き出した。
「ああ、嫌だ」
 卒業まで、まだ一年以上ある。
 それまで、赤松に私が捕まるか、私が逃げきれるか。それとも……。ポケットに入れていたスマホを取り出して、電話帳を開き、電話をかけた。
《トゥッ トゥッ トゥッ……トゥルルルルルル……》
 無機質な呼び出し音が耳に響く。

 ―さて、葵。
 私の(・)攻略のサポートなんて、うん十年も早い事を教えてあげる。

 ―きっちりと、話を聞かせてもらうからね。
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