ヤンデレ乙女ゲームに転生したら

果桃しろくろ

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本編(裏)

ーー 怒れるサポートキャラ03

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 サポートキャラの仕事は、ヒロインに対象攻略者の好感度や誕生日などを教えるのがその役目。
 ―でも、ゲームが終わったら?
(フラフラする)
 教室に戻る途中の廊下。
 私の横を元攻略対象者の清流の三つ子のうちの二人が歩いて行った。会話の端々が耳に届く「ま……ちゃん」「逃げ……だ……んだ」に、ブワリと背筋が凍る。
 白兼会長は? 清流の三つ子は? 緑川は? 赤松先生は? ゲームで、ヒロインと結ばれなかった“攻略対象者たち”はこの後どうなるの?
 そして―“私”はどうなるの?
 予鈴の音がして私は早足で教室に向かった。教室の前で葵が誰かと話している。この感じ。デジャブ。
 予感は当たるもので、今朝と同じ……赤松がそこに居た。私は二人に隠れて、様子を伺う。
「赤……先生……で……」
「……あ……だろ」
 声が聞き取れない。まだ、周りが騒がしいのもあるし、二人が小声で話しているのもある。
「六勝さん。教室に、はいらないの?」
「!!」
 振り向くと、そこには緑川が眉目麗しい姿で、微笑んでいた。
(はぁ……今日は、色々脅かされる日なのか。精神年齢的にきつい日だわ)
 思わず顔が引きつってしまう。緑川も、私の目線の先に気付いて、何やら面白そうな顔をした。
「桃園さんと赤松先生だ。何話しているんだろ?」
「さぁ、古典の質問とか?」
「受け持ちじゃないのに?」
「……」
 緑川は、今度は違った笑みをして、私に質問を投げかけた。私は、さも気にもなりませんという風を装ったが……緑川の言葉に背中に冷たい汗が流れる。
「……六勝さん。前世って信じる?」
「! な……に? 昨日のテレビの話?」
「そ、テレビの話」
 ドドドドと心臓が耳の横でなっているみたいでうるさい。腕を組み、顎に手をやった緑川が私の顔を覗き込んで再度微笑んだ。端麗な顔が、酷く歪んで見える。
「新しい人生のシナリオが元から決められていたら……それって、ぶっ潰したくならない?」
「……」
「一人だけ勝った気でいるなんて、ムカつくんだよな、僕。六勝さんは、そうは思わない?」
「よくわからないんだけど……」
「六勝さんと桃園さんってさ、仲が良いよね。タイプは全然違うのに。それって、始めから決められていたとしたら?」
「葵と私は親友よ」
「そうだね。シナリオ(・・・・)が終わる(・・・)までは、そうだったね」
 緑川が、葵を。そして、二人が私たちを見た。
 二人の視線は、冷たいもので。
 私は乙女ゲームのサポートキャラ―ヒロインに対象攻略者の好感度や誕生日などを教えるのがその役目―でも、それが終わったら??
 交差する視線。ぐらりと揺れた地面。

 ああ。

 ま っ く ら 。


 ブチブチブチッ。髪が何本か切れる音がする。痛い。痛い。鷲掴みされた髪は、私の顔を歪ませ……目の前に狂喜を孕んだあいつ(・・・)の顔が。
「あ―い―」
 どうして、こうなった? 何が、間違っていた?―世界は冒頭に戻る。



「せ……先生……痛いんですけど……」
 パチンと頬を叩かれ、髪を持ち上げられた。そして無理矢理起こされた上半身。片手で髪を抑え、もう一方でで身体を支えた。
「愛? 起きた? ダメだろ? ん? ダメだろ? 緑川なんかと二人で話して。俺が気づかなかったら、今頃あいつにここまで運ばれいてたんだぞぉ?」
「……何を……言って……?」
「やっと時間が出来て、来てやったらお前は何も知らぬ顔して呑気に寝てやがる。昼休みは白兼と見つめ合っていたな。俺をこれだけ傷つけて。ダメ。ダメだろぉ?」
「せん……せ……い、離して、痛い!」
 右足で勢いよく赤松の身体を蹴り、無理矢理、身体を引き剥がす。
 ブチブチブチブチ!
「くっ……」
 痛い! ハゲる! ハゲる!
 その痛みのお陰で覚醒した。状況を判断する為に部屋を見渡す。白いカーテン。消毒液の匂い。夕日が、部屋をオレンジ色に染めて、遠くで運動部の声がする。
(……また保健室? ……放課後……?)
 私はベッドの上で寝ていた所、赤松が無理矢理髪をひっぱり起こした所だったようで。
 蹴りから起き上がった赤松の右手には何十本もの、髪の毛が絡まっていて、それを口元に持っていき「ス―」と息を吸い込んでいて、瞳は酷く濁っていた。
「愛の匂いだ」
「……何やっているんですか?」
(気持ち悪い)
「今までの俺は、愛に優しすぎた。それを反省してるわけ」
「はぁ?」
「ほらぁ? 躾だよ。躾。愛には教えてやらないとな? 誰が、一番、な、の、か、を」
 絡まった髪を、ハラハラと床に落とし、一歩、私に近づいた。午前中、私が整えた赤松のネクタイが、再度、緩められていく……
 シュルッ
 両手でネクタイの端と端を持って、何をしようとしているの? ベッドを挟んでの対面。赤松の方向に出入り口の扉。私の後ろは窓。絶体絶命。
「近づかないで! 暴力教師! 教育委員会に訴えてやる!」
「訴えてどうする? 俺を首にさせる? そうしたら、俺はもっと自由だ。もっと、愛に教育(・・)できるよな?」
(この男……何を言っているの!)
 ボサボサにされた頭を抱えたくなる。
 赤松は私を見下ろしながら、ベッドサイドに足をかけて、手を前にもってきて私を捕まえようとする。
(ネクタイを私の首にかけようとしていない?)
 私は窓際ギリギリまで、身体をそらして、なんとか距離をとった。
「躾? 教育? 例えば?」
「愛が俺の事を理解するまで、縛るのもいい。切り刻むのもいい。俺しか見えない様にしてやる。まずは身体に覚え込ませる。縛らなくても心もずっと縛ったままにしてやる。快楽に沈めてやる。俺の傷を付けた愛なんて、最高じゃないか。死なない程度に愛してやるよ」
 ああ、こいつは、もう。本当にどうしようもない。
 ―プツンとキレた。
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