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07 ××の場合
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私には、愛しい女がいた。
愛していた私の花嫁は、いつしか私の元から姿を消した。
世界中を捜しても、彼女を感じられない。
そんな時、ある国で数年前に“召還”を行っていた事を耳にする。
もしや。
彼女はその時に、こことは違う遠い異世界に吸い込まれてしまったのではないか。
すぐにでも、異世界に捜しに行きたかった。
しかし、私とて有能ではない。私はこの世界から動けず異世界には干渉が出来ないのだ。
彼女を異世界に飛ばした罪は、その国の者に償ってもらう事にした。
魔術師達が行う召喚時に、彼女の微かに残った欠片を込め、彼女が戻ってくるようまじないをかけたが、一向に戻ってくる気配がない。
しかし、召喚によって、無理矢理連れて来られた少女たちには、彼女と似た魂の持ち主で、皆、清らかで美しかった。
彼女に似た異世界から来た少女たちの為、この世界で暮らしていけるよう身体の仕組みを変え、言葉や文字を理解させ、召喚時には冷静になるよう、まじないをかけ、そして、幸せな暮らしが出来るよう、寂しくないよう、愛されるように“加護”をつけたのだ。
私は、国に呪いもかけた。花嫁にかける“加護”がないと、国を立ち行かないようにしたのだ。“加護”が切れた状態のままにしておくと、奇病を流行らし、暗に警告をした。もし、“召喚”を蔑ろにすると、私の怒りを喰らう事になるぞ……と。
その後、国の者達は“神の花嫁”に選ばれなかった少女を、王の后として娶り、それがいつしか習わしとなった。“加護”を持つ少女を王妃とすると、国は栄えた。そして、少女たちは幸せに暮らして生涯を終えた。
それからというもの、私の“加護”が切れる期間……約100年単位で“召喚”が行われるようになったのだ。
そして、今回の召喚。
一体、何百年待ったのか。
私はもはや諦めに近い感情でその様子を観察していた。
――が
現れたのは、二人の少女だった。
今までは、一人だったのだが…。
私はもしやの予感と共に、直様、彼女たちに“加護“のまじないをかけた。
アイリという少女。
アイリは、この国の者たちにすぐに愛された。
一部、私のまじないが効かなかった者たちもいるようだったが、花嫁としての1年間。彼女が余程の事をしない限り、私の“加護”は彼女を守ってくれるだろう。
ナオという少女。
彼女は、なぜか、私の“加護”を受けない少女。言葉と文字は理解していたが、その他のまじないが全然効かなかったのだ。
“誰からも愛される、祝福されるはずの加護” その恩恵も受けられず、城の者たちは、彼女を粗末に扱った。
召喚された少女が、神殿に1年間に暮らすというには、この世界に馴染むという意味もあった。
この1年間で、この世界で生活し、呼吸をし、この世界の食べ物を食べる事によって、今迄住んでいた異世界の異物を浄化し、私の彼女ならば……本来の姿に戻る。
そんな期間でもあった。
私は、彼女たちの観察を続ける。
一向に何も変わらない――アイリ。
一方、ナオの変化は凄まじかった。
彼女を覆っていた殻が少しずつ剥がれ落ちていく様に……この世界では珍しい黒い髪の色が、私と同じ薄い金色に輝く。
肌が透き通るよう白く滑らかになり、瞳のエメラルドグリーンを見た時に、私は確信したのだ。
彼女こそが、私の愛する……。
異世界へ、魂が落ちた時に、彼女の造形も変わったのだろう。
我々には、異世界の食べ物は毒になる。
それが、歪んだ形で、彼女の体内に蓄積されて、本来の姿を覆い隠していた。
そして、元の世界に戻った彼女は、この世界の食べ物を食べ、暮らし、呼吸することによって浄化されたのだ。
私の花嫁の証に“純潔”を失ったアイリへの“加護”が徐々に消えていったが、彼女が見付かった今、もういいだろう。
この国の者もアイリを“神の花嫁”としての仕来りを教えたはずなのだから。
時は満ちた。
約束の期日、迎えに参るぞ。
――愛しの花嫁。
愛していた私の花嫁は、いつしか私の元から姿を消した。
世界中を捜しても、彼女を感じられない。
そんな時、ある国で数年前に“召還”を行っていた事を耳にする。
もしや。
彼女はその時に、こことは違う遠い異世界に吸い込まれてしまったのではないか。
すぐにでも、異世界に捜しに行きたかった。
しかし、私とて有能ではない。私はこの世界から動けず異世界には干渉が出来ないのだ。
彼女を異世界に飛ばした罪は、その国の者に償ってもらう事にした。
魔術師達が行う召喚時に、彼女の微かに残った欠片を込め、彼女が戻ってくるようまじないをかけたが、一向に戻ってくる気配がない。
しかし、召喚によって、無理矢理連れて来られた少女たちには、彼女と似た魂の持ち主で、皆、清らかで美しかった。
彼女に似た異世界から来た少女たちの為、この世界で暮らしていけるよう身体の仕組みを変え、言葉や文字を理解させ、召喚時には冷静になるよう、まじないをかけ、そして、幸せな暮らしが出来るよう、寂しくないよう、愛されるように“加護”をつけたのだ。
私は、国に呪いもかけた。花嫁にかける“加護”がないと、国を立ち行かないようにしたのだ。“加護”が切れた状態のままにしておくと、奇病を流行らし、暗に警告をした。もし、“召喚”を蔑ろにすると、私の怒りを喰らう事になるぞ……と。
その後、国の者達は“神の花嫁”に選ばれなかった少女を、王の后として娶り、それがいつしか習わしとなった。“加護”を持つ少女を王妃とすると、国は栄えた。そして、少女たちは幸せに暮らして生涯を終えた。
それからというもの、私の“加護”が切れる期間……約100年単位で“召喚”が行われるようになったのだ。
そして、今回の召喚。
一体、何百年待ったのか。
私はもはや諦めに近い感情でその様子を観察していた。
――が
現れたのは、二人の少女だった。
今までは、一人だったのだが…。
私はもしやの予感と共に、直様、彼女たちに“加護“のまじないをかけた。
アイリという少女。
アイリは、この国の者たちにすぐに愛された。
一部、私のまじないが効かなかった者たちもいるようだったが、花嫁としての1年間。彼女が余程の事をしない限り、私の“加護”は彼女を守ってくれるだろう。
ナオという少女。
彼女は、なぜか、私の“加護”を受けない少女。言葉と文字は理解していたが、その他のまじないが全然効かなかったのだ。
“誰からも愛される、祝福されるはずの加護” その恩恵も受けられず、城の者たちは、彼女を粗末に扱った。
召喚された少女が、神殿に1年間に暮らすというには、この世界に馴染むという意味もあった。
この1年間で、この世界で生活し、呼吸をし、この世界の食べ物を食べる事によって、今迄住んでいた異世界の異物を浄化し、私の彼女ならば……本来の姿に戻る。
そんな期間でもあった。
私は、彼女たちの観察を続ける。
一向に何も変わらない――アイリ。
一方、ナオの変化は凄まじかった。
彼女を覆っていた殻が少しずつ剥がれ落ちていく様に……この世界では珍しい黒い髪の色が、私と同じ薄い金色に輝く。
肌が透き通るよう白く滑らかになり、瞳のエメラルドグリーンを見た時に、私は確信したのだ。
彼女こそが、私の愛する……。
異世界へ、魂が落ちた時に、彼女の造形も変わったのだろう。
我々には、異世界の食べ物は毒になる。
それが、歪んだ形で、彼女の体内に蓄積されて、本来の姿を覆い隠していた。
そして、元の世界に戻った彼女は、この世界の食べ物を食べ、暮らし、呼吸することによって浄化されたのだ。
私の花嫁の証に“純潔”を失ったアイリへの“加護”が徐々に消えていったが、彼女が見付かった今、もういいだろう。
この国の者もアイリを“神の花嫁”としての仕来りを教えたはずなのだから。
時は満ちた。
約束の期日、迎えに参るぞ。
――愛しの花嫁。
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