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05 魔術師の場合01
しおりを挟む――真っ暗な闇の世界。眩い煌めきが僕を導いた。
僕は生まれた時から、目が見えなかった。
神官長からは強過ぎる魔力の影響だと言われていたが、それに不便を感じたことはない。
どんなものにでも、滲み出る魔力がある。
僕は、人や物や動物や植物の僅かに漏れる魔力を感じて生活をしていた。
感じとしては、モヤが集まった集合体みたいなものかな? (僕はその集合体をオーラって呼んでいる)
だから障害物も避けられるし、階段も、ちゃんと昇り降り出来る。
物に躓く事なんてない。
感情の動きはオーラの動きで判断出来て、どんな小さな感情の動きもあからさますぎて僕には手に取るように分かった。
そういうわけなので、嘘をつかれてもすぐに分かってしまう。
普通に目が見える人よりも、よく見えていると言っていいと思うんだ。
僕が心を動かされるのは外見の美しさは関係無く、その人が持っている本質の美しさだった。
何年も準備をして行なった“神の花嫁の召喚”の儀式。
儀式は成功したかと思われたが、現れたのは――2人の少女だった。
僕は、隠れてため息をつく。
(つまらない召喚だった)
異世界の娘ということで、どんな“色”を見せてくれるか、密かに楽しみにしていたのに、城にいる女たちと変わらないオーラ。
僕は2人への興味をスッカリ無くした。
王子がアイリという少女を気に入ったのをオーラで感じ、騎士からは、興味。宰相からは、少しの疑惑を感じた。
一方、ナオに対しては、殺意、無関心、違和感。
僕からしたら2人とも大差のないオーラなので、ここまでハッキリと彼女達に優劣がついたのは意外だった。
『召喚される“花嫁”は15歳~29歳の処女が1名。姿は可憐で美しく、性格は正義感に溢れまっすぐな性分で世界にすぐに順応できる少女が多く、召喚されても数日で立ち直り、すぐに順応する』
それが、代々伝わる召喚の記録。
何百年も前から続いているこの召喚で、今回のようなケースは初めての事だった。
歴代の召喚に携わった魔術師たちの記録を調べてみたのだが必ず1人。
その条件に“アイリ”が充てハマるという。
では、全く真逆と言われている“ナオ”という少女は?
彼女は、なぜ召喚された?
アイリに召喚前の状況を聞くと、足元に真っ黒な穴が空いたので、近くにあったものを掴んだら、それがナオだったという。
彼女はポロポロと涙を流し「私が巻き込んでしまったの」と言って泣き伏した。
周囲も者は、その姿に心を痛め、慰め、同情し、なぜかナオに対して腹を立てていた。
その様子に僕は呆れてものが言えない。
アイリは嘘はついていないが、あの涙は本物ではなかった。
オーラの微かな淀みがそれを物語る。
アイリの周囲の者は、過剰なまでに彼女に対して、過保護で慈愛に満ちていた。
しかし、中には色情を含んだものまであって……。
まさか、歴代の花嫁は“純潔”なはず。
流石の僕も聞かない限り花嫁が“処女”かどうかなんて分からない。
それに、僕にはドロリとしたアイリのオーラが好きになれなかった。
2人の少女のどちらにも神が降りて来ない場合を想定し、次世代の召喚への書を纏める。
こうして、何人もの僕みたいな魔術師が後世に伝え、いつしか成功を夢見ているんだけど……。
今回の召喚も、失敗だったのだろうか?
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